シンガー・ソングライター、永山尚太インタビュー

永山尚太   2006/12/08掲載
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 シンガー・ソングライターの永山尚太は、高校卒業まで沖縄で育った。彼の歌に、人柄に、そしてマイペースな生き方にも、優しさにあふれた海と風の匂いがにじむ。その世界観はどのようにして生まれたのだろう? 1stアルバム『ぼくのうた』を発表したばかりの永山に、自身の音楽について語ってもらった―― 。


「去年27歳で歌手デビューしたんですが、遅いってよく言われるんですよね。でも、そこのところは全然気負いがないんです。あせってもしょうがないと思うし、今この場所にいれるってことはすごく幸せなことだと思ってます」


―― 生まれてからずっと沖縄育ち?

「はい。77年に生まれてから、高校卒業まで。その後ニューヨークに行きました」

―― 子供の頃ははどんな音楽を聴いてましたか?

「小さかった時は、皆と同じようにアニメ・ソングを聴いてました。中学の時もやっぱりWANDST-BOLANB'zドリカムとか、はやりのJ-POPを聴いてて。高校入ってからはエリック・クラプトンなどの洋楽を」

―― 沖縄民謡にも親しんだ?

「それは学校の授業なんかで。あとはお祝い事があると歌ったり。古い沖縄弁なので、意味はわからなかったですけど(笑)」

―― その頃から音楽はずっと好きだった?

「好きでしたね。歌うのが好きでした。ただ、恥ずかしがりやなので、人前で歌うのは嫌だった。でも、初めて歌った時に友だちの反応がすごく良かったりして。そこから自分の歌に気づき始めたという感じです。その後、中学三年の時にギターを手にして」

―― 当時はどんな曲を歌ってたんですか?

長渕剛さんとか、かぐや姫とかとか。フォーク世代ではないんですが、通っていた中学校に卒業コンサートがあって、先輩から代々引き継がれてギターと楽譜がおりてくる。だから楽譜もフォークのままで」

―― そして高校に入って洋楽に触れ始めた。その時にはもう、歌うことに対する特別な思いがありましたか?

「ありましたね。ギターを手にして歌い始めた時から……、歌手というか、人前で歌って、人に歌を届けることに憧れを持ち始めました」

―― 高校ではバンド活動を?

「アコースティック・デュオを組んで学園祭に出たり。そこでクラプトンのアンプラグドやMr.BIGの<トゥ・ビー・ウィズ・ユー>を歌ったりしてました」

―― 高校卒業後に渡米しますが、その理由は?

「それは、都会に対する憧れのみなんですよ」

―― 音楽に直結する憧れではなく?

「ええ、島国の田舎ものが大都会に憧れている感じ。なにか見つかるんじゃないか、という。だからその時は、音楽を本気で考えてはいなかった。本当に憧れでしかなく、大きなウェイトをしめてはいませんでした」

―― その生活を経て、ニューヨークから持ち帰ったものは?

「生き方ですよね。日本と比べると、世間体を気にしない国なんですよ、やっぱり。やりたいと思っていることをすぐに行動に移せる、やれば結果につながる国というか。自分のやりたいことに対して素直に生きていくといことを向こうで覚えましたね。たとえば、日本で音楽をやろうと思ったら、セオリーみたいなものがあるじゃないですか。でも、ニューヨークでまっすぐに生きてる人たちを見た時に、日本的な世間体は全部クリアされました」

―― ニューヨークでいろんな人に出会い、考え方も変わった?

「僕のまわりには南米やアジアの人が多かったけれども、僕が音楽をやろうと思い直したきっかけもその人たちだった。留学先の同じクラスに、夢を求めてブロードウェイのダンススクールに通ってる人たちがいたんですよ。彼らは30歳を過ぎてたんですが、一生懸命にオーディションを受けてる姿を見て……。その時僕は25歳で、もう音楽をあきらめようとしてたんです。遅いよな、と思ってて。でも彼らを見た時、まだ出来る! と思った」

―― 自分にも出来る、と。

「成功するしないじゃなくて、やるかやらないか、なんですよ。人に歌を届けることがすごく好きだったことを忘れかけていたんですが、彼らみたいにキラキラ輝いている人生の時間を、僕も過ごしてみたいと思った。そう考えたら、すごくスムーズに動きだしました」

―― そんな経験を通じて完成した1stアルバム『ぼくのうた』には、沖縄のカラーと普遍的なポップスの魅力がバランスよく収められていますね。初めてアルバムを作り上げた感想は?

「やればできるんだなあ、という(笑)。僕の場合、1stとは言っても書き溜めてる曲があったわけではないので、時間がない中でよくやったなと思いました」

―― 作る前からコンセプトみたなものはありましたか?

「もう、そういう余裕もなく。ただ、レコーディングに入る前に<ぼくのうた>のサビの詞だけはできていたんです。その詞をプロデューサーの上地等さん(BEGIN)に見せて、“こういうことが歌いたいです”と伝えていました。そうしたら、おのずとその方向に向かっていって」

―― 『ぼくのうた』はアルバムの表題曲でもありますが、とてもストレートなタイトルですね。前向きで、迷ってる人の背中を押してくれるような歌です。

「これが言いたいってことを全部詰め込みました。音楽を始めた時の気持ちを忘れないように……。こういう思いで歌を歌っていきたいという決意表明みたいなものです。アルバム全体が、そういう方向に自然に向かっていった感じがします」

―― なかには沖縄の色が濃い歌もありますが、こだわりはありますか?

「僕自身は沖縄にこだわってはいないんです。自然に自分の中から出てくる琉球音階や方言は表現していくつもりですが、必ず沖縄っぽくしようとは思ってないですね」

―― 澄んでいて、伸びやかで、心のこもった響きを持つ“声”が、永山さんの大きな魅力のひとつだと思います。ご自身で意識していることは?

「目指すところは、ひと声聴いただけで“あ、永山尚太だ”って思われるような歌を歌いたいなあ、と。声の存在感を表に出せるようになれたらいい。それに合わせて詞と曲の世界観が伝われば、アーティストっていうのはずっと人の心に残っていくものだと信じています」

―― 今後の抱負として、どんなシンガー像を描かれていますか?

「たとえば、人が青春時代に聴いていた音楽には、その時の風景や匂いまでを思い出させる歌ってあるじゃないですか。そんなふうに、風景やシーンと一緒に流れるような歌を歌っていきたいです。べつに広く浸透しないでもいいんですよ。一人ひとりにしっかりと、深く残ってくれたら。そういった思いで音楽を続けていきたいと思っています」


取材・文/吉井孝(2006年11月収録)


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