6年ぶりとなる新作「光る音」を発表したPolarisの大谷友介を直撃!

Polaris   2012/10/09掲載
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 大谷友介(オオヤユウスケ)と柏原譲からなるPolaris(ポラリス)が活動再開、6年ぶりとなる新作「光る音」を発表した。バンドの活動休止以降、大谷はハナレグミをはじめ他アーティストのプロデュースや映画音楽の制作を手掛けるとともに、活動の拠点をドイツのベルリンに移し、自らのソロ・プロジェクトSPENCERをスタート。一方の柏原はピアニスト・作曲家の丸山康太郎とのotouta(オトータ)や、フィッシュマンズの盟友・茂木欣一東京スカパラダイスオーケストラの加藤隆志とのSo many tearsを結成するなど、それぞれ充実した音楽活動を展開してきた。そんなふたりがこのタイミングで再会を果たし──というよりも今回は“二度目の邂逅を果たした”という言い回しのほうが適切かもしれない──どのような経緯でPolarisを再始動させることになったのか。大谷友介に話を聞いた。




──6年ぶりにPolarisが復活したわけですが、そもそもどういった流れで再始動することになったんですか?
 「僕も譲さんもそれぞれ活動期間中に個々でソロの活動とかをやっていて。譲さんは自分のバンドを組んだり、僕はソロ・ユニットのSPENCERをやったり。それ以外にも僕は他のアーティストのプロデュースをしたり映画音楽を作ったり、バンドをやってるときとは違う音楽制作の仕方みたいなことを結構学んで。そういう活動をそれぞれやっている中で、久々に譲さんと会う機会があって、“久々にやってみようか”って。まあ、少し前からなんとなく予兆はあったんだけど」
──予兆というと?
 「SPENCERとしてソロ活動をやっていく中で、ライヴでもPolarisの曲を自然に演奏しだしたり。一時期は、あえてPolarisの曲はやっていなかったんだけど」
──封印というか。
 「そうそう。封印だよね。だけど、ソロ活動を通じて自分が作っている音楽を見つめ直したとき、自然と自分の真ん中にPolarisの曲があるなということに気付かされて。(再始動に向けて)具体的に動き始めたのは去年の秋くらいだったかな。Polarisを始めたときにすごく似てるんだけど、唐突に“やろっか?”って(笑)。ある意味、勘っていうか。そもそもPolarisを組んだときも、気がついたら始めてたみたいな感じもあったから」
──そのあたりを改めて聞きたいんだけど、もともと譲さんとはどんな感じでPolarisを始めたんですか?
 「もともとは、2000年に赤坂BLITZでキリンジとかクラムボンが出てたワーナー系のイベントがあって。その日にミトが“今日、柏原譲が会場に来てるらしい!”とか言ってて(笑)」
──その時点では面識がなかった。
 「うん。僕らは普通にファンとしてフィッシュマンズを観にいってたから。そしたらライヴが終わったあと、譲さんが楽屋に入ってきて、“あ! 柏原譲だ!”って(笑)」
──はははは。
 「で、ライヴが終わったあと、譲さんも打ち上げに来てくれて、みんなでワイワイ話したの。その日は、普通に楽しく飲んで帰ったんだけど、数日後、ミトから “譲さんが連絡を取りたがってるみたいだよ!”って電話が突然かかってきて」
──打ち上げの席で“一緒に何かやりませんか?”みたいな話は。
 「それが全然してないんだよね。普通に音楽の話をしたぐらいで。それでこちらから連絡して、会いましょうってことになって。電話で話したときに、“よかったら大谷くんが作ってる曲を聴かせてほしい”って言われていたから、ちょうど(以前組んでいた)LaB LIFeを解散した直後ぐらいだったし、ソロでやろうと思って作った曲のデモを持っていったの。で、それを聴いてもらって、よかったら1曲くらいベース弾いてくれないかなとか思って」
──最初はそのくらいな感じだったんだ(笑)。
 「そう。でも、いざ本人に会ってみたら、“僕も新しいことを始めようと思ってるし、せっかくだったら一緒に音でも出そうか”みたいなことを言われて。“えーっ!”みたいな」
──少し前まで普通にファンだったのに(笑)。
 「その流れで、“じゃ大谷くんち行くわ”って譲さんが録音機材を持ってきて、いきなり畳の部屋で二人であぐらかいてギターとベースで音を合わせはじめて。どちらかといえば二人とも警戒するタイプなんだけど、そのときは、すんなり音が絡んだんだよね。それでリハに入って、二人だけでライヴやって」
──すごく自然な流れで。
 「うん。高校生とか大学生がバンド始める感じに近かったと思う(笑)。今回はあのときに近い感覚なんだよね。全然、無理してないっていうか。何かおもしろそうなことができそうな気がして。あと、時間を空けてみて、やっぱりPolarisが自分にとって大事なものだということに気付くこともできたし。と言ってもまだ約2曲しかできてないんだけど(笑)。正直、新しいPolarisはまだ作り中って感じかな」
──ある意味、今回の作品は予告編というか、イントロダクション的な意味合いが強いんですか。
 「そうだね。自分たちでもまだ、新しいPolarisの全貌は見てない感じ」




──で、話を戻して、去年の秋に譲さんと会って、Polarisを再始動することになって。そこから先はどんな感じで進んでいったんですか?
 「まずは曲を作らないと何も始まらないんで、春前くらいまで曲作り期間を設けて。僕の中で書き溜めてきた曲もあったし、新たに作ってみたいものもあったから。だけど久々だから、どんな感じでPolarisの曲を作ってたか忘れちゃってて(笑)」
──さすがに6年空いてると(笑)。
 「でも、新しいことをやろうと思ってるんだから忘れててもいいかって。それであえて昔とは違うことをやってみようと思って。今回、1曲目に入ってる〈光る音〉も最初はPolarisっぽくないアレンジとか、いろいろ試したんだよね。でも、いざやってみたら、あまりしっくりこなくて。そんな感じで(1人で黙々と)ストイックにやり倒しているうちに、いわゆる一聴して新たなサウンドとかじゃないんだけど、不思議とみんなが知ってるPolarisのサウンドに近づいていって」
──いろいろ模索した結果、やっぱりここに辿りつくんだみたいな。
 「レコーディングのときも、譲さんや参加してくれたミュージシャンが、“今までのPolarisっぽい感じもするから、あえて違うことをやろうぜ”って、いろいろ試してくれたんだけど、最後に帰結していくのはいつも同じところなんだよね。それこそ4つ打ちにしたり、いろんな方向性を試したんだけど」
──離れようとするんだけど、結局は戻ってきてしまう。
 「うん。どうしてもそっちの方向に向かってしまうみたいで」
──曲が持つ力に引き寄せられて。
 「欣ちゃんがコーラスを録るためにスタジオに来たときに“この曲って不思議な感じするね”って。“ポップ・ミュージックなんだけど感じるものが独特で(フィッシュマンズの)〈WALKING IN THE RHYTHMnをレコーディングしてるときの感覚に似てる”と言っていて。 “でも、なんでそう感じるかは、よくわかんないよね、アハハハ”って最後は欣ちゃんらしい最高の笑顔で帰っていっちゃったんだけど(笑)。大きな謎を残したまま」
──(笑)。でもたしかに、「WALKING IN THE RHYTHM」同様、どこかにゆっくりと導かれていくような感覚はありますよね。
 「歌詞もメロディも、何かの形にハメようとして書いてないのね。何度も歌ってみて、歌詞を書こうとする作り方じゃなくて、降りてくる言葉のみ拾って。メロディも別のものを付けてみたりしたんだけど、最終的に残ったのは今のメロディで」
──少し時間を置いてPolarisを始めたことで、大谷くんの核の部分にあるものが自然に出てきたのかな、という気もします。
 「ああ、それはあるかも。そういえば最近、10代の頃に作った曲を掘り起こしてて。実家にあるCD-Rとかカセットとか聴いたりすると、メロディの感じとか当時からあまり変わってないんだよね(笑)。高校生の頃とかに作ったデモとかもあるんだけど、アレンジが違うから違う風に聴こえるだけで、今とやってることはほとんど変わってなくて。最近それがすごく面白かった」
──自分の源流を再発見する作業。
 「うん。そういう部分に触れていったほうがおもしろいなぁと思って」
──ちなみに茂木さんとか、HAKASE-SUNが参加することになったのはどういう流れで?
 「それもすごくシンプルな話で。最近、欣ちゃんは、フィッシュマンズとかで譲さんとやってるし」
──So many tearsも一緒にやってますよね。
 「そう。だから一緒に演奏する機会も多いでしょ。HAKASE-SUNも当然そうだし。僕も二人ともよく知ってる。久々だから、リズム隊に関しては譲さん的になるべく音の感触を共有できる人とやりたいっていう希望があって。それ以外の意図は特になくて」
──フィッシュマンズのリズム隊っていうことで取り沙汰されがちだけど、ごくごく自然な形で参加することになったと。
 「信頼できる人とやりたいっていうだけかな。Polarisって譲さんがフィッシュマンズを脱退してすぐに始めたバンドだったから、そういうことを言われがちなバンドだったんだったんだよね。それに対して、僕も20代の頃とか、すごく悩んでいて。でも、やり続けていくうちにそういうものがなくなっていって、今はどう言われても気にならなくなった。特にドイツに住むようになってから考え方がさらにシンプルになった気がする。向こうにはフィッシュマンズのことを知ってる人とかほぼいないし。東京にいると、いろんなことが気になってしまうけど、そういうところから解放されたっていうのも大きいと思う」
──今後、Polarisとしてはどんな感じで活動していく予定ですか。
 「とりあえずじっくりいこうかなって。再始動したと思ったら、すぐにアルバムをポンと作ってとか企画っぽいでしょ(笑)。そういうのがいちばん嫌なんだよね。自分で楽しみながら、ちゃんと作りたいから」
──今は具体的にどんな作業を?
 「アルバムに向けて曲を作ってる。アルバムって形が今の時代どこまで重要なのかわからないけど、またやり始めたからにはやっぱりアルバムを作りたいから」
──曲そのものは結構ある?
 「あるんだけど、ある程度、骨になる部分にはちゃんと時間をかけたくて。歌詞とメロディがあればいいやじゃなくて、根っこの部分、骨組みの部分を、直感的にいいからオーケーじゃなくて、そこを突き詰める感じは、やってみようかなって。録音したから完成ってだけじゃなくて、1回録音した曲でも解体してもいいかもしれないし。決まりきったやり方だけじゃなく作ってみようかなって」
──作業的には、譲さんとデータのやりとりで?
 「うん。基本的には。それで、ある程度作業が進むとスタジオ入ったり。久々にリハをやった感じとかおもしろくて。“6年も空いてたっけ?”ってくらい自然だったんだよね。譲さんが〈光と影〉をやろうって言いだして、演奏してみたりして。そうすると、6年ぶりに演奏するんだけど、細かいアレンジとか全部覚えてて」
──身体が覚えてるんですかね。
 「 “曲長いね”とか(笑)、やってるといろんな感覚が蘇ってくる」
──Polarisは、以前のようにパーマネントに活動する感じになりそう?
 「そうだね。でも、前みたいに、一年中Polarisをやってる感じにはならないと思う。譲さんはSo many tearsがあったりとか、僕もソロの活動を続けていくと思うし。でも、アルバム1枚作って、またお休み、とかじゃなくて、ちゃんと継続して活動していきたいなと思う。最近ふと思ったんだけど、別に6年休んでたんじゃなくて、たまたま6年ぶりに新譜が出るってだけなのかなって」
──6年間ガッツリ創作期間があったということで。
 「そうそう(笑)。エアロスミスとかと同じような感じかも(笑)。でも、とりあえず次のアルバムが何年後とかにならないように今は頑張らないといけないんだけどね(笑)」
取材・文/望月哲(2012年9月)
【イベント情報】

〈タワーレコード新宿店14th BIRTHDAY×Polaris「光る音」発売記念アウト・ストアイベント〉
●日時:10月10日(水) 
●場所:新宿LOFT
●時間:開場19:00 / 開演20:00
●内容:トーク&ミニライヴ 
イベント対象商品:Polaris「光る音」
イベント対象店舗:新宿店、渋谷店、池袋店、秋葉原店、横浜モアーズ店、吉祥寺店
[イベント参加方法]
上記タワーレコードの店舗にて予約者優先で9月19日発売『Polaris / 光る音(UVCA-6001)』をお買い上げの方に、先着で「整理番号付イベント参加券」を差し上げます。別途ドリンク代¥500が必要となります。
問い合わせ先:ポリスター(03-6418-6011)

〈タワーレコード梅田NU茶屋町店× FM802“Midnight Garage”
Polaris「光る音」発売記念インストアイベント&公開録音〉

●日時:10月20日(土) 17:00スタート
●場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
●出演:大谷友介(Polaris)、土井コマキ(FM802“Midnight Garage”DJ)
●内容:トーク&アコースティック・ミニライヴ&握手会
ご予約者優先で、タワーレコード梅田NU茶屋町店、梅田大阪マルビル店、難波店、あべHoop店にて、Polaris「光る音」をお買い上の方に先着でイベント参加券を差し上げます。イベント参加券をお持ちの方はイベトスペースにて優先的にご観覧いただけます。
問い合わせ先:タワーレコード梅田NU茶屋町店 06-6373-2951

〈ヴィレッジヴァンガードPolaris「光る音」発売記念インストアイベント〉
●日程:10月28日(日)16:30スタート
●場所:ヴィレッジヴァンガード下北沢店
●内容:トーク&アコースティック・ミニライヴ&握手会
※整理券をお持ちのお客様優先(入場人数に限りがあります)
対象商品:「光る音」
対象店舗:ヴィレッジヴァンガード下北沢店
整理券をお持ちのお客様優先(入場人数に限りがあります)

[イベント参加方法]
ヴィレッジヴァンガード下北沢にて予約者優先で『Polaris / 光る音』をお買い上げの方に、先着で「イベント入場&握手会参加券」を差上げます。
問合せ先:ヴィレッジヴァンガード下北沢店 TEL03-3460-6145

【ライヴ情報】

〈Polaris Live 2012“光る音”〉
●日程:12月21日(金)
●会場:代官山UNIT
●時間:開場18:00 / 開演19:00
●料金:前売4,000円 / 当日4,500円(ドリンク別)
主催:HOT STUFF PROMOTION
企画 / 制作:Familysong / Doobie Inc.
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 www.red-hot.ne.jp
チケット一般発売:10月13日(土)
イープラス:http://eplus.jp
ローソンチケット:0570-084-003(Lコード:72926)
チケットぴあ:0570-02-9999 http://t.pia.jp/(Pコード:181-571)
GAN-BAN:03-3477-5701(店頭販売のみ)

●日程:12月23日(日)
●会場:京都METRO
●時間:開場17:30 / 開演18:00 
●料金:前売4,000円 / 当日4,500円(ドリンク別)
主催:清水音泉
企画 / 制作:Familysong
問い合わせ:清水音泉06-6357-3666
チケット一般発売:10月27日(土)
イープラス:http://eplus.jp
ローソンチケット:0570-084-005(Lコード53544)
チケットぴあ:0570-02-9999(Pコード181-569)
京都METRO:075-752-4765
湯仲間直売所:http://www.shimizuonsen.com/ouken/
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