【天平 interview】 ほかの誰でもない自分の感性を信じて――異色のコンポーザー・ピアニスト、渾身のセカンド作

天平   2009/11/12掲載
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 豊かな楽想と卓越した技巧。そこに“ほかの誰でもない自分”を主張する強い意志を加えた音楽は、自ずと説得力を持ち、心に響く。コンポーザー・ピアニスト、天平が2008年6月にデビュー作『TEMPEIZM』をリリースするや、たちまち脚光を浴びたのは必然だったといえるだろう。今年11月11日にリリースされた最新作『翼』は、躍動感に満ちた10分超の大作から詩情あふれる穏やかな楽曲に至る大きな振幅の中で、天平の目指す先がクリアに見渡せるアルバムに仕上がった。ここにあるのは、クラシック、ジャズ、ポップといったカテゴライズを軽やかに乗り越える、天平の音楽だ。



――新作を聴いて強く印象に残ったのは、天平さんのピアノ演奏が話したり、叫んだりしているように感じられたことです。
天平(以下、同) 「クラシックだと楽譜があり、作曲者の意図をくみ取って、再現芸術になります。僕の場合は、再現ではなく、そのときの気持ちがそのまま出ますし、同じ曲を演奏しても毎回、違うかもしれない。作曲者にとって、自分の曲は自分の子どもだと思うんです。曲が生まれたときや育っていく過程をすべて知っているのが作曲者であり、だからこそ表現できるものがあると思っています」
――快活で美しいメロディが連なる導入部から、ダイナミックでスケールの大きな中間部、グランドピアノの音域の広さを生かしたエンディングへと展開するドラマティックな「処女航海」には、天平さんの個性が集約されています。
 「もともとの構成は録音したものとは違っていたんです。最初は、右手で速いパッセージを弾きながら真ん中あたりの音域でメロディを弾く(演奏時間)2分過ぎからの感じで、全編通していました。今回、新たな部分を加えたことにより、表現したかった冒険とか航海のイメージを感じ取ってもらえるものになったと思います」
――収録曲に対するご自身のコメントによると、「ホライゾン」はハドソン・リヴァーの美しい夕焼けを眺めながらドライブしているイメージであり、また、「雪のリズム」は音楽の師とニューヨークの雪を見ながら会話したことが刺激となって書かれたそうですね。心を動かされたことを音楽で表現することが多いのですか?
 「それが自分のコアだと思います。さまざまなものから曲は生まれてきますが、いちばんの源となっているのは、思い出や心に残る体験です。いい思い出であればあるほど、時間が経ったときにせつなくなるんですよね。なぜかというと、時が経てば経つほど思い出との距離ができてしまうし、もう戻れないという感じにもなってしまう。せつなさが大きくなっていくことによって、曲が生まれるような気がします」
――クラシックにもジャズにも、そのほかの音楽にもカテゴライズされない現在のスタイルは、どのようにして形づくられたのでしょう?
 「つくろうと思ってつくったものではないんですよ。生きてきて、自然にこうなっただけなんですね。クラシック、ジャズ、プログレ、フュージョン、サウンドトラック、ロック、ポップス……。いろんな音楽を聴いてきて、自然にそれを融合して、こういうものができてきました。僕の音楽はいろんなジャンルの音楽の雑種だし、僕がやっていることはすごい“生もの”だと思っています。そのときの気分とか感性に従って演奏したいんですよ。自分の感性を信じているし、それこそが僕であるかなと思っています。人と同じことをやることに価値観を感じません。自分にしかできないものを、つねに考えています」
――タッチの美しさ、音の立ち上がりの速さによって、メロディの美しさが際立つ点も特徴的です。
 「日々の練習では、ほとんど自分の曲を弾いています。メロディに関していえば、メロディの善し悪しって微妙なところだと思うんですよ。いまの日本の音楽界でも、メロディが耳にすっと入る音楽は多いですけれど、10年、20年、聴き続けられるかといったらそうでもなさそうで、耳にすっと入るメロディと、いいメロディは違うものだと思います。僕は、難しいですけど、全体を総合してメロディが生きている感じの、何十年先までも残っていけるような曲をつくりたいと思っています」
――アルバムと同じ日に初めてのエッセイ『ピアニストになると思わなかった。』が発行されます。
 「ガテン系ピアニストとか、ヤンキー系、肉体系とか、そういう形でメディアに取り上げていただき、多くの人に知っていただいたのはうれしいんですけど、複雑な気持ちもあったんです。誤解を招くこともありましたから。僕自身はやりたい音楽を表現していくことに力を込めているわけです。僕の内面というのはこうなんだというのを知ってほしくて、本を出させていただきました」
――現在はコンポーザー・ピアニストとして自作曲を中心に演奏していますが、今後、クラシック曲でアルバムをつくる考えはありますか?
 「可能性がないとはいえないですね。ショパン生誕200年ということで、来年2月、EMIからコンピレーション・アルバムが出るのですが、僕は〈革命のエチュード〉を自分流にアレンジして参加する予定です」
取材・文/浅羽 晃(2009年10月)



【天平 初エッセイ】
『ピアニストになると思わなかった。』(写真)
(ポプラ社)

【天平 コンサート・スケジュール】
●11月14日(土)14:00 大阪・ザ・フェニックスホール
問:キョードーチケットセンター[Tel]06-7732-8888

●11月20日(金)19:00 横浜・神奈川県民ホール 小ホール
問:KMミュージック[Tel]045-201-9999
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