長い経験でわかる“哲学”も、肌で感じ取れてしまう天才肌 類稀な才能を持つ19歳のシンガー・ソングライター、清 竜人

清竜人   2009/03/06掲載
はてなブックマークに追加
 3月4日にリリースされたau Smart Sports CMソング「Morning Sun」で話題になっている19歳のシンガー・ソングライター、清 竜人。3月25日にはデビュー・アルバムもリリースされる。タイトルは“PHILOSOPHY(=哲学)”。清々しいサウンドと歌の中に潜む“哲学”をじっくりと楽しめる本作について話を訊いた。


 数年に一度しか登場しない、恐ろしいほどのスケール感を持ったニューカマーであると言い切ってしまいたい。シングル「Morning Sun」(3月4日リリース/au Smart Sports CMソング)とアルバム『PHILOSOPHY』(3月25日リリース)でメジャー・デビューを果たす19歳のシンガー・ソングライター、清 竜人。まずは「Morning Sun」に触れてみてほしい。イノセントな響きをたたえたファルセット・ヴォイス、フォーキーにしてクラシカルな音像――初期のジョニ・ミッチェルを想起させるような――そして、何気ない日常に潜む、深遠な真実を鮮やかに捉えたリリック。清々しい気分と人生の奥深さがしっかりと描きこまれたこの曲を聴けば、その確かな才能を実感してもらえるはず。この曲を作ったのは、彼がまだ高校に通っていた頃。その瞬間について彼は、こんなふうに語る。
 「“An old woman waters the flower/I play the guitar and sing”という歌詞があるんですけど、それって目の前にあった風景なんですよ。祖母が花に水をやっていて、それを見ながら僕はギターを弾いてて。そういう毎日の繰り返しがじつは――(大切である)という歌ですね」


 そして彼は自らのソングライティングについて、「これは僕の個人的な考えですけど」と前置きしながら、さらに言葉を重ねる。
 「メロディが出来たときに考えていたこと、感じていたことをそのまま歌詞にするのが一番自然だし、曲にもマッチすると思うんです。〈Morning Sun〉も、そう。まさに晴れた土曜日の朝に書いた曲なので(笑)」

 軽やかにシンコペーションしていくピアノのフレーズを軸にしたアップ・チューン「ジョン・L・フライの嘘」、アコースティック・ギターの生々しいグルーヴが心地いい「Selfish」、憂いを帯びたメロディのなかに“システム(体制)”によって歪められる現代を映し出す「悲システム」(かなシステム)、爽やかなギター・ポップのなかで“なんてことない日常が 優劣でいっぱいさ”という真実を射抜く「素晴らしい」。アルバム『PHILOSOPHY』に収録された楽曲も、どこにも不自然なところはなく、まるでずっと以前から存在していたかのように、普遍的と呼ぶにふさわしい魅力を放つ。チャカ・カーンシカゴといったビッグネームの作品を手掛けてきたプロデューサー、トム・キーンによるオーガニックで立体的なサウンドメイクも充実している。
 「レコーディングはロサンゼルスだったんですけど、楽しかったですね、修学旅行みたいで(笑)。メロディにも歌詞にもサウンドにも“これが自分の哲学(PHILOSOPHY)”というものを込められたと思います。まだ19歳なので(音楽的な哲学が)完全に固まっているわけではないんですけど、いま、自分ができる表現はこういうものかなって」


 15歳のとき、親戚の叔母さんがゴミ捨て場で拾ってきたギターを貰い、オリジナル曲を作り始めたという清 竜人。それからわずか4年足らずで、彼はこんなにも強く、美しい音楽を奏でるに至った。「音楽を仕事と捉えるようになったら、アウトだと思うんですよね」と言う彼に、理想の音楽像について訊いてみると――。
 「難しいですね。たとえば“孫の歌が一番”っていうおばあさんもいるだろうし、好きなものは人それぞれなので。ただ、自分の音楽を聴いてくれた人の日常に、1%でも2%でもいいから“いい色”が加わってくれたら嬉しいですね。それくらいですね、いま思ってるのは」



取材・文/森 朋之(2009年2月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] スーパープレイヤーぞろいのブラス・アンサンブルが、満を持して発表するバロック名曲集 ARK BRASS[インタビュー] 「私が歌う意味」 自らが選曲したディズニー・ソングで歌手デビュー 檀れい
[インタビュー] 突如あらわれた驚異の才能! 10代の集大成となる1stフル・アルバム Meg Bonus[特集] 嘘の本屋 リアル異変探しゲーム「嘘の本屋」
[インタビュー] TSUMUZI 5拍子の魅力に取りつかれた男の新作は、これまでのリズム研究の集大成[インタビュー] みやけん×ヒビキpiano 「二刀流」vs 「超テクニック」人気のピアノ男子対談!
[インタビュー] 佐野元春 自身の名曲群を“再定義”した 最新アルバム『HAYABUSA JET I』[インタビュー] ヒロイックニューシネマ “誰かのヒーローになる” 新体制となって初の全国流通アルバム完成
[インタビュー] エクスペリメンタルHip HopユニットDry Echoes 4年ぶりとなる2ndアルバム完成[インタビュー] 三浦文彰 清水和音 『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集』を発表 全曲演奏会の最終回を東京と大阪で開催
[インタビュー] のん (映画『私にふさわしいホテル』)[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015