期待のシンガー・ソングライター山崎あおいが贈るセツナ混じりのサマー・チューン「夏海」

山崎あおい   2013/07/04掲載
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 2012年8月、アルバム『ツナガル』でメジャー・デビュー。生々しい感情と冷静な視線がバランスよく共存する歌詞の世界によって、女性リスナーを中心に大きな注目を集めているシンガー・ソングライター、山崎あおいから3rdシングル「夏海」が届けられた。夏という季節のなかに潜む切なさに焦点を当てつつも、決してネガティヴにならず、誰もが楽しめる夏ソングへと結びつける――この曲には彼女のソングライティング・センスが、理想的なカタチで表現されていると思う。
――ニューシングル「夏海」、素晴らしいです。夏ソングなのにサビの歌詞に「疲れたみたい」というフレーズがあって、しかもそれがまったく後ろ向きに聴こえないっていう。
 「(笑)。ありがとうございます」
――この曲を書いたのいつ頃なんですか?
 「高校2年生の、夏の始まりの時期ですね。私は北海道出身なんですけど、ちょうどいまくらい(6月中旬)になると、花火大会や情報が学校のなかにも入ってくるんです。まわりのみんなは“今年の花火大会は誰と行く?”とか“俺は○○を誘う”みたいな話で盛り上がってるんですけど、そのときの私はちょっと寂しい気持ちだったというか、思い切り乗れなかったんですよね。“どうせ今年もひとりなんだろうな”っていう……。でも、“こういう気持ちを抱いてるのは、きっと私だけじゃないんだろうな”って思って、だったら、この気持ちをちゃんと曲にしてみようって」
――自分のことを客観視してるんでしょうね、きっと。
 「わりと冷めた性格なのかもしれないです。熱い気持ちになってるときも、そんな自分を一歩引いたところから見てるところがあるというか。曲を書くときは、冷めてるときのほうが多いですね。熱い気持ちをそのまま書くことは少なくて、そのときの風景を写真に撮るような感じというか、客観的に見みながら曲にしていくほうなので」
――物事を俯瞰で見る傾向は、ソングライターに必要な資質だと思います。ポジティヴで元気というわけではないのに、夏らしくてポップな曲に仕上がっているのも印象的でした。
 「歌詞はけっこう切ないというか、そこまでプラスな気持ちではないんですけど、曲全体の雰囲気まで重くなっちゃうのがイヤだったんですよね。サウンドは爽やかで夏らしく、だけど、歌自体はキュンと切ないっていうバランスがいいなって。結末までモヤモヤしてるのも良くないなと思ったから、最後は“笑っていたい”って歌ってるし」
――歌詞のなかに「また一人になりたがる私」というフレーズがありますが、本当にそういう傾向があるんですか?
 「そうですね(笑)。まわりの友達はサークルの飲み会とか、サークルの人たちと江の島に遊びに行ったりしてますけど、私はそういうのが得意じゃなくて。友達とどこか行くにしても、ふたりか、多くても3人くらいまでがいいんですよね。こじんまりと(笑)」
――2曲目の「Pastime」にも「夕暮れに一人飲まれてゆくの」という歌詞があって。
 「これも高校生のときに書いたんですけど、夕方、一人で自転車に乗ってるときの景色をそのまま歌にしようと思って。イヤなことがあった日、よく自転車で知らない町まで行ってたんですよ。そこでおもしろいものを見つけたり、公園で遊んでる子供を見てキュンとしたり……。そうやって過ごしてると、いつの間にか“まあ、いいかな”って気持ちになってきて、方向転換して家に帰るっていう。そのときのリラックスした感覚を歌にしてみたかったんですよね」
――この曲のアレンジはアコースティックギターが軸になってます。アコギは山崎さんにとって、どんな楽器なんですか?
 「もちろん音も好きだし、曲を書いてるときはわりと――“わりと”って口癖ですね(笑)――頭のなかでアコギが流れてることが多いんですよね、いまのところ。音楽に目覚めたきっかけはYUIさんなんですが、やっぱりアコギを弾きながら歌ってることが多いじゃないですか。洋楽だと、テイラー・スウィフトさんとか。〈Pastime〉は柔らかい雰囲気で夕暮れの感じを出したかったから、アコギが似合うかなって」
――3曲目の「Subway」では、元カレとすれ違う瞬間が描かれています。
 「札幌は地下鉄の文化なんですけど、地下鉄の駅って冷たくて、寒くて、すごく声が響くんですよね。そういう場所で、好きだった人とすれ違う、その一瞬を曲に出来たらなって」
――確かに数秒の出来事なんだけど、その向こうに“物語”がしっかり感じられるのがいいですよね。
 「時間にすれば2、3秒なんですよね。でも、その短い時間のなかでものすごくいろんなことを考えてるはずなんですよ、お互いに。昔の思い出だったり、“いまどうしてるのかな?”ということだったり」
――しかも、そのときに生まれた思いって、またすぐに消えてしまう。
 「そうですね。パッと生まれて、パッと消えるものだと思います」
――それを曲というカタチにして残しておきたい、という気持ちもある?
 「残しておきたいというよりは、そのときの気持ちを思い出せるようにするために曲にするという感じかも。私自身、好きな曲と思い出が重なってるんですよ。“この曲を聴いてたときは、高校1年の学園祭の頃だったな”とか。私の曲も、聴いてくれる人の思い出とリンクしてくれたらいいなって思います」
――なるほど。最後に今後の展望についても聞かせてください。デビュー直後のあるインタビューで「まずは売れたい」と発言してましたが、その気持ちはいまも続いてますか?
 「もちろんです! “自分の好きな音楽をやって、わかってくれる人だけが聴いてくれればいい”って言えばカッコいいかもしれないけど、私はそうじゃないんですよね。聴いてくれる人がいないと続けられないし、自分の歌が届いたときの喜びを知ってからは、“もっともっと”と思うようになったので。聴いてくれる人が増えれば、曲を作って歌う意味もさらに大きくなるんじゃないかなって」
――正しいと思います。夏以降、ライヴ活動も増えていきそうですね。
 「さっきは“冷めてる”って言いましたけど、ライヴでは熱くなっちゃうんですよね。私生活が充実してないし(笑)、ひとりで家にいても寂しいから、ライヴが本当に楽しみで。あまりにも楽し過ぎて、1曲目から泣きそうになっちゃうんですよ。生きてる! って感じがするんですよね、ホントに。もともとヒマな時間が苦手なので――余計なことを考えちゃうんですよね――忙しいほうがいいんですよ。とにかく身体を動かして、がむしゃらにやってるほうが自分には合ってると思います」
取材・文 / 森 朋之(2013年6月)
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