ギタリスト小沼ようすけがジャズへの思いを素直に出したアルバムを作った理由

小沼ようすけ   2014/11/06掲載
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 サーフ・ジャズやカリブの民族音楽奏者を招いた作品をリリースするなど、ジャンルを超えた音楽性を追求してきたジャズ・ギタリストの小沼ようすけ。最近ではピアニストの宮本貴奈とのデュオ・ユニット、Double Rainbowなど精力的に活動を続ける彼だが、ソロ作としてはじつに4年ぶりのリリースとなった。最新作『GNJ』は、ジャズ・ギタリストとしての原点を見つめ直すことで、メロウながら生命力にみなぎった楽曲が並んでいる。だが、この4年間は小沼にとって、ミュージシャンとしての迷いの時期、旅行中の怪我を機にギターと向きあった数ヵ月間、シンプルな表現の中に自分を取り戻したりと、さまざまなドラマがあったようだ。
――2010年リリースの前作『Jam Ka』以降も、コンスタントに活動を続けていましたが、オリジナル・アルバムとしては4年ぶりです。新作『GNJ』の制作を始めたのはいつ頃でしたか?
 「アルバムを作ろうと意識しはじめたのは2014年に入ってからです。前作『Jam Ka』を出すまでは毎年アルバムを出していましたが、『Jam Ka』以降はことソロ作となると、“何をしたらよいのか”って、迷っていました」
――そうなったきっかけは何でしたか?
 「アジアを旅して、そのインスピレーションをもとに作品に作ろうとしたら、旅先で怪我をしてしまって。“出すべきタイミングじゃなかった”って思ったせいか、なぜか能動的に動けなくなっていました。そのあと何度か作品を出そうとしても、これまでの作品以上のものをという強迫観念もあって、いま出すべきなのかどうかの踏ん切りが付かなかったんです」
――なるほど、これまで順調に流れていたものが、一度停滞してしまったようですね。そんな中で作り上げられた『GNJ』は、昔の小沼さんの演奏を彷彿とさせる、ジャズと向き合ったような作品でもありました。ある意味、自分を見つめ直すという意識もあったのですか?
 「ちょうど新しいレーベルに移籍したのですが、そのレーベルは僕のデビュー・アルバム『nu jazz』から数枚に携わっていた、元担当ディレクターが立ち上げたんです。それで新しいレーベルから、ジャズのレコードを出さないかって話をもらって。それまでの僕は、ジャズに何を足したら新しい音楽になるかという意識が強くて、トラディショナルなジャズに向き合った作品がなかったんです。だから、20代の頃から魅了されてきた、ジャズへの思いを素直に出した作品を作るのもいいのかなって思うようになったんです」
――止まっていた歯車が、そこで動き出したということですか?
 「いいえ、まだカヴァーにするのか、オリジナルを書くのかも分からなくて、それから結局1年くらいは悩んでいました。でも、自然に書いた曲をそのまま演奏したらいいって思えるようになって、ようやく動きはじめました」
――確かに『GNJ』からは、小沼さんの自然体な雰囲気が伝わってきます。
 「でも、それは結果論であって。思いつくままにジャズを演奏したり曲を書いたら、自然や旅などの自分が影響を受けてきたものが滲み出てきたというか。今回のアルバム作りでは、自分でもそれを再確認できました」
――小沼さんにとっての曲のインスピレーションは、音楽よりも海や旅などの自然に由来する気もします。
 「自然の中で生活するうえで得た感情を曲にしたいって思うことはよくあります」
――新作で言えば「Super Moon」なんてまさにそうですよね?
 「そうそう(笑)。スーパームーンの体験を音にしたらどうなるかなって。そういったときに心が感じたものを、ギターを弾いたときに蘇らせたい意識はありますね」
――タイトルのGNJは“Green Note Jazz”の頭文字を取ったそうですが、Greenという言葉にはどんな意味を持たせているのですか?
 「Greenにもいろんな意味がありますが、僕にとっては自然や木々、あとは平和など、ポジティヴで優しさのあるイメージがありますね。それに自分にとって、生きていくうえで、自然というものが以前よりも重要になってきています」
――そういう意識からか、『GNJ』のギターの音色は、近作の中でもとくにオーガニックな響きだと思いました。
 「たぶんそれは使っているギターが変わったことも大きいと思います。これまではギブソンのES-335を愛用していましたが、今回からエイブ・リベラのギターに変えていますから」
――ギターを変えた理由は何だったのですか?
 「怪我をしたときに病院のベッドの上で、ずっとエイブ・リベラのギターを弾いていたんです。昔から持ってはいたのですが、メイン・ギターとして使ったことはありませんでした。でも弾き込むうちに、このクリーンな音色のギターなら、自分の自然な姿を表現できそうだと思ったんです」
――なるほど。今作は「Bamboo / Tonle Sap」のようにギター1本で爪弾くインスト曲もハイライトのひとつですよね。今の話を聞くと、まさに病院のベッドでギターを弾くうちに、フッと湧いてきたような曲なのかなって。
 「言われてみるとそうかもしれません。『GNJ』はソロ・ギターの延長線上にあるような曲も多いんですよ。以前とは違ってギター1本で成り立つ曲にアレンジを乗せているというか。いま思えば、先ほど話した、病院に入院している間に引きこもってギターばかりを弾いていた時間が貴重なものだったんです。そのおかげでもう一度ギターと向き合えたし、楽器をはじめたときのようなピュアな状態になれました」
――それはプレイヤーとしては貴重な体験ですよね。
 「そのおかげで自分の書く曲にも、確固とした強さを持つことができたし、アレンジに対してもつねに自分がこうしたいって思うようになりました。とくに今作の録音では、僕が描く世界観を察知できるミュージシャンの方に演奏してもらったので、自分のイメージを超える仕上がりになりましたね」
――レコーディングのメンバーはどのようにして決めたのですか?
 「まずベーシストの金澤英明さんにはどうしても参加してもらいたくて。金澤さんは僕が大好きな60年代後半から70年代のジャズの雰囲気を持っている方なので、このアルバムのジャズ的な側面を支えてもらっています」
――逆にベーシストでも鈴木正人さんが参加している「Explorer」などは、ミックス感覚に富んだ曲がありました。
 「あの曲は鈴木さんとパーカッションの仙道(さおり)さんで会話するような曲になりました。このギターとエレキ・ベースとパーカッションの編成は、もっと追求したいって思ってます」
――それはどうしてですか?
 「とくに仙道さんのパーカッションを聴いていると、リズムを刻むというよりも、ベースが下にあって、その上で漂っているんです。そうするとスペースが生まれるから、ギターの立ち位置も変化する。それが面白いんですよ」
――『GNJ』を作り終えてみて、どんな手応えを感じましたか?
 「ありのままの自分をパッケージできたことが一番嬉しかったですね。背伸びをせずに自然体で新しいことにも挑戦できたし。『GNJ』を経て、ようやく重いものがゆっくりと転がり始めたような感じがあって、今は早く次の作品を作りたいです」
――『GNJ』は小沼さんにとって新たに成長する布石になったんですね。それを踏まえて、今後の展望についても教えてもらえますか?
 「今はまた旅をして、いろんな場所で音を録音したり、それをバンドで表現したいですね。あと、最近はジャズでも、アフリカはもちろん、ヨーロッパで活動するアフリカ系のジャズ・ミュージシャンの音楽に魅了されています。彼らの音楽はジャズでも、そのどこかに自然の要素を持っていて。将来のヴィジョンとして、僕もそういった音楽家を目指していきたいと思っています」
取材・文 / 伊藤大輔(2014年10月)
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小沼ようすけ
“The Road to GNJ”new album『GNJ』 発売記念ライヴ
出演: 小沼ようすけ(g)
金澤英明(w-b) 鈴木正人(e-b) 坂田 学(ds) 仙道さおり(perc)

www.yosukeonuma.com

2014年11月26日(水)
愛知 名古屋 NAGOYA Blue Note
〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦3-22-20
052-961-6311

1st 開場 17:30 / 開演 18:30
2nd 開場 20:30 / 開演 21:15
チャージ 6,000円〜 (税込 / 別途飲食代)



2014年12月22日(月)
東京 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-14-8 O-EASTビル1F
03-5459-8716

開場 18:30 / 開演 19:30
前売 4,800円 (税込 / 別途ドリンク代 / 全席自由 / 整理番号付き)
※未就学児童入場不可
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