【須永辰緒interview】“レコード番長”登場! Sunaga t experience名義で発表する3年半ぶりの新作を語る

須永辰緒   2009/12/08掲載
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 DJ / 選曲家 / リミキサーとして精力的な活動を続ける須永辰緒。“レコード番長”としてジャズの新たなスタイルを提示し続け、日本のクラブ・シーンを常に牽引している彼がSunaga t experience名義での新作『JAZZ et JAZZ』をリリースする。前作『A letter from allnighters』から3年半ぶり。世界各国の新たなジャズのムーヴメントに刺激を受けた、現在進行形のジャズ・アルバムがここに完成した。LIKKLE MAI、アキコ・グレース、トウヤマタケオ万波麻希mama!milkのほか、ユッカ・エスコラティモ・ラッシー(ファイヴ・コーナーズ・クインテット)、ジェラルド・フリジナら海外勢も参加したその内容に迫ってみよう。


――Sunaga t experience名義のオリジナル作品としては3年半ぶりのアルバムとなりましたね。
須永辰緒(以下、同) 「そうですね。その間に、僕自身のジャズ観が変化して、ジャズの許容範囲が広がったんです。前作に比べると参加メンバーもだいぶ若くなってるんですけど、この3年半でさまざまな若い才能と会う機会も多くて。だから、確かに3年半空いてしまったんですけど、まったくブランクに感じなくて。だって、ボストンなんて4年に1枚しか出さないですからね(笑)」
――その“ジャズ観の変化”について、具体的に説明していただけますか?
 「ジャズが自由なフォーマットだってことは分かってたんですけど、そのなかで“これってジャズって言えんの?”っていう音楽が世界中から出てきていて。日本でいうとSOIL&“PIMP”SESSIONS。生粋のジャズ・ファンからしてみると“これってジャズなの?”って感じだと思うんですけど、自分からしてみると十分ジャズ。EGO-WRAPPIN'にしても、ジャズのイディオムを感じる部分はあちこちにあるんですね。そういう音楽を聴いてきて、刺激を受けてきたところがあるんです」
――今回のアルバムは前作とは肌触りが違いますが、そのように刺激を受けてきたものが反映されているわけですね。
 「そもそも影響されやすいタチなので(笑)。毎日音楽を聴いていると、“いいねー”じゃなくて、“チクショー!”っていう曲があるんですよ。そういうものはやっぱり覚えていて、それに対するカウンターのようなものを作りたくなっちゃう。だから、僕にとっての音源制作は、自分のリスニング歴を記録してるような感覚なんですよ」


――今回は万波麻希さんが作曲やプログラミングなどで大々的に関わっています。
 「そうですね。自分に足りない部分を彼女に担当してもらった感じで。だから、自分が監督だとしたら、彼女は助監。ピアニストの菱山正太くんがもうひとりの助監で、そこに役者がいたり、カメラマンがいたり、照明がいたり。以前までは全部自分でやってたんですけど、今回は骨子まで作ったものを投げて、戻ってきたものをさらに直して……というやり取りをして。すごく楽しかったですね」
――RCサクセションの「甲州街道はもう秋なのさ」がディープなエレクトロニカ調でカヴァーされていますが、この曲に顕著なように、今回はエレクトロニック・ミュージックの空間性が意識されてるように思ったのですが。
 「空間性というか、ループですね。僕はジャズ以外のいろんなものも聴いてるし、これは自分のなかでのテクノなんですよね。ミニマル・クリックの、間延びしないギリギリなところでのループ感。以前は“踊れるジャズ”というものを指向していたわけですけど、今はモダン・ジャズのほうに興味が向いてて、なおかつ僕の好きなテクノなどのクラブ・ミュージックを通過したものとして提示することはできないかと考えて、こういう音作りになっていったんです」
――今作にはLIKKLE MAIさんやユッカ・エスコラ、ティモ・ラッシー(ファイヴ・コーナーズ・クインテット)、ジェラルド・フリジナなどが参加していますが、ここには“アーティスト・ラウンジ”というイメージも含まれているそうですね。
 「そうですね。“Confidential”っていうインター・ルードがあるんですけど、最初はそれをタイトルにしようとも思ってたんですよ。“Confidential”っていうのは、“メンバーだけに共有できる情報”という意味も持ってるんですけど、このCDの場合は制作に参加してくれた仲間、そしてこのCDを手に取ってくれた人たち、そのなかだけで共有できる楽しみを意味していて。今回の参加者同士はみんながみんな顔見知りというわけではないですけど、今回をきっかけに交流が始まるかもしれないし、ファイヴ・コーナーズ・クインテットやジェラルド・フリジナを聴いてくれるリスナーもいるかもしれない。そういう意味での“アーティスト・ラウンジ”という意味も込められています」
――この3年半で音楽を取り巻く環境も大きく変わりましたが、そうした状況についてはどんな思いをお持ちなんでしょうか。
 「確かにいちリスナーとしては便利な世の中になってきたと思いますよ。ただ、僕はDJなので、安易にそこに乗っかるわけにはいかない。自分のDJのスタイルとして“アナログでプレイする”という基本があるので、むしろ意固地になってる部分はありますね。やっぱりパッケージって重要じゃないですか。ジャケット含めてモノとして成立するものだし、曲順も含めてストーリーを作ろうとしているので。とにかく音楽業界のあり方が激変していますからね、みんながパッケージに戻ってきたくなるようなことを死にもの狂いでやらないと、自分の居場所もなくなっちゃうから。今回は限定で7インチ・アナログ付きでリリースするんですよ(※右上写真 / HMV、タワーレコードほか主要CDショップの先着特典)。こんなの、あんまりないですよね(笑)? これは時勢に対する完全なカウンターなんですけど」
取材・文 / 大石 始(2009年11月)
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