優しく奏でる篠笛で、安らぎにあふれた時間を――佐藤和哉が妹尾武と紡ぐ初のカヴァー・アルバム

佐藤和哉   2017/12/13掲載
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 篠笛奏者、佐藤和哉の新作『唄の音』は、タイトルからも伝わるが、全編で「秋桜」など歌の名曲を演奏している。篠笛と言えば、祭りのお囃子のイメージが強いが、彼のスタイルは“歌うように奏でる”というもので、日本の情緒を感じさせてくれる。初めてのカヴァー集ではまさにどの曲からも歌が聴こえてきて、郷愁に襲われたり、思わず口ずさんだり、さまざまな感情の旅を楽しめる。そして、音が奏でる色とは何か、篠笛の音が持つ奥深い世界を探訪させてくれる作品でもある。
――カヴァー・アルバムは、初めてですよね。しかも全曲がヴォーカル曲。この作品のアイディアは、どのように生まれたのでしょうか。
 「ひとつは、優しく奏でる篠笛で、安らぎにあふれた時間を楽しんでもらえる作品をずっと作りたいと思っていたこと。もうひとつは、昨年ピアニストの妹尾武さんと共演する機会があり、妹尾節と言いたくなるようなピアノの音遣いに今までにない笛の音、情緒が引き出されたような経験をして、ぜひ妹尾さんとアルバムを作りたいとの思いが合致したところで、聴く人に寄り添うカヴァー・アルバムがいいのでは、というアイディアに至りました」
――「浜辺の歌」から始まり、日本の名曲が続いた後にドヴォルザークの「遠き山に日は落ちて」で本編が終わりますが、この8曲を選ぶのに悩まれたのではないですか。
 「まさに練りに練った選曲です(笑)。僕の希望とスタッフの推薦、さらにファンのかたがたのアンケートも考慮しつつ選びました。そのなかで僕が強く推したのは〈浜辺の歌〉〈夏の終わり〉〈童神〉〈秋桜〉の4曲で、スタッフからの意見で多かったのが中島みゆきさんの〈糸〉。ジブリ映画『コクリコ坂から』の主題歌〈さよならの夏〉は、今年の“「夏のウタ」アコースティック・コンサート”で演奏した曲のひとつで、主題歌は手島葵さんが歌っていらっしゃるんですけれども、その声の雰囲気と笛がマッチしたのと、リクエストも多かったので、選びました」
――このなかで3曲目の「糸」の存在感が強いと言うか、ほかの優しい肌触りの曲に比べると、一つひとつの音が際立ち、メロディの力を感じさせる曲になっていますよね。
 「歌詞の内容をじっくり噛みしめながら笛で歌うと、中島みゆきさんの意志の強さ、人のつながりが起こす奇跡を表現している思いが伝わってきて、収録曲のなかでいちばん歌っている感覚が強くありましたね。テンポ感もオリジナルを崩さず、メロディをしっかり吹いています」
――『舞姫』だけは、セルフ・カヴァーですよね。
 「妹尾さんと初めてリハーサルをさせてもらった時に〈舞姫〉が衝撃的だったんですよ。二人で音を合わせた時に、ワ〜ッと感情がこみあげてきて、これまでの〈舞姫〉にはなかった情感が妹尾さんのピアノによって引き出された感覚があって。妹尾さんもこの曲を好きになってくれたこと、さらにファンからも妹尾さんとのヴァージョンを入れてほしいとの声があったので、それで選曲させていただきました」
――妹尾さんのピアノにインスパイアされるということですよね。アルバムの冒頭「浜辺の歌」のイントロで流れるピアノは、空気をふわりと抱きしめるような優しい演奏です。
 「何かとろりと気持ちがほぐれていく感じがありますよね。今回のアルバムではそれをやりたかった。疲れて帰宅した時にこのアルバムをかけて、フ〜ッとつく溜息とともに緊張感がほぐれて、一日をいい感じで振り返る時間に寄り添う音楽を作りたかったんです。1曲目をどの曲にするか、最後まで悩みましたけれども、〈浜辺の歌〉にして良かったと思います。そして、妹尾さんのピアノは、ここはこういうふうに歌うといいよ、というのが音で伝わってきて、それに導かれるように笛を吹くと、これまでに出したことがない音色が引き出されていくんです」
――妹尾さんがアレンジもご担当されて、なかでも「秋桜」のシャンソンふうの演奏が印象的です。
 「アコーディオンがいいと思うよ、ということで田ノ岡さんをご紹介いただいて、スタジオでは全員で“せーの”と合わせて、一発録りしたんですよね。妹尾さんもライヴ感を大切にされていますし、呼吸が合うからこそ生み出される"音のゆらぎ"というものがあるので、ライヴ方式でのレコーディングは重要だと思います」
佐藤和哉
――レコーディングではほかにエピソードは?
 「〈浜辺の歌〉の時ですが、妹尾さんのピアノが波打ち際の優しい波の音みたいだったんですよね。その音から夕暮れの浜辺をゆったりと歩いている感じが伝わってきて、それに刺激されて、僕の笛もサァ〜、サァ〜っと寄せては引いていく感じの音になっています」
――さて、本編終了後にスペシャル・トラック〈誓いの空〉が収録されていますが、ゆず北川悠仁さんと共作されたこの曲について教えてください。
 「北川さんと〈雨のち晴レルヤ〉を作って、ゆずのツアーに同行させてもらうなかで、また一緒に曲を作ろうというお話があり、ある日、彼のプライベート・スタジオに呼ばれて、聴かせてもらったのが僕のオリジナル楽曲〈文と風鈴〉をよりポップな感じのフレーズに変えて、笛とヴァイオリンの共演で歌いあげるようにアレンジされた曲でした。それがこの〈誓いの空〉で、スペシャル・トラックとして入れることにしました」
――では、最後に来年2月のコンサートについて教えてください。
 「妹尾さんとの共演で、新作中心の内容になる予定ですが、妹尾さんはライヴのその場かぎりの緊張感を大切にされるかたで、演奏もその時々に変化があります。だから、それによって妹尾さんがそう来るなら僕もと、お互いに高めあっていけるコンサートですので、ぜひ生の演奏を聴きに来ていただきたいと思っています」
取材・文/服部のり子(2017年11月)
佐藤和哉
“篠笛奏者 佐藤和哉 New Album「唄の音」発売記念コンサート”
2018年2月10日(土)15:00〜 福岡 アクロス福岡 円形ホール
2018年2月11日(日)15:00〜 東京 池袋 自由学園明日館
2018年2月17日(土)16:00〜 大阪 大阪倶楽部

[チケット]
全席指定席: 前売 4,500円 / 当日 5,000円

[お問い合わせ]
チケット購入に関するお問合せ: キャピタルヴィレッジ(Tel)03-3478-9999
公演に関するお問合せ: ふうち草(Tel)050-3736-8789
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