宮藤官九郎も絶賛! 結成20周年を迎えた関西ソウル・シーンのゴッド・ファーザー・バンド、ザ・たこさん

ザ・たこさん   2013/09/06掲載
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 今年結成20周年を迎えた、関西のゴッドファーザー的存在のソウル・バンド、ザ・たこさん。暑苦しいほどにソウルフルな演奏と、中年のブルースと中二のリビドーが一緒くたになった歌詞、そしてファンキーでファンシーな“悲しき怪人”安藤八主博のパフォーマンスによって繰り広げられるステージは、一度見れば誰をも虜にする、もしくはトラウマになってしまいそうなほどに強烈な印象を焼き付ける。20周年記念アルバム『タコスペース』を完成させたザ・たこさんから、ヴォーカルの安藤八主博と、ギターの山口しんじの、グリマー・ツインズな最強タッグに話を訊いた。




――今年なんと20周年を迎えられたということで、20年の歴史の中には苦労された時期もあったかと思うんですが。
山口しんじ(以下、山口) 「いやいや、基本あんまりしんどくはないですよ。僕ら音楽で食うてるわけやないし、僕らふたりとも月〜金で倉庫で働いてますから。好きやから続いてて、20年経っても解散しなかったっていうだけでね」
安藤八主博(以下、安藤) 「まあ20年経っても、ケンカはしますね」
山口 「ついこないだも結構激しいのをしましたね。もう、何度辞めようかと思ったか。彼もそういう気分になったことがあると思いますけど」
――ザ・たこさんというバンドが生まれたきっかけは?
安藤 「もともと僕が芸人をやりながら、ラーメン屋でアルバイトしてたんです(註:安藤はバンドを結成する前は、吉本興業所属の芸人だった。バッファロー吾郎、千原兄弟、FUJIWARA、なだぎ武らと同期)。だけど思うところあって芸人を辞めた時期に、そのラーメン屋のスタッフの若い子だけでバンドを組む話が出ていて。メンバーが一人足りないって聞いて“なら、俺が入ろうか?”ってことで入ったんです」
山口 「だから最初は、こいつからバンドを組もうって声をかけたわけじゃないんですよね。僕は、そのラーメン屋が入ってる雑居ビルの5階で働いてたんですよ。店の前通りかかると、ブルース・ブラザーズとか憂歌団かかってたりようしてたな」
安藤 「好きな音楽をカセットテープで勝手にかけとって。そこから山口ともちょこちょこ話するようになって。“これなんなん? エエのかけてるやん”って(笑)。ヴァン・ヘイレン『炎の導火線』とかな。僕が今43歳で、山口が44歳なんですけど、中学生ぐらいがちょうどMTV全盛の時代で」
山口 「小林克也で育ったようなもんですからね。だから、僕らのバンドは80年代にめちゃくちゃ影響受けてますよ。ライヴでやってる〈ザ・たこさんのテーマ〉っていう曲があるんですけど、実はそれ〈ザ・ナンバーワン・バンドのテーマ〉丸パクリですからね」
――ああ! たしかにそうですね(笑)。
山口 「ザ・ナンバーワン・バンドの『もも』っていうアルバムも安藤に教えてもらいましたからね。それに入ってる〈ケンタッキーの東〉っていう曲も、僕らカヴァーしてて。今のお客さんはザ・たこさんの曲だと思ってるかもしれないけど、もともとは小林克也さんの曲ですからね」
安藤 「で、ラーメン屋でバンド組んで半年ぐらい経った頃、ギターがひとり抜けたんで、ちょうど山口さんが居るわ、と」
山口 「ラーメン屋が閉店したあと、店のカウンターに並んで座って、ベースのヤツは小さいアンプ持って来て、ドラムのヤツは箸2本もって練習してるんですよ。仕事帰りにその光景を見て、なんかオモロそうやなって(笑)」
――ザ・たこさんは最初から“ザ・たこさん”っていう名前だったんですか?
安藤 「最初から“ザ・たこさん”でしたね」
山口 「ラーメン屋で結成するから“ラーメンマン”とか“空手チョップ”とかいろいろ候補はあったよな」
安藤 「“ザ・ビガーパンツ”っていうのもあったな」
――ザ・ビガーパンツ(笑)。その頃からユーモアのある歌詞にソウルやファンクを掛け合わせるっていう方向性だったんですか?
安藤 「もともとはブルースをやろうって思って組んだんです。〈Sweet Home Chicago〉のカヴァーとかやってたんですけど、いきなりブルースなんてできないですからね。前のギターのヤツが結構ロックな男だったんで、ガレージ・ロックみたいになってしまって。そのギターが辞めて山口が入ってから、今みたいなカタチになりましたね」
山口 「僕はやっぱりファンキー・ソウルが好きやったんで、ブルース・ブラザーズみたいなのをやってほしいなって思って。当時ちょうど再結成してたサウス・トゥ・サウスとか、あとは誰がカバやねんロックンロールショーソー・バッド・レビューみたいな関西の70年代の人たちが面白いことやってたのが印象に残ってて。こんなん今やってるヤツ居れへんから、絶対にこんなんやりたいなって思って。だから声かけてもらったからには、ファンキー・ソウルな方向性で行こうと」
――そこからソウル・レビュー形式というか、ひとつのステージの中でショーが展開されるようなカタチができあがっていった?
安藤 「やっていくうち、徐々にそうなりましたね」


――安藤さんがジャンプ・スーツみたいな衣装を着るようになったのはいつ頃からなんですか?
安藤 「2000年ぐらいからですかね。その前は、大阪芸術大学のジャージがあって、緑色で結構ピチピチなんですよ。それもらって着てみたら、結構ジャンプ・スーツっぽくて。覆面を被り出したのも、その時からですね」
山口 「もともと安藤はプロレス好きやし、プロレスのエンタテインメント性がジェイムス・ブラウンとかソウル・レビューを観てたら共通する感覚があると思うし、そこに着目したんでしょうね」
――僕が初めてザ・たこさんのライヴを拝見したのは、バンバンバザールが主催している〈勝手にウッドストック〉っていう、相模湖にあるキャンプ場で行なわれる野外フェスだったんです。ザ・たこさんの出番になったら、崖の上にジャンプ・スーツに覆面姿の安藤さんが崖の上に立っていて、ヒーローみたいにポーズ決めてるんです。バンドがテーマ曲を延々と演奏を続ける中、ビール腹をたぷたぷと揺らしながら安藤さんが崖の上から降りてきて、ステージに到着する頃には、息が上がってるわ、ジャンプ・スーツも汗染みできてるわで。その姿にもう哀愁というかブルースを感じてしまったんです(笑)。
山口 「安藤のキャッチフレーズが“悲しき怪人”ですからね。僕らが子供の頃に観てた仮面ライダーの要素も入りつつ」
安藤 「崖の上から登場するのも、結構大変なんですよ。あの衣装のまま移動すれば楽なんでしょうけど、それではバレてしまうし。衣装の上からTシャツ着てジーパン穿いて移動して、崖の上に登ってからジャンプ・スーツ姿で草むらに隠れて待ってるっていうね」
山口 「〈勝手にウッドストック〉もそうでしたけど、野外の会場でライヴする時は、到着したらどこから出て来ようかって、まず場内の下見からはじまりますね(笑)」
安藤 「ああいうことをどんどんやっていくべきやと思いますけどね。以前、木曽鼓動であったフェスに出た時は、スタッフ用の原付のバイクがあったから、それに乗って出ていって」
山口 「昔、マクガイア・ブラザーズって巨漢のプロレスラーがいて、それをやりたい!ってことでね。他のフェスでも、安藤は会場に居った犬を連れてステージまで上がって、退場はメンバーはみんなで軽トラの荷台に乗せてもらったり」
安藤 「あの犬は、ブリティッシュ・ブルドッグス(註:ダイナマイト・キッドとデイビー・ボーイスミスによるタッグ・チーム。ブルドッグを連れて入場していた)みたいでおもろかったなあ」
――しかし、最初は「Sweet Home Chicago」をカヴァーするようなシンプルなソウル・バンドが、ステージを踏むごとにいろんな要素が付け加えられていって、いつの間にかラーメン二郎のマシマシみたいなクドさに行き着いているのが面白いんですよね。
山口 「だけどそこで、やっぱりバンドのメンバーは4人しか居てないっていうのが重要になってくる。ソウル・バンドって言うたら、管楽器や鍵盤やコーラスも入ってるのが普通だと思うんですけど、それを4ピースのストロング・スタイルみたいな感じでやるんねやから、そこはいろいろ工夫せんとあかんと思いますよね」
――シンプルな編成で、最大限にソウルフルなことをやるというか。
安藤 「その醍醐味を追究したいというのはありますね。実際、管が入ったほうが盛り上がりはするんでしょうけど」
山口 「だけど自分らはライヴ・バンドなんで、ステージに上がってもCDと同じようなクオリティで演奏したいですからね」
――ホーン・セクションや鍵盤が入ることで華やかさや彩りみたいなところを、もちろんバンドの演奏自体でも最大限に表現するようにしっかりと考えられていると思うし、加えて安藤さんのパフォーマンスがその華やかさの部分を担っているような気もして。だから、4人でやっているからといっても迫力や楽しさに遜色はないんですよね。
山口 「それは嬉しいな。たしかに安藤はことあるごとに4人でやりたいって言うてますね」
――4ピースのストロング・スタイルを貫いてきたザ・たこさんが、今回20周年記念盤『タコスペース』を完成させたわけですが、その冒頭がいきなり『バラエティー生活笑百科』笑福亭仁鶴師匠のモノマネではじまるという(笑)。
安藤 「わかっていただけましたか。でも、タイトルは〈KAMINUMA〉ですけどね」
――この脱力感ではじまるのが最高ですね。
安藤 「まあ、1曲目って大事ですから。絶対に今回のアルバムは、この曲が最初がええって譲りませんでした」
――「KAMINUMA」や「突撃!となりの女風呂」もそうですが、グルーヴに乗ったひとつの言葉が見つかって、そこから曲として広げていく作り方が多いんですか?
山口 「〈KAMINUMA〉は完全にそういう作り方ですね」
安藤 「まぁ、これは単純に、酔うたらよう仁鶴師匠のモノマネするから、それで曲作ろうと思っただけですけどね。前のアルバムには〈This is Delicious!!〉って曲があるんですけど、それは鶴瓶さんのマネで“これうまいわ〜”って言ってるだけっていう」
――それでいてまた、安藤さんのモノマネが中途半端に似てるところがイラッとくる(笑)。しかし、アルバムにモノマネのネタが2つも入ってるバンドっていうも珍しい(笑)。
安藤 「〈BLUE MOUNTAIN BLUES〉のジャイアント馬場のモノマネは、マスタリングの時に少し声を籠らせてもらってますからね(笑)」
山口 「毎回アルバムにはそういう小ネタ的なものも入ってるんだけど、そういうのもやっぱりスネークマンショーのようなノリが好きだからなんですよね。アホなこと言っても、何遍も言うてるうちにその曲の中でマジになってきますからね。しかも笑わんと本気で言ってますから」
――馬鹿馬鹿しいフレーズが、もうわかったよ! ってぐらいに延々と繰り返される。そのしつこさこそファンクって感じもしますしね。で、聴いてるほうも次第に快感に変わって、カッコいい言葉に聴こえてくるという。
安藤 「今回はとくにフレーズ勝負的な曲が多いかもしれない。ジェイムス・ブラウンの〈Sex Machine〉も、言うたら同じことしか言ってないですからね。王様は“また勃った/しぼんだ”って直訳してましたけど、それを聴いてこれでいいんだって気付かされたところはありますね」
山口 「ミーターズの〈Stretch Your Rubber Band〉の“Keep on stretchin', your rubber band”っていう歌詞かて、よう意味わかりませんからね。“輪ゴム伸ばせ”って、そんなんばっかですからね」
――たしかに「Look-ka Py Py」とか、タイトルからして何の意味があるのかわからないですよね。全然知識がない頃、この曲のタイトルを初めて見た時には、語感だけで“おっぱい見て見て”って意味かと思いましたもん(笑)。
山口 「〈Look-ka Py Py〉は、バンドで車に乗っててパンクした時に作ったらしいですね。“ワカチコ”って誰か一人が言い出したら、そこに他のヤツらが“ウッ!”とか“アッ!”とか乗っかってきて曲が出来たっていう。昔、ザ・たこさんに入った直後ぐらいの頃やったんやけど、関テレでニューオーリンズ・ファンクの特集番組やってたの観たことあったんです。そのインタビューでミーターズのメンバーが言ってたのは“俺らはバンド名にミーターズ(METERS)と付けた。それは、俺らでファンクを測れ!という意味だ”って言ってて。それに“曲は生きていなければいけない。だから音を抜け。呼吸をさせてやれ”って言ってて、めっちゃカッコええなって思って」
――音を詰め込みすぎずに、隙間を作れっていうことなんですね。
安藤 「だからね、今回のアルバムの『タコスペース』の“スペース”は、そこにもかかってるんです」
――またテキトーなことを(笑)。
安藤 「いや、ホンマですよ! 『タコスペース』には3つの意味があって。僕らの世界=宇宙っていう意味。あと、音の空間っていう意味。そして僕らザ・たこさんのペースっていう意味。アルバムも5枚しか出してないし、足取りもゆっくりなんですけど、僕らのペースでやってきましたっていうね」
山口 「まあ、僕らの宇宙って言っても、大四畳半惑星的なミニマムな感じですけどね」
――たしかに、タコ部屋感がありますよね。
山口 「おっ、うまい! それ4つめの意味にします(笑)」
――(笑)。本作に収録されている「突撃!となりの女風呂(On A Blow)」は先行で12インチシングルとしてリリースされましたが、そのレコ発ライヴには、脚本家の宮藤官九郎さんもいらしていたそうですね。クドカンさんと出会ったきっかけは?
安藤 「出会ったきっかけは、2006年ですかね。『ナイスミドル』ってアルバムが出た頃、吉祥寺でライブがあったんです。で、打ち上げで朝まで飲んでて、じゃあ帰ろかと駅に向かって。まぁ、その日もケンカしてたんですけどね。山口もヒドイ顔で泣きながら歩いててな」
山口 「ホンマか? それ」
安藤 「ウォンウォン泣いて“俺は、バンドが好きや〜!”って。みんな好きやっちゅうねん。自分ひとりだけでバンドが好きみたいなこと言いやがって。ちょうど東京の友達もおったんで、なだめてくれたりしながら吉祥寺の駅に向かってたら、東京の友達が“あっ、クドカンや!”って宮藤先生を見つけてくれて。アルバム出たばかりやったんで、どうしても渡したいって思って“宮藤先生〜!”って追いかけてCDを渡して、それからですね」
――それでクドカンさんが気に入ってくれた?
安藤 「でも、僕らがCD渡してから1年間ぐらい聴いてなかったらしいんです。なんか印象が悪かったみたいで」
山口 「初めて会うた時、お互いベロベロでしたからね。タチの悪い酔っぱらいに絡まれたぐらいの印象だったかもしれへんけど」
安藤 「僕もなんか、その時持ってた、何度洗ってもニオイの取れないKISSジーン・シモンズのTシャツをCDと一緒に渡してたり、帰り際にプロレスの技かけたりしてて、そら印象悪いわっていう。でも、こっちは“宮藤官九郎にCD渡したぞー!”って盛り上がって。で、それから1年ぐらい経って、ラジオで僕らの曲をかけてくれたんです。それはビックリしましたね。それからライヴも観にきてくださるようになって。ちゃんと飲みに行くようになったのは、つい最近なんですけど」
山口 「せっかく一緒に飲んでくれはってるのに、こいつがすぐに寝はじめて。それでまたケンカになったんです」
安藤 「『中学生円山』はオモロかった〜! ってしつこく言ってたらしいな」
山口 「“シコシコに関しては、俺のほうがよう知ってる”とか、しょうもないことを言うてて」
――影響を受けたものとか、共通する部分があるんでしょうね。
山口 「そうですね。ほとんど年齢も一緒ですからね」
――「突撃!となりの女風呂(On A Blow)」が完成した時は、手応えがありましたか?
安藤 「スタジオでやってた時は、これはイケるって思いましたね」
山口 「スタジオでセッションしてた時に、安藤が“最近、女風呂に興味がある”みたいなこと言うてて」
安藤 「そないなこと言うてないわ! この年になって女風呂に興味持ちはじめるってどういうことやねん。“女風呂”=“On A Blow”って感じで歌っていったら、だんだんカタチになっていって」
山口 「ジェイムス・ブラウンの〈Get Up, Get Into It, Get Involved〉の“Get Involved! Get Involved!”みたいな感じで、“On A Blow! On A Blow!”って言葉が繰り返される。でも、出てきたのが、風呂屋の息子に番台代われっていう歌詞で(笑)」
安藤 「“お前、野球やってたやろ。早よ外で素振りしてこい。俺が代わりに番台見といたるから”っていうね」
――どうしても中二のスピリッツが入ってきちゃう(笑)。
安藤 「これはもう付いて回るんでしょうね。いまだにあの頃に経験したことや観たことを覚えてるもんで」
山口 「測るものさしが、中学生とか高校生の頃に経験したことが基準になってるから、これはもうどうしようもない。普通ファンクやソウルの歌詞ってもっとセクシーやと思うんですけど、僕らの歌詞はシコシコばっかりですから。自己完結ばっかり(笑)」
安藤 「自分なりにセクシーをキーワードに書こうと思ったんですけど、結局こうなってしまったと」
――たしかにMakin' Love感はあんまりないですよね(笑)。
安藤 「全部ひとりですね」
山口 「プラモみたいなもんですよ」
安藤 「俺と女、じゃなくて、俺と女風呂。もっと言えば、俺と女風呂……の湯水」
――想像力が試されますね。
安藤 「女風呂のお湯盗ってきたぞ! って手に入れたら、それなりにシコれますもんね。で、最後飲みよる」
――(爆笑)
山口 「アホや。まあ、こんなバンドですよ(笑)」
――童貞の頃に、まだ触れたこともない女体にありとあらゆる妄想を巡らせたように、手の届かない存在だからこそ面白いっていうか、全部知っちゃったら面白くなくなっちゃうようなものってありますよね。そういうのって、プロレスにまつわるドラマやアングルを楽しむ感覚や、ソウル・シンガーやブルースマンの伝説に思いを馳せながら音楽を楽しむ感覚と共通するものがあるような気がします。
安藤 「その想像力が、また新たな夢につながったりね。男には夢がある!」
――明らかに淫夢ですね(笑)。
山口 「だってこいつ、ライヴ前になると、いまだにシコってますからね」
――ええーーーっ!? どういうことですか?
山口 「たぶん自分の中でジンクス作ってるんでしょうけど、なんか地方でのライヴ前とか“個室無いわ〜”ってソワソワしよるんです(笑)」
安藤 「個室って“個室ビデオ鑑賞店”のことですけどね」
――ライヴ前にヌイておくっていうケースは初めて聞きました。よく、ボクサーとかは試合前は禁欲的に我慢する、みたいな話は聞いたことありますけど。
安藤 「なんかね、ライヴ前にヌイておくと、いい具合に力が抜けるんですよ」
山口 「そうしないとMOJOがものすごく溜まるらしいんですね」
――MOJOって(爆笑)。まさにMOJO HAND!
安藤 「ようけ溜まると悪魔になってまうからな」
編集担当 「ダニー・ホッジ(註:ルー・テーズ、カール・ゴッチと並ぶアメリカの3大シューター)は試合前にヌイてたらしいですね」
安藤 「ホンマですか! ダニー・ホッジいうたら名レスラーやないですか! 共通点あって、なんか嬉しいな(笑)」
――でも、今の話を聞くと「(Make It)FUNKY TENGA」って曲が生まれたりするのも理解できますね。TENGAも完全に孤独ですもんね。
山口 「ブルースですね」
――リア充の人には歌えない、独り身のブルースというか(笑)。
安藤 「でも、TENGA使うてる人のほうが、意外とリア充やないかなとも思うんですけどね」
――まあ、たしかに己の快感を充足させるために最良の手段を用いてるわけだし、そこにお金をかけられる贅沢さもありますね。
山口 「この人あれですよ。酔うてTENGA使うた時、あまりにも素晴らしくてねぶりはったらしいんです」
――え? ねぶる?
山口 「あ、舐めたんです」
――ぎゃははは(笑)。
安藤 「まあ他の器具はよう知らんのですけど、個室ビデオに行くとカウンターにTENGAが置いてあるんですよ。いうたら僕が敬愛するカール・ゴッチは器具を使わないトレーニングをしていましたからね。自然にある岩とか持ち上げてウェイトしたり。だから“そんなTENGAなんてもんは使うたらアカン、俺はゴッチ式トレーニングをするんや!”って心に決めてたんですけど、個室の店員にあんまりにもしつこくすすめられたもんでね。“ほぉ、これが化学式トレーニングか!”って。あまりにも素晴らしくてねぇ……それで、ついついねぶってしまったんです」
――で、あまりに素晴らしすぎるので、ライヴでもTENGAを無料配布したと。
安藤 「12インチのレコ発ライヴの時は、株式会社TENGAさんに協賛ついていただいたんですけど、こないだのフジロックでは自腹で買うたの投げましたね」
――フジロックの時の盛り上がりはどうでしたか?
山口 「4年前にも出たんですけど、その時よりもたくさん集まってもらえて、エラい盛り上がりましたね」
安藤 「ただ、今までに4回出場して、4回とも苗場食堂っていうのは、たぶん僕らだけやと思います(笑)。まあ、それで勝手に“KING OF 苗場食堂”って名乗らせてもらってますけど」
山口 「1回目に出た時に、安藤は“俺は今後グリーンステージのオファーがあっても、絶対に出ぇへん!”て言うてましたからね。そんなん言うなよ〜って思いましたけど」
安藤 「言うてへんよ!」
――また面白いやりとりがはじまった(笑)。
山口 「今日も夜行バスで来たんですけど、こいつがめっちゃひっついてくるんですよ」
安藤 「ちょうど一番後ろの5人がけの席で。窓際が知らん人、その隣が僕、真ん中が山口、その隣が知らん人が二人っていう座りで。一番最悪な席だったんですよね」
山口 「窓際のおっさんが幅とるから、お前のとこにしゃあなしにいかなアカンねん、って。もう腹立ってきて。まあ、これ仲直りしてなかったから、もっと腹立ってたなって」
安藤 「先々週もこいつは“もう俺はたこさん辞める”って言うてたんですよ」
山口 「いや、それはお前が“辞めたらエエねん”って言うたんやで」
安藤 「いやいや、俺は“辞めんなや”言うたで」
山口 「その言い方も、“ああ、わかったわかった。辞めんな辞めんな”みたいな言い方やったやんけ」
マネージャー女史 「こんな感じのケンカを数週間に一回ぐらいやってるんですよ(苦笑)」
――それで20年も続いてるって、すごいっすね(笑)。
山口 「まぁ〜、こいつにどんだけ腹立つか」
安藤 「それもね、お互いにこれを言うたら“キキッ!”ってなることって絶対わかってるじゃないですか。それをこいつは言うてくるんですよ。俺はわかってるから言わないけど、言われたら“キキッ!”ってなるから、こっちも“キキッ!”とさしたろ思うんです」
山口 「こいつはね、言わなわからんヤツなんですよ」
安藤 「わざわざそんなもんねぇ。言い方っていうもんもありますやん」
――(笑)なんていうか、バンドのメンバー同士っていうよりも、『唄子・啓助のおもろい夫婦』に出てくる熟年夫婦のやりとりを観てるような気分になってきました。
安藤 「まあ、夫婦みたいっていうのは、たまに言われますけどね。だからライヴの日でもケンカしてる時は、会場に入ってから本番までひと言も喋らんといて。結局、いいライヴになったら、それ見てた店の人が、“キミら、夫婦か?”って言うて」
――すごくいい話じゃないですか?
山口 「いや、そんな時でもね、“よかったな、ええライヴやったな”って俺は言うんですけど、こいつは一切ダメなんですよ。やっぱり兄弟で弟のほうやったから、そういう気遣いが出来ない」
――出た! 意味不明な理論(笑)。
安藤 「毎回、言うんですよ。“三男坊の末っ子は一番甘い”っていう、ようわからん屁理屈を」
――夫婦喧嘩はタコも食わない。ってことで、僕らはこのへんで失礼いたしま〜す!
取材・文/宮内健(2013年8月)
【ザ・たこさん、結成20周年を記念する野外フェス!】
〈ザ・たこさんの無限大記念日〉


日程:9月28日(土)
会場:三田アスレチック(兵庫県三田市波豆川281)
時間:11:00開場 / 12:00開演
料金:前売 4,500円 ※小学生以下は無料
チケット:イープラス


出演:ザ・たこさん / オーサカ=モノレール / ギターパンダ / チャラン・ポ・ランタン / マキタスポーツ / USE / モアリズム / BLITZ AND SQUASH BRASS BAND / 田中 星児(オープニングセレモニー)
「ザ・たこさんの無限大記念日」特設ページ
www.mugendai-kinenbi.com

【ライヴ情報】
〈ザ・たこさん、結成20周年&ニューアルバム『タコスペース』発売記念ライブ!〉

日程:10月2日(水)
会場:渋谷・クラブクアトロ
時間:18:30開場 / 19:30開演
料金:前売3000円 / 当日3500円(共にドリンク代別途)
チケット:
チケットぴあ 0570-02-9999 (Pコード:209-275)
ローソンチケット 0570-084-003(Lコード:71598)
イープラス


出演:ザ・たこさん
ゲスト:オーサカ=モノレール、渡辺祐 ほか

お問い合わせ:渋谷クラブクアトロ TEL 03-3477-8750
ザ・たこさん オフィシャル・サイト
www.the-takosan.com
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