“どう見えるか”よりも“音の面白さ” Neetz『Figure Chord』

Neetz   2019/02/28掲載
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 2016年のアルバム『KANDYTOWN』リリース以降、各メンバーのソロが活発化しているKANDYTOWN。そのビートメイク、エンジニアリングを担い、ラッパーでもあるNeetzがメジャーでは初のソロ・アルバム『Figure Chord』をリリースした。KANDYTOWNのメンバーをはじめ、PESKOJOEC.O.S.A.KIANO JONES唾奇、シンガーのYo-SeaMALIYAをフィーチャーしたこの作品は、ビートメイカーとして、サンプリング主体のトラックからシンセで弾いたメロディと打ち込みによるコンテンポラリーなプロダクションへと移行を果たしたアルバムにして、ラッパー、作品のトータルプロデューサーとしての可能性を追求したアルバムでもある。音楽を多角的に捉えながら、時間をかけて制作に臨んだ作品の先に彼が見出した自身の個性とは?
――BANKROLLとYaBastaという2つのグループが合体して誕生したKANDYTOWNにあって、どちらのグループにも所属していなかったNeetzくんはKANDYTOWNのなかでも独自な立ち位置にいますよね。
 「そうですね。KANDYTOWNは和光学園に通ってたメンバーが多いんですけど、俺は幼稚園だけ和光で、その後、別の学校に通っていたので、KANDYTOWNの他の人たちとは関わり方がちょっと違ってて。もともとはDJ Minnesotahとビートを作ったり、自分でラップを録ったりしていたんです。で、そのビートをどこかのタイミングで小学校の時にサッカークラブが一緒だったKIKUMARUに渡したら、それが広まって、俺がビートを作ってることが周りに認知されて。“ラップを録ったりしてるなら、レコーディング出来るじゃん”ってことで、みんなが勝手に家に来るようになったんです」
――ヒップホップと出会ったのは?
 「小学校の時ですね。和光に通ってた3つ上の兄がいて、その代はKGDRDragon Ashの〈Grateful Days〉が流行っていたんですけど、兄経由でそうした音楽を聴いたのが最初ですね。そこから徐々に海外のヒップホップを聴くようになり、自分でもリリックを書き始めて、しばらくしたら、曲を作るならビートが必要じゃんって。それでMPC2000XLを買って、自分でビートを作り始めるようになったんですけど、一番最初はサンプリングという手法に衝撃を受けたんですよね。作曲は出来そうもないけど、サンプリングだったら、パーツを組み合わせれば、俺でも作れそうだし、ラップも歌が上手くなくても出来そうだから、自分でラップとビートを作れば、曲が出来るなって。ヒップホップは見た目から入るやつもいると思うんですけど、俺は音の面白さに惹かれてハマっていって、最初はラップもやっていたんですけど、その後はビートメイクがメインで、ラップはやったりやらなかったり、マイペースだったんですけど、KANDYTOWNでアルバムを出した後のツアーでラップする機会が増えて、他のラッパーがみんな格好いいから、自分もラップしたいなと思うようになっていったんです」
――ラッパーはスキルはもちろんのこと、クルーにおいては、キャラ立ちが問われると思うんですけど、KANDYTOWNのなかで、Neetzくんが目指すラッパー像というのは?
 「ラッパーは音楽以外のキャラも重要だと思うんですけど、俺はキャラよりも音楽としてどうなのか、絵としてどう見えるかより、曲を聴いた時に想像力が膨らむ作品作りを意識していますね」
――音楽至上主義というか、ビートメイカーらしいラップの捉え方ですね。そして、ビートメイカーとしては、ブーンバップのリバイバルがピークのタイミングだった2016年にKANDYTOWNとしてアルバムをリリースして。その後、日本においても、トラップをはじめ、アメリカの最新のヒップホップに呼応した流れが主流になっていくなかで、今回のアルバムは同時代性や現代性を意識したNeetzくんの作風の変化が色濃く反映されていますよね。
 「まさにその通りですね。昔作っていたトラックは90年代的なブーンバップのマナーに則ったものだったんですけど、それだけだと自分のなかで物足りなくなって、今っぽさを意識するようになりましたね。ただし、今っぽい、新しいものだけがいいというわけではなく、これまでやってきたことも大事にすることで両方の要素が引き立つんじゃないかと今は考えていますね。トラップは最初どう聴いたらいいか分からなかったんですけど、聴いているうちにハマっていったというか、その中毒性の高さに特徴があるんだなって。しかも、その中毒性は複雑なリズムパターンを組めばいいわけではなく、むしろ、シンプルなリズムパターンから生み出される中毒性の高さが不思議だったりするし、自分が惹かれるところでもあるんですよね」
――そうなると使う機材や作り方も当然変わりますよね。
 「そうですね。サンプラーから打ち込みとシンセの弾き主体になりました。小学生の時にピアノを嫌々習わされていたこともあって(笑)、鍵盤の感覚は少しだけ残っているので、コードをジャーンって弾いて、その後で上に乗せるメロディを片手で弾いたりするくらいなんですけど、子供の頃の経験がこんなところで役立ったりするんだなって。作り方も以前はサンプリングで作った上ネタに対して、リズムを付けていく作り方だったんですけど、このアルバムはサンプリングを用いず、鍵盤で弾いたコードやメロディにリズムを付けるやり方にがらっと変わりましたね」
――つまり、作曲に近いビートメイクになったわけですね。Neetzくんのトラックは、すっと耳に入ってくるスムースさに特徴があると思うんですけど、作り方はサンプリングから弾きに変わっても、上モノありきのプロダクションゆえにスムースさは揺るぎないですよね。
 「そうですね。そこは常に意識してます。ただ、機材や作り方を変えたことで、自分のなかで満足出来るレベルに到達するまで、かなりの試行錯誤があって、スムーズにはいかなかったというか、今回のアルバムはビートの制作だけで1年くらいかかったんですよ」
――アルバムを制作するうえでは何らかのコンセプトを設けていたんですか?
 「制作に取り掛かった段階では、カルヴィン・ハリスのアルバム『FUNK WAV BOUNCES 1』のような夏聴ける華やかな作品をイメージしていたんですけど、行き詰まってしまって。あと、ラッパーとして自分が言葉を乗せるなら、華やかで明るいトラックは違うかなって(笑)。だから、途中から大きなコンセプトは捨てて、適材適所でラッパー、シンガーをフィーチャーしながら、曲単位で丁寧に仕上げてきました」
――KANDYTOWNからMUD、PES、唾奇をフィーチャーしたトロピカルな「Notion」、GottzKEIJUに加えて、シンガーのYo-Seaをフィーチャーした抜けのいい「Sierra」の2曲は制作開始時のコンセプトを思わせる夏らしい曲ですね。
 「まさに。〈Notion〉に関しては、制作の進行具合もあって夏に出せなかったのが残念でもあるんですけど、この曲では3人のラッパーの意外な組み合わせを提示したくて、PESさんと一年を通じて暑い沖縄出身の唾奇に声をかけさせてもらいました。沖縄といえば、Yo-Seaくんもそうですよね。ラッパーに関しては、自分のラップを入れたビートとコンセプトを伝えて、後はお任せだったんですけど、〈Sierra〉のYo-Seaくんや〈Fleeting〉にフィーチャーしたMALIYAちゃんといったシンガーとの曲はプロデューサーとして関わった側面もあって。シンガーとの共同作業は、普段、ラッパーばかりと仕事をしている自分にとってかなり刺激的で、歌からもらったインスピレーションは大きかったですね」
――さらに、IORyohu、DIAN、KIKUMARU、BANKROLLといったKANDYTOWN所属のラッパーたちにKIANO JONES、KOJOE、そして、「Night Swim」にフィーチャーした名古屋のラッパー、C.O.S.A.も意外な人選だと思いました。
 「C.O.S.A.くんとは、MUDのバックDJとしてライヴに行った時に何度か一緒になったことがあって、まぁ、でも、KOJOEさん、KIANOにしても、ゲストに関しては、そういう繋がり云々というより、単純にやっていることが格好いいかどうか。その人の存在感も大事ですけど、音楽的に突き抜けたものを感じる人に声をかけさせてもらいましたね」
――今回のアルバムは、Neetzくんにとって、どんな作品になったと思いますか。
 「今回のアルバムは初めて自分から発信した作品ですし、自分で全てのトラックを作ったうえで、全曲ラップしているので、自分にかかる負担はいつにも増して大きかったんですけど、普段、意味が分からなくても、リズムとラップが融合した気持ち良さ優先で、USのヒップホップを聴いている自分にとって、リリックのメッセージ性があまりに強いと音楽としては言葉が邪魔になってしまうなと思ったんですよ。だから、メッセージもありつつ、ビートにはめるラップのスムースさも兼ね備えたいい意味で聴き流せるアルバム、バランスがとれたアルバムになっているといいなって。だから、アルバムタイトルは『BALANCE』にしたら良かったのかもしれませんね(笑)」
――ビートメイカー、ラッパー、プロデューサーとしての可能性が広がった今回のアルバム以降、どんな活動をイメージされていますか?
 「ビートメイクに専念して、ディレクションもきっちりやった歌モノを沢山つくりたいなと思ったりもするし、このアルバムを作ったことでもっとラップもやってみたいと思ったりもするし、バランスを取りつつ、色んな可能性を模索することになるんじゃないかな(笑)」
取材・文 / 小野田 雄(2019年2月)
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