【サラ・ガザレク&トリオセンス interview】清冽なヴォーカルと新鋭ピアノ・トリオがコラボ―国境を越え生み出された繊細なジャズ世界

トリオセンス   2010/10/05掲載
はてなブックマークに追加
【サラ・ガザレク&トリオセンス interview】清冽なヴォーカルと新鋭ピアノ・トリオがコラボ―国境を越え生み出された繊細なジャズ世界
 ドイツの新鋭ピアノ・トリオ、トリオセンスとアメリカのヴォーカリスト、サラ・ガザレクのコラボ作品『トリオセンス・ミーツ・サラ・ガザレク〜ホエア・タイム・スタンズ・スティル』は、単に国境を越えた新鋭たちの共演というだけではなく、その出会いからアルバム完成まで、現代のミュージシャンならではの新しい共同作業のスタイルがある。一発勝負のジャズ録音だが、その場に至るまでに繰り返される綿密な打ち合わせ。繊細な現代ジャズの世界が見えてくる。



――そもそもこの出会いのきっかけはなんだったんですか。
 ベルンハルト・シューラー(p/トリオセンス) 「普段、ぼくはピアニストの活動がメインで、それでトリオセンスが生まれたんだけれど、このグループが生まれる前の学生時代からポツポツとヴォーカル・ソングの作曲もやっていたんだ。で、これをどうにかしたいと思ってヴォーカリストを探していたんだけれど、なかなか見つからない。で、友人がこの人はどうかとCDを聴かさせてもらったのが、サラの『ユアーズ』というアルバム。ピンときて、さっそくサラにメールを出したんだ」
 サラ・ガザレク 「そうそう、突然メールが来たのよね。で、何もわからないから、とりあえずどういう曲か、デモでも送ってって返事を出したの」
 シューラー 「で、MP3のファイルを送ったんだけれど、その返事がなかなかこない」
――無視されたんですね(笑)
『ユアーズ』(2005年)
 サラ 「いやいや、忘れていただけなの。督促のメールが来て、それからいろいろなやりとりが始まった。歌詞がどうかとか、どういう風に歌ったらいいかとか、Skypeを使って実際に歌って聴かせたりして」
――歌詞はサラさんも書いてますよね。
 サラ 「歌手にとって歌詞は大切なの。歌いながらリスナーと何かを共有したいと思うから、歌詞とメロディが一体でなければスムースにいかない。シューラーはドイツ人だから英語で書いた詞でも、いくつかの単語を修正したし、詞の内容が私にはあまりピンとこないものは、書き換えてもいい? って聞いて、まったく別のものにしたのもある。こういう作業ができてとてもよかった」
 シューラー 「それでちょっと白熱したこともあったけどね。でも、これらの曲はぼくのこれまでの人生で出会った経験が土台にあるけど、そこにサラの経験が重なって別の視点で見れたことは悪くはない」
 サラ 「たとえば、いつか遠い未来にまたあなたと出会えるというより、人生には忘れられないことがあるというほうがいいでしょう?」






――男性はロマンティストで、女性はリアリストということでしょうか。
 シューラー 「まさにその通り!(笑)」
 サラ 「でも、このプロジェクトがスムースにいったのは、互いに同じ世代ということがあったと思う。人生に対する姿勢、音楽に対する姿勢もそんなに遠いものじゃない」
 シューラー「ぼくがサラの歌を聴いて最初にピンときたのもそういうことだと思うね」
 サラ 「私にとって今回のプロジェクトが勉強になったのは、初めてリーダーが自分じゃないので、私に柔軟性を求められたこと。そして、アルバムは丁寧、念入りに作るということをあらためて思った。実は、私がジャズを歌い始めた頃は、即興的なパフォーマンスが主だったけど、いざ自分のアルバムを作るときになって、アレンジもきちっと固めたほうがいいとか、録音もしっかりきれいに録ったほうがいいと助言され、そのためにけっこうお金もかかったけど、その助言は正しかったと思う。ライヴとアルバムは違うんです。今回も自分のアルバムを聴いてもらって、こういう風に録音してとエンジニアに要求したんです」
 シューラー 「そのエンジニアが驚いていたよ。なにしろサラのピッチが正確だからね。ヴォーカルの録音と言うと、途中ピッチが微妙に狂って、取り直しとなるけれど、サラにはそんなことが一度もなく、ほとんどみんな1テイクで収まったよ」
 サラ 「ピッチの正確さは生来のものと思う。2歳のときミュージカル『アニー』の〈トゥモロー〉をヴォーカリストのおばさんの前で歌ったら、“この子は天才”と言われたと母から聞かされたけど、ピッチが正しいというのは長い間当たり前だと思っていたの。それよりも歌の難しさは、リスナーと分かち合えるものをどうにか見つけ、生み出すということでしょうね」
取材・文/青木和富(2010年9月)
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 話題の公演“100チェロ”を東京で行なうジョヴァンニ・ソッリマが代表作を語る[インタビュー] 山中千尋、ブルーノートとペトルチアーニへの思いを胸に、新作でジャズのキラキラした魅力を伝える
[インタビュー] ハロプロ スッペシャ〜ル特別版 卒業直前! 宮崎由加(Juice=Juice)ロング・インタビュー[インタビュー] “シティ”から“タウン”へ “けもの”のユニークな創作のひみつ
[インタビュー] 音楽史上初めて登場した“ミニマル・ネイティヴ”のヴァイオリニスト、マリ・サムエルセンのDG専属契約第1弾ソロ・アルバム『マリ』[インタビュー] “令和最初の傑作”を読み解く 清 竜人 超ロング・インタビュー
[インタビュー] 島田奈美、最新ベストアルバム発売 島田奈央子、島田奈美を語る[インタビュー] “最強打線”をそろえた初のアルバム。DJ FUKUの『スタメン』
[特集] 「がんばれ!隠れ汗 プロジェクト」とは?『ビオレ さらさらパウダーシート』アニメCM公開中[インタビュー] ロイ-RöE-が描く『ストロベリーナイト・サーガ』の世界
[インタビュー] “まるで13本立てのカルト映画祭”ROLLYが新曲入りセルフカヴァー・アルバム『ROLLY[インタビュー] クールス対談 ジェームス藤木×近田春夫
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
新譜情報
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015