Port of Notes   2009/11/10掲載
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「Luminous Halo〜燦然と輝く光彩〜」
畠山美由紀&小島大介によるセルフ・ライナー・ノーツ


『Luminous Halo〜燦然と輝く光彩〜』 (RZCD-46277 税込2,800円)
Port of notes
01. 高台の家
02. 甘い理由
03. Fly high
04. 真夏の眩暈
05. 夜明けのバラ
06. 私の街
07. 約束された場所へ
08. If you were coming in the fall
09. Ancient breeze
10. 心の半分
11. 残響
12. おやすみなさい
※各トラックをクリックするとPort of Notesのセルフ・ライナー・ノーツが表示されます。
01. 高台の家
「大ちゃんがメロディなしのコードだけの原曲を持ってきたとき、聴いた瞬間に“いい曲になりそうだな”と思いました。あっという間にメロディが浮かびました。すぐに感想を伝えたんだけど、本人はあんまりピンと来てなくて(笑)。初期の曲でいえば〈more than paradise〉とか、たまにそういうことがあるんです(笑)。最初はギター2本のアルペジオが印象的な曲だったんですけど、ジェシーのアイディアで、ザ・バンド風のアレンジに生まれ変わりました」 (畠山)

「いちばん最初にレコーディングした曲。スタジオに入ったらジェシーがすぐに準備を始めて、全員揃って“せーの”で演奏したんだけど、最中は、すごく不安だったんです。なんか演奏がチグハグに感じて。でも、実際に録った音を聴いてみたら、めちゃめちゃ合っているんです。あれは本当に不思議な体験でした」 (小島)
02. 甘い理由
「シティ・ポップ調をイメージして作った曲。作っている最中は、結構、大変でした。頭の中で鳴っているコードをピアノで拾おうとするんだけど、なかなかうまくいかなくて。大ちゃんに手伝ってもらって、なんとか形にすることができました」 (畠山)

「この曲ではベースのロバート・ジョストがフレンチ・ホルンを吹いています。花が、ふわりふわりと咲いていくようなイメージというか。ホルンのアレンジもロバートが考えているんですけど、彼は天才肌のミュージシャンでした。このレコーディングの最中にも、『セサミ・ストリート』の仕事が決まっていました」 (小島)
03. Fly high
「この曲は大貫妙子さんに歌詞をお願いしました。大貫さんには曲だけお渡しして、フリー・テーマで書いてもらいました。〈今日も汗をかいて 仕事をしてきた友だち〉という意外性のある書き出しではじまって、徐々に大貫さんワールドに突入していく感じが、やっぱり凄いと思いました。この曲を書いている時期、私自身、すごく悩んでいて、大貫さんのポジティヴな歌詞にすごく勇気をもらった気がします。電話でお話したときも、いろんなアドヴァイスをいただきました。ずっと緊張しっぱなしでしたけど(笑)」 (畠山)

「美由紀ちゃんにはない、大貫さん独自の言葉選びが興味深かったですね。すごくポジティヴな歌詞なんですけど、そこには、“まだまだ良い曲作れるんじゃない?”みたいな、僕らに対する大貫さんからの期待が込められているような気がして。広島のライヴで、歌詞が乗った形ではじめてこの曲を披露したんですけど、自然と手拍子が起こって。あれは感動的でしたね」 (小島)
04. 真夏の眩暈
「桜が咲いている時期に多摩川の河川敷に出掛けて作りました。15分ぐらいで曲ができちゃったから、あとは普通に花見をしながら飲んだくれて(笑)。夏がテーマだからといって、変に爽やかでもないし、かといってメロウ過ぎず、すごく独特な雰囲気を持つ曲に仕上がったと思います。知り合いから“エロスを感じさせる曲があるといい”という意見をもらったんで、そのあたりも微妙に意識しています(笑)」 (畠山)

「福岡の夏フェス〈SUN SET LIVE〉に出演が決まったとき、サポート・ギタリストの小池龍平くんと、“海辺で演奏したら気持ちよさそうな曲を作ろう”と盛り上がって生まれた曲。レゲエのリズムになったのは、ボブ・マーリーが好きな龍平くんの影響ですね。ちなみに、この曲では、僕がベーシックな部分の歌詞を書いています」 (小島)
05. 夜明けのバラ
「大ちゃんが貸してくれたキリスト教に関する本に、バラにまつわるエピソードが書かれていて。バラの花はセクシャルであると同時にプラトニックな感情も象徴しているというところからイメージを膨らませて歌詞を書きました。〈真夏の眩暈〉に引き続き、この曲でもエロスを意識しています(笑)」 (畠山)

「パーカッションを叩いているダヴィ・ヴィエイラは生粋のブラジル人なんです。だからリズムが本物のブラジリアンなんですよね。軽快なんだけどズッシリしてるっていう。彼のパーカッションが入ったことで、ゆっくりと大きく進んでいくような、この曲独自のグルーヴ感が生まれました」 (小島)
06. 私の街
「曽我部恵一くんに、大貫さん同様、フリー・テーマで歌詞をお願いしました。キラキラした雰囲気になったらいいなと思っていたんですけど、歌詞が上がってきたら、実際に“キラキラ”という言葉が使われていて、“なんで分かったの!?”って(笑)。今回、歌詞を英訳してジェシーに渡したんですけど、いちばん訳しやすかったのがこの曲でした。曽我部くんの歌詞は視点がクリアなんですよね」 (畠山)

「個人的に2人とも大好きなアーティストだし、曽我部くんと美由紀ちゃんをくっつけたら、どういうことになるんだろうという狙いから、サニーデイ・サービスやジェシーと共演したイベントの打ち上げ会場で曽我部君に歌詞をオファーしました。“♪トゥトゥトゥル”というコーラスは、ジェシーいわく“ローリング・ストーンズへのオマージュ”だそうです(笑)」 (小島)
07. 約束された場所へ
「無意識に出てくるセルフ・セラピーというか。こういうタイプの歌詞はもともと得意なんです。Port of Notesのアルバムには、こういう幻想的な世界観を描いた曲が毎回、収録されているんですよね。この曲は、潜在的にどこかトラッド・ソングっぽい雰囲気を持っているように思います」 (畠山)

「ギターのアルペジオで心の深いところまで降りていくようなニック・ドレイクの曲の世界観が大好きで、それをエレキ・ギターを使って自分なりに表現したら、どこかレディオヘッドにも通じるようなサウンド・アプローチになって。美由紀ちゃんの歌詞には“言葉のサイケ感”みたいなものを感じます」 (小島)
08. If you were coming in the fall
「19世紀に活動していたアメリカの女流詩人、エミリー・ディキンソンの詩にメロディを付けた曲。いつもはメロディから先に作るんだけど、この曲を作ることで、歌詞に合わせてメロディを考えるという作り方もおもしろいなと思いました。ジェシーは、この曲をすごく気に入ってくれているんですけど、最初に聴いたときは誰かのカヴァーだと思ったみたいです」 (畠山)

「もともとは美由紀ちゃんがソロ・ツアーで歌っていた曲なんですけど、アレンジを決める際に僕が譜面を起したりということもあって、今回、Port of Notesのアルバムに入れることになりました。古くから歌われているスタンダード・ナンバーのような雰囲気を持った曲だと思います」 (小島)
09. Ancient breeze
「オリエンタルな雰囲気があって、すごく無国籍ムードが漂う曲ですね。もともと、このアルバムにはシンセサイザーを入れないつもりだったんだけど、スタジオに来たシンセ奏者の方が、すごくスペイシーな演奏をしてくれて、曲の世界観が一気に広がりました。この曲は、いろんな色彩がゆっくりと重なり合っていくようなイメージですね」 (畠山)

「もともとあった別の曲のソロ・パートを長くしようという話になって、龍平くんとギターを弾きながら、ソロ・パートのコード進行をループさせて作ったのが、この曲だったんです。歌詞は僕と美由紀ちゃんと龍平くんで、それぞれのイメージを連想ゲームのように出していきながら作りました。この曲では共作者として龍平くんの名前もクレジットされています」 (小島)
10. 心の半分
「大ちゃんが自信なさそうに持ってきた曲だったんですけど、“いいから聴かせてよ”って半ば無理矢理、聴かせてもらって(笑)、それを元に、私が考えたサビを付けたりして完成した曲です。最初に聴いたときイントロのリフがすごく印象的だったんですけど、実は以前、大ちゃんがそのリフを何の気なしにギターで弾いていて、それが私の頭の中にずっと残っていたんですよね」 (畠山)

「ジェシーによると、この曲は“僕らが子供の頃に流行ったディスコ・チューン”らしいです(笑)。そのあたりの解釈の違いもおもしろいなと思いました。リヴァーヴが深すぎると思ったんで、ジェシーにそのことを指摘したら、“これはダンス・チューンへのオマージュだよ”って。ブランニュー・へヴィーズとか聴き直したら、実際、リヴァーヴが深いんですよね。そんな発見もありました(笑)」 (小島)
11. 残響
「この曲を書いていた日は、小雨が降っていたんですけど、新緑の中に咲くスズランの花が窓ごしに見えて。それを見ながらメロディを作っていきました。私は理論ではなく、閃きで曲を書いていくので、邪念が入ると急にインスピレーションが崩れてしまうんです。このときは、窓から見えた景色によって、インスピレーションが保たれたような気がします」 (畠山)

「制作初期段階でできた曲。気高い雰囲気の曲調というか、どこか合唱曲みたいな感じもあるし……ジャンル分けのできない不思議なタイプの曲ですね。〈約束された場所へ〉同様、すごく“Port of Notesっぽい”曲だと思います。本当はピアノも入れる予定だったんですけど、結果的にギターとコントラバスとドラムのみのシンプルな構成になりました」 (小島)
12. おやすみなさい
「子守唄という形をとっていますが、実はこの曲、私のおじいちゃんに向けて歌っているところもあるんです。おじいちゃんは高齢で身体も弱っているんですけど、“いつも一緒にいるよ”という気持ちを表現したいなと思って、心を込めて歌いました」 (畠山)

「この曲は詞、曲ともに美由紀ちゃんが作っています。最初にデモを聴いた段階で、ピアノの弾き語りでいいと思えるくらいに完成した曲でした。ギター、ベースの演奏に合わせて、美由紀ちゃんに歌ってもらって、帰国後、そのベーシックにチェロを重ねました」 (小島)


構成/望月哲
イラスト/北村範史
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