早すぎた日本のシューゲイザー!? 割礼、7年ぶりの新作『星を見る』から浮かび上がる邪気のない美しい世界

割礼   2010/06/16掲載
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早すぎた日本のシューゲイザー!? 割礼、7年ぶりの新作『星を見る』から浮かび上がる邪気のない美しい世界
 非常に寡作ながら30年近くのキャリアを誇る割礼。初期からの人気曲「リボンの騎士」(ウルトラ名曲!)も収録された久々の新作『星を見る』には、中心人物、宍戸幸司(vo、g)の邪気のない、少年のようなペルソナが音像化されたような美しさがある。そしてそのアンサンブルも、メンバー4人の関係性を物語るような無邪気さと歓喜がある。近年再評価の高まる“シューゲイザー”と呼ばれたイギリスのバンド群に美を見出した若いリスナーにも、ぜひ割礼の音楽に触れていただきたい。偶然ながら、等しく響くサムシングがあるのだから。


――1983年に結成した、“割礼ペニスケース日曜日の青年たち”(後の割礼)が最初のオリジナル・バンドと聞いてますが、その前にもバンド活動を?


宍戸幸司(vo、g / 以下、同) 「やってました、高校時代。それはコピー・バンドでした。頭脳警察フラワー・トラベリン・バンド……日本のロックですね。弾きやすいフレーズがあったからそれを選んだ、みたいな感じかな。まああと、そのあたりをベースのコが好きだったりだとか。割礼ペニスケース〜のメンバーは、高校時代に出した『DOLL』と『ロッキングオン』のメンバー募集で知り合って、それから繋がっていったのかな。82〜3年くらい。と言ってもその頃は、地元の楽器屋さん主催のイベントに出たり、っていう感じで」
――じゃあ最初のレコード『パラダイスK』(1987年)が出るまで4年近くのキャリアがあったんですね。宍戸さんにとって“音楽はこうあってほしい”というものはありますか?
「そうだなあ……“居心地のよさ”かな、割礼の音楽に求めているものは。気持ちよさ、というのかもしれないけど」
――じゃあ演奏中はやはり気持ちよさに浸って……?
「いや、そうでもないです(一同笑)。けっこうね、“真面目に弾こう!”……そんな感じでその時その時に精一杯にやれればなあ、と思ってます」






――普段はどんな音楽を聴いてますか?
「今はぜんぜん聴いてないです。でも最近、よく聴くのはなぜかチャンス・オペレーション。聴かなくなる前は……最初にハマったのはビートルズ。あとはテレヴィジョン。これはずっと好き。あとはブリジット・フォンテーヌビリー・ホリデイ……日本だと灰野敬二ですね。最近観たときもかっこよかったです」
――聴いてる音楽から自分の音楽が生まれているわけではなさそうですね。
「そうですね……でもコード進行とかはね、フォーク・ソングって言うとちょっと違うかもしれないけど、Em(イー・マイナー)とか好きだから。今もそんな感じでやってるのかもしれない」
――割礼の音楽の構成自体はオーソドックスですよね。サウンドがあって、言葉があって、メロディーがあって……。
「メロディを入れだしたのは、ホント最近。最初の頃の曲はほとんどメロディがないですからね。自分としてはちゃんとメロディになってるんだけど……あんまり音の高い / 低いが分かってない、ちゅうところもあるんですよね。ここは高くなってここは低くなってってやってるつもりなんだけど、それをギターで探ってみると、“あれ? ぜんぜん変わってないやん!?”って。自分としてはメロディアスに作ってるつもりだったんだけど、それを知ったときはショックでしたねぇ」
――言われてみると、新曲の「マリブ」「革命」あたりはかなりメロディアスですよね。それでも昔から割礼の根本的なイメージが変わらないのは、ひとえに宍戸さんのまったく邪気のない歌だと思ってるんです。“永遠の少年”というか。
「この歳にもなって“男!”って感じじゃないんですよね、47歳にして(苦笑)。なかなかいろんな物事に責任とれないしねぇ……」
――そんな宍戸さんだからこそ、その音楽にも邪(よこしま)なところがないんだと思いますよ。
「邪気はなくしていきたいですよねぇ……僕、毎日、水かぶるんですよ、お風呂出た時。その時“邪気退散!”ってホントにやってるんですよ、最近」
――そうなんですか!
「そんなに意味ないんだけど、ちょっとやってるんですよね……外で、じゃないですよ(笑)」
――それじゃ修行ですからね(笑)。新作のサウンド作りでこだわった部分はありますか?
「実はそんなにこだわってないですね、今回。特にこれっていうのはないです。まあ、ホントこれくらい(手で50cmほどの円を描きつつ)の距離で向かい合って演奏してるんですね。できるだけ近い距離で目を見て演奏できるように、たまたまなったっていう」
――録音期間も3〜4日くらいだそうですが、一発録りに近いんですか?
「そうですね、根詰めてはやってないです。ヴォーカルを後でかぶせた以外は、一発録りですね」
――へー、そうなんですか! 意外です。新作はサウンド的にヘヴィな部分もありますが、実は意外とさらっとしてますよね。
「うんうん、さらっとしてる」
――それで思い出すのが、ゆらゆら帝国なんです。解散する前の彼らは、若い頃はさらっとしてるけど深いというものは作れなかった、と言っていたんですが、宍戸さんの場合はどうでしょう?
「うん……生活スタイルかな。今回これ、ぜんぶ昼間録ってるし。子供を保育園に送ってからスタジオに行って、保育園から帰る間に録る、っていう主婦みたいな生活をしてて(一同笑)」






――ところで個人的に、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインと割礼は同じ方向を向いてると思ってるんですが、そのあたりはどうでしょう?
「いやあ、その辺はぜんぜん分かんないんですけど、最近、ちょっと聴いたんですよ。そのマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン?ってのはよかったですね。嫁さんが好きで、YouTubeかなんかで聴かせてくれて」
――実はこの取材、割礼を“邪気のない美しい音楽”として紹介したかったんで、“サイケデリック” “トリップ”などの言葉を封印してたんです。
「サイケデリックっていうものを僕、よくわかってないからねえ(苦笑)。それに別にトリップしてないから。というか、そのトリップ感っていうのも実は、普通に生活してることのほうが強かったりしますからねぇ」


取材・文/フミヤマウチ(2010年6月)



<割礼『星を見る』発売記念ライヴ>
●8月11日(水)
六本木superdeluxe
開場19:00 / 開演19:30
前売3,000円 / 当日3,500円(ドリンク別)
出演:割礼、MO'SOME TONEBENDER
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