レディオヘッドのドラマーが、ダイナミックなバンド・サウンドを聴かせるセカンド・ソロ・アルバムを発表

フィリップ・セルウェイ   2014/10/07掲載
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 レディオヘッドのドラマーとして知られるフィリップ・セルウェイの2ndソロ『ウェザーハウス』。2010年のファースト『ファミリアル』がアコースティックな弾き語りを中心に家庭やささやかな幸福などごく身近な題材を扱っていたのに対して、今作はポストパンク的なメロディとダイナミックなバンド・パフォーマンスを聴かせるモダン・ロックに。ソロとしての自信を以前に増して感じさせるこの作品への手応えを訊いた。
――前作とはがらっと印象の違う作りの新作ですが、こうした作風に向かうきっかけがあったんですか。
 「ひとつは『ファミリアル』のツアーをやったときに、そのときのバンドに今度のアルバムを一緒に作ったアーデム・イルハンとクインタがいたんだけど、とくに3人だけでロンドンでやったライヴがあって、そのときに僕たち3人の間には音楽的な可能性がたくさんあると実感できた。すごいダイナミズムを感じられたし。セカンドを作ろうとしていたので、この3人でやったらすごく実りあるものになるのかもしれないと思ったんだ。実際に制作を始めて最初にレコーディングしたのはアルバムの最初に入っている〈Coming Up for Air〉だったんだけど、この曲を作ったことでこのアルバムが持つ世界観がいっぺんに見えることになって、実際に演奏してみるまで僕としてはここまでのものができるとは予期していなかったんだよ。たとえば、『ファミリアル』ではまだ僕は自分に合った歌と声を探している段階だったから、アレンジなどもすべてその歌と声を中心に作り上げていたんだけど、今回のアルバムでは、ドラム・トラックから作っていくことも多かったわけで。まずはビートを作って、それからアレンジを作っていくからすごく拡がりのある音を作れるようになったし、それをベースにして合いそうな歌を探していった。プロセスとしてそれだけ違っていたということなんだ」
――たとえば、あらかじめ用意しておいた楽曲も、3人で取り組んでみることで性格が変わったと思いますか。
 「うん、そうだね。自分1人で書くのは、本当に濃密な形で、実を摘み取っていくような作業になるんだけど、その後他人に作業に加わってもらうのは、やっぱりなにかしらべつな側面をもたらしてほしいからこそなんだよ。どの曲もデモではアコースティックだったんだけど、〈Miles Away〉などは自分でもこうなるとは思ってもみなかった曲になったし。レコーディングするまでは本当に静かな曲だったからね。だけど、レコーディングしてみたらアレンジがとても強力な音楽になった。3人での演奏によってこう仕上がったんだと思うよ」
――すごく大事に作った感じの1stと、ダイナミズムが伴うようになった今作と較べてその違いの一番大きな理由はなんだと思いますか。
 「そこに反映されているのはシンガー・ソングライターとしての僕自身の経験で、もし今度のアルバムがファーストだったとしたら、やっぱり『ファミリアル』のような作り方をしてたんじゃないかと思うんだ。シンガー・ソングライターとしての活動の仕方を肌で感じて学び取っていくという意味合いでね」
――アルバム全体はモダン・ロックという印象ですが、〈It Will End in Tears〉などは古典的なシンガー・ソングライターの楽曲として仕上がっている印象が強いですし、アルバム・タイトル『ウェザーハウス』もこの歌詞から引いてきたものですよね。
 「この曲は取りかかったときに意識的に、あんまり手を加えないようにしたかったんだよね。というのは、きみも言ったようにすごくクラシックな曲の構造を持っているように感じたからで、どこかキャロル・キングやカーリー・サイモンを思わせるものがあって、それを損ないたくなかったんだ。一方で、歌詞はとても苦い内容のものになっているよね。アルバムのタイトルもこの歌詞から引っ張っていて、ウェザーハウス(寒暖計置き。欧米では必ず家を模して男性と女性が寒暖計の両脇に佇む作りになっている)というタイトルが収録曲のさまざまな温度や情感とそのまま呼応しているようにも思えたんだよ。それでアルバム・タイトルにもいいかなと思ってね」
――歌詞的には『ファミリアル』が家庭や家族をモチーフにしたものが多かったのに対して、今回は恋愛関係や感情を意識的に扱っているようにも思えますが。
 「うん、恋愛に限らず、ぎこちない対人関係の力関係や力学みたいなものが多いんだ。だから、どんな関係にもありうる、ある関係の状態ということに落ち着くんだろうけど。まあ、作品を書く際にそういうモチーフに僕が惹かれるということなんだろうね」
取材・文 / 高見 展(2014年9月)
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