アップアップガールズ(仮)   2013/01/25掲載
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アップアップガールズ(仮)特集
第1弾 吉田豪が語るアップアップガールズ(仮)の魅力
「“戦いは終わっていない!”と今になっても宣言してるのがアップアップガールズ(仮)なんですよ」
 EDM、ロック、ポップスなどをベースにしたバツグンに優れた楽曲と、怒涛のライヴ・パフォーマンスで、注目を集める7人組ガールズ・グループ、アップアップガールズ(仮)。もともと彼女たちは、ハロプロエッグ(研修生)出身(ほとんどのメンバーは2004年から活動)。だが、研修課程修了を言い渡され、それまで積み上げてきたものがゼロになるという、切実な結果を突きつけられた過去を持っている。そんな彼女たちが、2011年の4月から、アップフロントガールズ(仮)として活動を開始し(K-POPカヴァー・ダンス・ユニット、UFZSの活動もスタート)、のちにアップアップガールズ(仮)と改名。1年間はハロー!プロジェクトのカヴァー曲を歌ってライヴを行ない、2012年に入ると待望のオリジナル曲が完成。それ以降、毎月新曲リリースというハイスパートぶりを見せ、(2012年12月からはT-Palette Recordsに所属)、昨年は約150本という衝撃的な本数のライヴを行ない、ファンをグイグイと掴んでいった。今回の特集では、歌もダンスもサウンドも攻めまくりで上を目指すアップアップガールズ(仮)の魅力を、3回にわたってお届け。第1回目は、プロ・インタビュアー吉田豪に、彼女たちの持つ引きの強さ、魅力について語ってもらった。
左より:新井愛瞳、森咲樹、佐藤綾乃、仙石みなみ、関根梓、佐保明梨、古川小夏(写真:藤丸 修)
――吉田さんは、いつ頃からアップアップガールズ(仮)のことが気になり始めたんですか?
 吉田 「ボク自身はハロプロエッグを追ってたわけじゃないけど、エッグが解体されたときに“このままじゃいけない! なんとかしないと!”って立ち上がった人たちがボクの周りにも何人か存在して。それこそ杉作J太郎先生率いる男の墓場プロダクションの一員でもある『女性自身』編集部の田原さんも、後にアップアップとなるメンバーたちでK-POPのカヴァー・ダンス・グループ、UFZSを立ち上げたりとか。そういう動きを見て、ずっと気にはなっていて。ただ、結成してしばらく、オリジナル曲がほとんどなかった頃は正直ライヴを観てもピンと来るものがなくて。それから曲が異常なペースで増えてきて、ライヴの完成度も高くなってきて、そこからの伸び率が本当に尋常じゃなかったと思うんですよ。TIFぐらいで一気に伸びて、完全にやられたのはこの半年くらいです」
――それこそ楽曲で言えば、「アッパーカット!」発表(※2012年6月)前後からがハンパないなと。それまで培ってきたものが一気に開花した感じがします。
 吉田 「ベースはたっぷりありますからね(笑)」
――下積みだけで8〜9年って、どんだけ鍛えてるんだって(笑)。
 吉田 「ホントに(笑)。そんな感じで、Tシャツとかグッズも全部買ってはいたけど、ちゃんと会うことになったのは『Top Yell』の対談連載に呼ばれたのが最初で。そしたら取材中にメンバー同士でガチ揉めが始まったりして(笑)。ちょっとピリっとした空気が流れたけど、そういうときにも、ひたすら呑気な佐保明梨という存在にびっくりして(笑)。彼女は逸材ですよね。ステージ上ではあまり伝わってこないけど、取材で話してるときの、少し相手と距離を置きながらも、ピンポイントでいいパンチを入れてくる、あの感じは凄いなって。佐保さんと森咲樹さんをバラエティ(『Rの法則』)に送り込んでる理由がよく分った(笑)。森咲樹さんはすごく器用だから彼女をテレビに出すのは理解できるんだけど、佐保さんに対しては、“なぜあの無口なコを?”と思っていて。でも会って話してみて、なるほどな、と。あのコは爆弾だと思いました(笑)」
――佐保さんは、スパンと絶妙な一撃を入れてきますね。
 吉田 「空手をやってるだけに(笑)。実際に会ってみてグループのイメージはだいぶ変わりましたよ。取材が終わったあと新井愛瞳さんに“うちのお父さんが吉田さんのファンで本をいっぱい買ってるんですよ!”って言われて驚いたり(笑)。お父さんがサブカル大好きで、せきしろさんとかボクの本を買ってるっていう。こないだも新井さんと会ったときに“『情熱大陸』観ました!”って言われて。どうやら家族で観たらしくて」
――新井家のお茶の間では当然のことだったと(笑)。
 吉田 「そんな感じで、会って直接話して以来、徐々に感情移入して見るようになって。特に『Rの法則』で共演したことに始まるNegiccoと森咲樹さんのドラマが大好きなんですよ。普通にボクらが取材したら絶対に出せないローカル・アイドルのブルージーな雰囲気が、アップアップガールズ(仮)のメンバーが取材することによって自然に引き出されるっていう。森咲樹さんもローカル・アイドルのライヴを観て、“うち、こんなにお客さんいないと思う”って普通に言ったりとか(笑)」
――森さんがNAO☆さんの部屋に行ったときの本音トークがよかったですね。
 吉田 「自宅でアイドル特有の悩みに共鳴しあっちゃう感じが最高でした。あの番組で、ふたりに仕事を越えた絆が完成して。ただ、お互い不器用だから近寄れないみたいな(笑)。T-Palette祭り(T-Palette Records 感謝祭2012)の舞台裏も最高でしたよ。森咲樹さんが母親のような目で Negiccoのステージをずっと舞台袖から見ていて。で、“(「圧倒的なスタイル」の)ラインダンスに入ったらどうですか?”って言ったら、“行きたいんです! 行きたいんです! でも……”みたいな感じで迷ってるから、“大丈夫ですよ!”って煽って無理やり送り出して。そしたら Negiccoの3人よりも足を高く上げて、すごく楽しそうに踊ってたっていう(笑)。その光景を見ながら“いいシーンだ!”って、自分で煽っておいて、自分で感動しちゃって」
――あれはよかったですね。
 吉田 「ビジネスを越えた絆とか見た瞬間ってヤラれるじゃないですか。で、終演後の会場打ち上げでも、NegiccoのNAO☆さんが森咲樹さんに声を掛けようとしては、“ダメだ、人がいる〜”って何度も戻ってきてて(笑)。それで、ボクが帰ろうとする森咲樹さんを呼び止めて」
――僕もその光景を見ていて、なんで、あんなにNao☆さんはウロウロしてるんだろうと思ったら(笑)。
 吉田 「単に声がかけられなかったっていう(笑)」
――そうやって人柄が見えやすいグループには惹かれますね。
 吉田 「最近、改めて作りもののドラマはいらないなと思っていて。運営側が無理やり作ったような設定とかストーリーって多いじゃないですか。そんな中で、今はでんぱ組.incとアップアップガールズ(仮)が明らかに作り物ではないドラマと、それによって誕生したギラギラした何かを持っていて」
――確かにギラギラしてますね。“やってやる!”感がみなぎってますよ。
 吉田 「どちらのグループも本気で“見返してやるぜ!”って気持ちがあるから、ボクらに届くわけじゃないですか。アイドル戦国時代は終わったと言われていて、実際、対抗戦から交流戦モードに変わりつつあるんですけど、“戦いは終わっていない!”と今になっても宣言してるのがアップアップガールズ(仮)なんですよね。T-Palette祭りのMCで、その姿勢についてイジったときの返しも最高で、“AKB48より有名に、ももクロより激しくいきます!”って言い放って(笑)」
――アハハハ。
 吉田 「今、そこまでギラギラしてる人たちっていないですから。かたくなに“戦争は終わってない!”って言い張る姿勢が小野田少尉みたいで(笑)。ルバング島じゃないよ、ここは、っていう(笑)」
2013年1月6日、中野サンプラザにて行なわれた〈Hello! Project誕生15周年記念ライブ2013冬〜ブラボー!〜〉に出演。ショッキングなMCとアグレッシヴなパフォーマンスで大きな話題を呼んだ。
――(笑)。アップアップは、音と歌とパフォーマンスが、本人たちのドラマと全部シンクロしてるからこそ、伝わってくるものが大きいですよね。
 吉田 「曲も攻めまくってて、振り付けも異常にハイレベルで、それをこなせる本人たちのスキルもある。宇多丸さんもライヴを観るまでは、彼女たちに対する評価がそんなに高くなかったんだけど、ライヴを観て一気に評価が変わりましたから。そういう意味では、CDよりもとりあえずライヴを観るべきだと思いますね。あの怒涛の勢いは直に体験すれば伝わるから。今、どこに行っても絶対に爪跡を残してやろうって姿勢でライヴをやってる人たちは少ないと思うんですよ。だからボクは年明けのハロコンも、アップアップが出る日を選んで観にいったんです。“一体、アップアップが何をやるんだろう?”って。そうしたら見事に爪跡を残して」
――仙石みなみさんの「ハロプロエッグを辞めさせられて」発言、ステージ全体を使った全力パフォーマンスは本当に見事でした。ハロコン参戦をあえてプロレスに例えると、完全にUWFが新日本プロレスにUターンしてきたときと同じ状態でグッときましたね。本人たちは、まったく意図してないけど(笑)。
 吉田 「前田日明長州力の顔面に蹴り入れるような勢いで(笑)。舞台上のセットにハロプロのメンバーが座ってるから、生の反応が観れて面白かったですね。“え、それ言っちゃうの!?”“そこまでやるの!?”って明らかに驚いてて」
――で、会場もすごく盛り上がったし。
 吉田 「ある意味、アウェイな状況できっちり爪跡を残しましたね。あれを見せられたら、ハロプロ・メンバーも刺激になると思うんですよ。ああいう振り付けとか曲とか、完全に外の知らない世界じゃないですか。最近だと、つんく♂さんが書いたBerryz工房の新曲が、ちょっとアップアップっぽかったりとかして。何かフィードバックされるものもあったんじゃないかって」
――ハローの最近のEDMっぽいサウンドともシンクロしてるし、なにかしら影響はあるかもしれないですね。ちょっとアップアップの根っこの部分に戻りますが、エッグ研修課程修了、平たく言うと全員リストラされてる人たちが、奇跡的な逆転劇を起こしてる。リアルなドラマを見てる感覚が強く惹かれる要因のひとつでもありますよね。
 吉田 「やっぱりハロプロエッグ解体が大きなドラマだと思ってて、あそこから地下アイドルシーンに流れていって苦労している人もいるけど、そういう道を選ぶぐらいに何もなかったわけで。アップアップガールズ(仮)は、そこで消える運命にあったかもしれない人たちですからね。K-POPのカヴァー・ダンスをするだけで大丈夫なのかと思ったけど、そこで培ったハロプロっぽくないダンスも含めて、すべてがプラスになったっていうことですよね。タメが効いたというか」
――以前インタビューしたとき、森咲樹さんが「絶対に諦めたくないという気持ちが今の原動力」と言ってましたが、それが見事に結果として表れてきてるなって。エッグとはいえ、芸能の世界から切られてからのカムバックは、本当に大変なことだと思います。
 吉田 「一度上がってからリセットされた人たちですよね。で、常に逆境にいるから、そりゃメンバーも団結しますよ。ハロコンのMCでもギャグ交じりに言ったけど、本人たちの中にはやっぱり“捨てられた”って気持ちがある。だから、“ハロプロカヴァー曲はあまり歌いたくない。そこに頼りたくない”っていう複雑な感情も見え隠れするし」
――自分たちのイメージに合った衣装でオリジナル曲が歌えるのがすごく嬉しい、と語ってますし。
 吉田 「そういう気持ちがあるから、あれだけ怒涛の勢いでオリジナル曲が増えても対処できるんでしょうね」
――普通だったら、毎月シングルが出るって状況に付いていけないですよ。
 吉田 「しかもあの高レベルの振り付けで。普通のグループなら、すぐに限界が来ますよね」
――スタミナも凄いし、根性が違うなと。これは気持ち的に乗っかれますよ。
 吉田 「あと、T-Palette祭りのとき、よかったグループのアンケートをニコ動がやって、Negiccoとアップアップが同率で1位だったのが非常に平和な結果だったな、と」
――ニコ動を見てる人は、アップアップを知らない人も多かったと思うんですけど、それでもちゃんと届いたっていう。
 吉田 「やっぱり、バックボーンとか知らなくてもギラギラしたものは届くんですよね。ライヴを観れば絶対に何かしら伝ってくるものがあるから、お勧めしやすいですよ」
――あと、メンバーに関していうと、7人それぞれ個性がバラバラなのに、見事なパズルのように組み合わさって支えてる感もあって良いグループだなと思います。
 吉田 「基本みんな、苦労してきてるから大人だし。そこからちょっと外れてるのが、佐保さんと新井さん(笑)。仙石さんも、ヤングジャンプのグラビア企画のアンケートが面白くて爆笑しましたよ。他のアイドルと言ってることが全然違くて。1人だけ〈毎公演、死ぬ気でやってます!〉〈私たちは自分たちをアイドルと思ってないんですけども(笑)←体育会集団です!〉〈生まれ変わるとしたら、なりたいのは戦国武将です! 侍になって100人斬りがしたいです!〉とかギラギラしたこと言ってて(笑)。ただ、そうやってギラギラしてるけど殺伐としたものが何も感じられないのがいいんですよね。普段は牧歌的な人たちがステージではギラギラするっていう、その切り替えが面白くて。ガンガン仕掛けるんだけど、戦いが終わればノーサイドっていう。苦労が多いからこその、謙虚さと自信のなさが同居しつつ、腹くくってやってる感じにグッとくるんですよ。ここまでギラギラしつつも腰が低いのって、僕の周りでは(俳優の)中山一也さんぐらいですから(笑)」

「End Of The Season」

「UPPER ROCK」

「チョッパー☆チョッパー」

――アハハハ。ちなみに吉田さんのフェイバリット曲は?
 吉田 「基本、オリジナル曲は全部好きですよ。michitomoさんが手がける楽曲はどれも最高だし、RAMRIDERさんがそこに入ってきたのも嬉しかったし、でもやっぱりPandaBoYさんが関わるようになってから、さらに違うステージに行った気がして。今は〈チョッパー☆チョッパー〉が一番好きです」
――「チョッパー☆チョッパー」の、手を頭上でブルブル振るダンスを会場全体でやる光景が、“ええじゃないか”みたいな、メチャクチャなお祭りっぽくてたまらなく好きです(笑)。あと、メンバーは、メジャー・デビューして(仮)を外すのを目標としてますが、(仮)問題はどう捉えてます?
 吉田 「メジャー・デビューしてもグループ名として(仮)は付けたままでいいんじゃないですかね。“衣装からは(仮)をはずしました”、“えー!?”みたいな。それぐらいのデタラメな感じがいいんじゃないかな」
――では、今後のアップアップがどうなってほしいか、吉田さんなりの見解を。
 吉田 「とにかく戦いの姿勢を忘れてほしくないっていう、それだけですね。“人は歩みを止め闘いを忘れたときに老いていく”ってアントニオ猪木も言ってましたけど、変に丸くなることなく、次々と何らかのターゲットを見つけてギラギラし続けていってほしいです」
――ずっと戦いをやめるなと(笑)。どうもありがとうございました!
取材・文/土屋恵介(2013年1月)
【次回はメンバー・ロング・インタビューです!】
1月30日UP(仮)
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