“人間の弱さを認める強さ”とは、SHINGO★西成『I・N・G』!

SHINGO★西成   2010/11/05掲載
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 ソロだけでなくULTRA NANIWATIC MC'Sでの活動など、関西地区やコアなヒップホップ・ファンの間ではその名前が知られていたが、06年の『Welcome To Ghetto』、そして07年の『SPROUT』でその圧倒的な存在感と熱量の高さを提示し、以降、シーンの重要人物として高い注目を集めているSHINGO★西成。3年ぶりにリリースされるフル・アルバム『I・N・G』(アイ・エヌ・ジー)は、彼の原風景であり、これまでに作品の題材として取り上げられてきた“西成(あいりん地区)”もベースとして確実に存在するが、それよりも彼自身のパーソナリティや、たくましさと優しさがこれまで以上に前面に表われ、全身表現者としてのSHINGO★西成の凄味がさらに露わになった意欲作となって完成した。


──本作はラッパーの般若さんが立ち上げた“昭和レコード”からのリリースとなりましたね。
 SHINGO★西成(以下同) 「現状で満足せず、常に進化して、“新SHINGO★西成”を表現するに当たってはこの形やなと思って。レトロでモノクロな街“西成”出身の、泥臭い昭和な男が、昭和の良い部分をもったまま、今の時代に進行形で作品を作りたい。そういう思いを理解してくれたのが昭和レコードで。もちろん俺を発掘してくれた(これまでの作品をリリースした)LIBRAには最大の感謝をしてます」
──今作はSHINGOさんの内面性が非常に強く表われていますね。
 「夢を諦めざるを得ない状況も世間では多い中、昭和47年製のこんなオッサンでも夢追っかけて、必死に自分を表現しとるんやでって。自分の周りの不器用な奴らの分まで代弁したいし、今回のアルバムで俺と出会った人には“俺ら/私の気持ちを代弁してくれてたんや、叫んでた奴がいたんや”って安心感や希望を与えたい。“あんなオッサンが頑張ってんのやから俺ももう一踏ん張りしよう”って糧になったり、“あんな奴より俺の方がええのん出来るわ!”って反骨の種にしてくれても良い。それは俺の糧にもなりますからね」
──今回のタイトル『I・N・G』に込めた思いは?
 「こんなオッサンでも進行形で進化していけるでって。“言葉”と“音”と“間”が俺のウェポンであるし、普通の歌の5倍以上の言葉を詰め込んでるけど、それでもメッセージと情報と遊び心は薄まらないように、無駄な部分はそぎ落として芯だけを詰めてますね。その中で今回はより“心”というか、何でもお金を出せば手に入る日本でもっと大事なモノがあるはずやってことを、記憶に残る言葉で形にしたいなって」
──今回のリリックは必ず“人”がいますよね。自分の中で完結するんじゃなくて、自分と誰かがいることで起こる世界を表現していると思うんですが。
 「絆とか思いやりとか、自分の周りにおる仲間や家族みたいな、普通にあることがなくなった時の寂しさをこの何年かで味わったんで、その大事さを改めて表現したいなって。“出会いはパワー”って言葉が好きなんですけど、一人じゃ何も出来ないですからね、全てのことが。その上で<缶コーヒー>や<ひとりぼっち>みたいな、男の哀愁を書きたいし、人間の弱さを認める強さを表現したかったんですよね」






──「がんばってれば」のような普遍的なメッセージを提示した理由は?
 「“頑張れ”とか“仲間”とか、そういう言葉はあんまり好きじゃなかったんですね。簡単に使えるし、みんなが使いがちだし、すごく偽善者っぽい言葉に感じていたし。でも、それが大事なんだって気づいた時に、やっぱり使ってみようと。でも、もちろんその言葉にとってふさわしい言い方があるとも思うし、言葉選びは慎重にやってます」
──そういった意識に至った訳は?
 「いろいろあるけど、ひとつは日本で唯一暴動の起こる西成の三角公園でのライヴで、<ゲットーの歌です(こんなんどうDEATH?)feat.ViVi>をやった時に、“公園ホームレスの楽園”って歌詞をラップしたら、ホームレスのオッサンに“ホームレス言うたらあかんやろ!”ってむっちゃ怒られたんですよ。その意味では言葉は刃物にもなるし毛布にもなるって改めて気づかされた」
──言葉がこっちの思惑を超えて伝わってしまう場合もありますよね。
 「その悩みで“SHINGO煮詰まり”になります(笑)。今回の言葉はシンプルすぎて幼稚に聞こえる部分もあるかもしれないけど、それは選びに選んで、自分の中でかみ砕いてのそれなんで不安はないし、“簡単な言葉でええ”っていう勇気がこの3年で自分の中で固まったのかなって。みんなが思ってるヒップホップとは感じがちゃうかもしれないんですけど、そんぐらいの賛否両論があっても想定内。苦情があったら聞きたいし、その意見も俺にとっては糧になる。そしてこの作品を聴いてくれた人は、生活の一部にしてもらいたいですね。仕事行くんが嫌な時に聴いてほしい曲も、恋人ができた時に聴いてほしい曲もあるし。俺自身もそうしてる。この中にいるのが“生SHINGO★西成”なんで、リスナーがシェフだとしたらこのアルバムを素材にどう生活の中で調理してくれてもいいんで。ただ、他の素材に負けないぐらいの個性はありますよ」
──味強いですね。その素材(笑)。
 「おおきに、ホーチミン(笑)」
取材・文/高木晋一郎(2010年9月)
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