LEO今井と向井秀徳によるKIMONOSが描き出すイマジネイティヴでタイムレスな音の世界

KIMONOS   2010/11/25掲載
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 LEO今井向井秀徳によるKIMONOSが待望の1stアルバム『KIMONOS』を完成させた。向井が所有するMATSURI STUDIOにおいて断続的にレコーディングされた本作は、ZAZEN BOYSの吉田一郎、ディアフーフのグレッグ・ソーニアが少しのサポートを行った以外、ふたりが膝を突き合わせて制作した楽曲で占められている。80'sニューウェイヴ的な要素を全面に押し出しつつも、イマジネイティヴかつ未来的でタイムレスなサウンドが生み出されており、予想を軽く上回るほどの刺激的な作品に仕上がっている。LEO今井に話を訊いた。
――アルバム作りへと発展していった経緯は?
LEO今井(以下、同)「まずは遊びで80年代の曲のカヴァーを録ってみることがグループの始まりでした。そのうちカヴァーに飽きてきて、オリジナルを作り始めた。それがとても刺激的で、徐々に本気モードへと発展していったんです。話し合ったことといえば、本質的な融合でなければいけないってこと。ふたりの共作でしか鳴らせない新しいものを作るという使命感だけは最初からありましたね」
――今回の作業中で、向井さんの知らなかった面を発見したりした?
「いままで彼はナンバーガールやZAZEN BOYSなどで、おそらくヴォーカル・ハーモニーにあまり気を遣ってないんじゃないかと思うんです。でも今回はかなり意識をしていた。歌い方が非常にメロディアスですよね。『ZAZEN BOYS 4』の<Sabaku>で聴かせたあの歌い方をここでは目一杯披露している。ただ“彼にはこんな部分があったのか”なんて驚きはなかった。普段あまり使っていないテクニックを使用したんだなと思うぐらいで」
――ほんと美しい曲が並んでいますね。ふたりが揃うことでいつになく綺麗なメロディが生まれたっていう点が印象的で。
「うん。でもそれは自然に生まれたものです。“トラックをもっと気色悪くしよう”とかいう相談はいっぱいしましたけど(笑)」
――また、ふたりがオリジナリティを意識していったときに自然と出てきたものが無国籍感だったと。無国籍的なTOKYOサウンドがけたたましく鳴っている。
「“無国籍っぽい”っていう指摘はすごくわかるんですが、そもそも国籍を意識してやるってのもヘンな話。つまり何も考えてないんですよ。ただ、私と向井さんは東京=CITYの描き方について大きな共通点があると思う。それを言葉にすると、“強く愛でているようで強く攻撃している”という感じ。東京という街の陰と陽をストレートに表したいと思っているし、生温くない気持ちで向き合って現実的に捉えようとしている。あと、ふたりとも東京に対して何かしらアウトサイダー的な部分を持っていると思う。彼は昔ほどそういう意識が強くあるわけじゃないでしょうが、そういう話をいまだによくしますから。佐賀から出てきたときに強烈な違和感を持ったと。私も東京に対して愛憎入り混じった気持ちはあるし。冷静なのに、芯は非常に熱狂的というか勢いがあるというのは今回の曲にも反映されていると思う」
――どこかね、80年代の東京が放っていたワイルドな空気を思い出させるんですよ。
「それは現象がなくなったのではなく、感覚が麻痺しているだけじゃないですか? ここでは80年代のヴィンテージ・シンセの音しか使ってないですけど、懐かしいようで新しいものになった。曲を聴き返して、いったいいつの音楽なのかよくわからないってことは自分たちも思っていました」
――このアルバムを聴いた海外のリスナーが東京にやって来たなら、“あ、この感じだ!”って思うんじゃないかなと。
「私の友人にも多いんだけど、大人になって初めて東京に来て、渋谷のスクランブル交差点を見たとき、何がなんだかよくわからない状態になったって。東京の発展具合は面白いけど病的でもあるって。このスケールのでかさといい、こんな都市は他にない。“超現実”が見えるというか、風景の画素数の桁がちょっと違う」
――ただあまりに画素数が多すぎるとクリアー過ぎて、ツルンとした印象を与えたりもする。
「確かに、画素数が多いからといって優れているわけじゃないし、失われてしまったものも大きい。それが東京の持つ病的でダークな部分につながっていると思う。その辺をすべてひっくるめて表現したいって気持ちはありますね」
――あと、今作はジャケットが素晴らしい。
「これに関しては堂々と、“そうですね”と言えます。大正時代の美人画の展覧会を一年ぐらい前に美術館で見たんです。そのときに衝撃を受けて、記憶に残っていた。この絵には自由主義な文化が表れている。新しい文化を無邪気に、楽しく採り入れる傾向って私にとっては理想だし、いまの日本に欠けている部分じゃないかとも思う。その絵の印象を向井さんに話したんです。“そこにピアノがあって、女性が着物を着ていて……”って。そうしたら彼が“着物?”ってその言葉にピンと反応して、“グループ名はKIMONOSにしよう”と。最初、仮で“LEO今井&向井秀徳”とか考えていたんですが、それだとなんかアカデミックな感じがしていたから(笑)」
――極端な方向に偏らず、ポップなところに落とし込んでいるのがいい。“ニューウェイヴ”っていうキーワードとか取っ払って、シンプルに若い子とかがハマる音楽に仕上がっていると思う。
「マジですか? 若い子か、どうしよう(笑)。病的で角ばった要素がいっぱいあるけど、グッド・ソングが揃ったって印象はある」
――すごく完成度の高いアルバムに仕上がりましたが、ここに敢えてゲスト・ミュージシャンを入れるとしたら誰がいい? どこの誰でもかまわないってことで。
「妄想的な質問ですよね、これは(笑)。う〜ん……そうだ! マイク・パットンのあの声を入れたい。そうしたらさらにシック(sick)になると思う。それ、私のドリームです」
取材・文/桑原シロー(2010年11月)
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