自然に感じたまま表現すればいい――荘村清志、デビュー50周年の集大成『シャコンヌ』

荘村清志   2019/05/15掲載
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 日本を代表するギタリストのひとり、荘村清志が1969年にデビュー・リサイタルを行なってから今年で50年を迎える。これまで二度のスペイン留学を経て研鑽を深め、さまざまな音楽家とも共演を重ね、自己の音楽を磨いてきた。そんな荘村が、メモリアル・イヤーに『シャコンヌ』と題するアルバムをリリース。本作にはこれまでの思い出深い作品を凝縮しているが、なかでもオープニングを飾るJ.S.バッハの「シャコンヌ」が印象的で、聴き手の心の奥深く響いてくる。
 デビュー50周年を迎えた彼にこれまでの歩み、音楽の変遷、今後の抱負などを聞くインタビューを行なった。ここにはひとりのギタリストの率直な語りが展開され、人間的な味わい濃厚な話が盛りだくさん。ギターは楽器を包み込むようにして演奏し、指と爪だけで音楽を作り上げていくいわば生身の人間が奏でる音楽。荘村のこのアルバムからも、彼の50年の生き方がリアルに映し出される。
――50年というとすいぶん長く感じますが、ご自身ではどのように感じられますか?
 「あっというま、という感じですね。もちろんこの50年にはいろんなことがありましたが、そう長いスタンスでは考えられないというのが正直なところ。69年に虎ノ門ホールでデビュー・リサイタルを行ないましたが、演奏前に楽屋でものすごく緊張していた、その気持ちがまるで昨日のことのように感じられます。〈シャコンヌ〉はこのときに弾いた思い出の作品なんですよ。当時は技術的には完成度が高い演奏ができたと思いましたが、どこか物足りなかった。表現能力が少ない感じがしていたんです。スペイン留学から戻ってすぐでしたから、まだ仕事は少なく、もがいているような状態になった時期です」
――スペインではナルシソ・イエペスからどのようなレッスンを受けたのでしょうか。
 「基本的なことを学びました。先生はこういう弾き方もある、ここはこう弾いたら、とさまざまな方法を伝授してくださいましたが、もっとも大切なのは表現の幅広さだということです。スペインは古い建物や街並みが残っていますから、そういうところに足を運んで感動を胸に蓄積することも大切でした」
――帰国後の低迷期をどのように乗り越えたのでしょうか。
 「ギターばかり必死で練習するのではなく、映画を観たり読書をしたり友人と会ったりすることで感動を得たり、ほかのことからエネルギーをもらったりしました。そんなとき、74年にNHKの『ギターを弾こう』という番組の講師を務めることになり、番組の最後に“ミニミニコンサート”という5分くらいの演奏をしたのですが、それをみなさんがとても喜んでくださり、ここから仕事が順調に進むようになりました。でも、もう一度勉強したいと思い立ち、78年にイエペス先生の元を訪れたのですが、先生はさらに進化していて、その姿勢から多くを得ました」
荘村清志
©Hiromichi NOZAWA
――帰国後はどのような活動が中心でしたか?
 「いろんな音楽家と共演させていただきました。自分ひとりの能力というのは限界がありますし、私はほかの人との共演から学ぶことも多く、エネルギーをもらうことも大切だと思っています。でも、デビュー25周年のリサイタルはとても消極的な演奏になってしまい、そこからしばらくまたスランプに陥りました。その時期に自己と真摯に向き合い、ギターのフォームや奏法に工夫を凝らし、脱力に取り組みました。5年ほどかかりましたが、この時期があったからいまがあると思っています。若いころはいきがって力を入れて弾いていましたが、いまは力が抜け、ごく自然な形で楽器と対峙し、音楽を心から楽しむことができています」
――「シャコンヌ」はテンポ、リズムも音量もまさにごく自然体の演奏ですよね。
 「そう、無理に表現をしなくてもいい、自然に感じたまま表現すればいいと思うようになりましたから。いまは抑制した奏法で楽器をフワーンと共鳴させ、その美しさを楽しむ、そんな感じです。今回のアルバムでは、バッハの〈リュート組曲 第1番〉は大好きな作品で、ぜひ収録したかった。〈無伴奏チェロ組曲 第6番〉は難しい曲で、音楽家の資質が問われる怖い作品ですが、自分の感じたまま自然に弾くことができています」
――武満徹さんはバリオスの「郷愁のショーロ」がお好きでいつも弾かされたそうですね。
 「いつも飲み会などで、酔いが回ってきたころに“荘村くん、いっちょ、あれやってくれ”と言うんです。いろんなところで弾きましたね。私はこういう飲み会も好きですし、長年の趣味はテニスなんですよ。35歳からやっています。リラックスするのにいいんですが、性格的になんでも一生懸命取り組んでしまうので、テニスも必死にやっています(笑)。50年の間にはいろんな経験をしてきましたが、いまは楽譜どおりにきちんと弾くというよりも、自然な揺らしをしたり、自由に感じたまま弾くという奏法に変わってきました。何より自分自身がギターを弾くことを心から楽しむようになっています。アルバムにはその楽しさが詰まっていると思いますので、それを聴き取ってほしいですね」
取材・文 / 伊熊よし子(2019年4月)
Concert Schedule
■荘村清志 デビュー50周年記念 ギター・リサイタル
2019年5月25日(土)14:00〜 / 26日(日)14:00〜
大阪 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
問: おおの音楽事務所(tel)06-6864-5775

■荘村清志 デビュー50周年記念 ギター・リサイタル
2019年6月2日(日)14:00〜
福岡 あいれふホール
問: フォレストヒル音楽工房(tel)092-715-3828

■荘村清志 デビュー50周年記念 ギター・リサイタル
2019年6月8日(土)14:00〜
岩手 盛岡市民文化ホール 小ホール
問: 盛岡市民文化ホール(tel)019-621-5100

■渾身のオール・バッハ 荘村清志 ギター・リサイタル
2019年6月23日(日)16:00〜
北海道 六花亭札幌本店 ふきのとうホール
問: ふきのとうホール(tel)011-261-6666

■デビュー50周年記念 荘村清志 ギター・リサイタル
荘村清志スペシャル・プロジェクト vol.3

2019年6月27日(木)19:00〜 / 28日(金)14:00〜
東京 築地 浜離宮朝日ホール
問: 朝日ホール・チケットセンター(tel)03-3267- 9990
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