単身ロンドンに渡って制作された湯川潮音のニュー・アルバム『灰色とわたし』

湯川潮音   2008/06/26掲載
はてなブックマークに追加
 湯川潮音が約2年半ぶりとなるフル・アルバム『灰色とわたし』を発表。昨年末に単身渡英し、豊かな自然に囲まれたロンドン郊外のスタジオで制作に臨んだという今作は、必要最小限のアコースティック楽器のみで構成された簡素なサウンドや、自筆の油絵によるポートレイトを大胆にあしらったジャケットとも相まって、シンガー・ソングライターとしての彼女の本質が色濃く浮かび上がってくるような会心の作品に仕上がった。


 昨年秋にリリースされたシングル「ギンガムチェックの小鳥」の歌い出し、“閉じ込められた鳥かごの中へ”の“鳥かごの中”とは、当時、曲作りに悪戦苦闘していた自室の風景がモチーフ。2006年夏の『紫陽花の庭』、2007年初めの『雪のワルツ』と、ミニ・アルバムながら薫り高い作品をコンスタントに届けてきた湯川潮音も、ちょっとした壁に当たっていたようだ。
 「大変なときでした。でも “小部屋ライブ”という企画を月イチで始めて、そこで必ず1曲新曲をやろうっていうことを目標にしてからは、ちょっとずつ曲が貯まりはじめたかな。なんかこう、去年一年があったことで、本当に大切なものはなんだろうっていうところに立ち帰ることができました。必要なものだけ残して、あとは身を任せてもいいんじゃないかって。大切だと思っていたものを少し手離したら、もっといろんなものが入ってくるようになって。それが去年の成果だと思いますね」

 そんな彼女が、書き貯めた曲をレコーディングするために単身ロンドンへ向かったのは、昨年の暮れ。かつて短期留学していたこともあり、帰国後に自作曲を作るようになったことから、ロンドンはミュージシャン・湯川潮音の原点と言える場所。


「アルバムに入っている半分はこっちで書いていたもので、残りは向こう。最初、残りはセルフ・カヴァーとか、英語の曲のカヴァーとかでもいいかなって思ってたんですよ。同じ曲をやっても、きっと解釈が変わってくるだろうし、それでおもしろいものができるんじゃないかなって」

 そして、結果的には全曲初収録曲となって完成をみたのがニュー・アルバム『灰色とわたし』。
「“ギターとうた”っていうところだけで作り始めた曲たちだったので、究極なことを言ったら“うた”だけでも成り立つようなもの、うたがあることによって他の楽器が聴こえてきたり、別の何かが聴こえてくるようなものにしたいっていうのは、プロデューサーのクマ(原田)さんと最初に話をしていて。タイトルのように、モヤモヤした、先行きの見えないような気持ちはありましたし、行ったのが冬で、曇りや雨の日も多かってたんで、もっとドヨ〜ンとした感じが音に出るかなって思っていたら、すごく風通しのよい、光の見えるものになりました。ミュージシャンはみんな初めて会った人たちなんですけど、萎縮しちゃうとか、音を録られることに縮こまっちゃうことはまったくなくて、むしろ、なんでも受け入れて自分のものにしていこうっていう気持ちになってましたね。あと、歌入れのブースの窓からおっきな木とその先に山並みが広がっていて、それを見ながら歌っていたから、自然と気持ちが開けた感じもして」

 その“うたごえ”だけで空気を一変させる、世界を作るということに関しては、かねてから秀でた“天性”を発揮していた彼女だが、アコースティックな音作りに徹し、気分のままに記録されていった今作では、それをしみじみと感じずにはいられない。
「最初に録った自分のうたをプレイバックして聴いた時に、“私ってこういう声してるんだあ!”って、驚きました。それはもう、自分でも鳥肌が立つような感覚で(笑)。なんなんでしょうねえ……いろんなこと、ミラクルにミラクルが重なって、まぐれもあっただろうけど、そもそも音楽ってそういう魔法みたいなものだから、なるべくしてなったアルバムだなって思いますね」


取材・文/久保田泰平(2008年5月)



【『灰色とわたし』発売記念 湯川潮音インストア・ライヴ情報】


●タワーレコード新宿店 
●7月21日(月・祝) 14:00〜
●タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
※タワーレコード新宿店・渋谷店・池袋店にてアルバム『灰色とわたし』をご購入の方に先着でサイン会参加券をお渡し致します。イベント当日、お買い求め頂いたCDとサイン会参加券をお持ち下さい。

●ヴィレッジヴァンガード下北沢店
●7月23日(水) 20:30
●ヴィレッジヴァンガード下北沢店 CDコーナー横スペース
※完全生音のアコースティックライブを予定しております。ヴィレッジヴァンガード下北沢店にてアルバム『灰色とわたし』をご購入の方に先着でイベント参加引き換え券をお渡し致します。イベント当日、お買い求め頂いたCDと引き換え券をお持ち下さい。また、この会場では、前方のお客様に座っていただくことになりますので、お荷物に余裕のあるお客様は、小さなクッションなどをお持ちください。
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[特集] ジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス』 一新されたアルバムと驚きの貴重音源を収める50周年記念盤の聴きどころ[インタビュー] 新作アルバムは、ずっと愛奏している作品で構成したオール・ショパン・プログラム、小林愛実
[特集] 「Sony Park展」第3弾「ファイナンスは、詩だ。」 東京スカパラダイスオーケストラインタビュー[インタビュー] 活動10周年にして集大成さくら学院ラスト・インタビュー
[インタビュー] チャレンジ精神に歌とダンスでエールを送る 新曲は『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』主題歌、BOYS AND MEN[特集] Sony Park展「音楽は旅だ」「カンタビレIN THE PARK」レポート 奥田民生
[特集] クラウン時代のラスト・アルバム(鈴木茂コスモス’51リミックス発売記念ライブ)白熱のライヴ・レポート、鈴木茂[インタビュー] 千住真理子、音楽は時空を超えて旅をする 新作はヴァイオリンで歌う世界のメロディ
[インタビュー] ユーミン、じゃがたら、『みんなのうた』…、新作は原曲と違う風景が見えるカヴァー集 KERA[インタビュー] 宮本笑里×DAITA 恐竜科学博の壮大なテーマ曲で実現した、異なる弦楽器のコラボレーション
[インタビュー] 架空の映画のサウンドトラックというコンセプト・アルバムを発表したKaede[インタビュー] 大井 健 コロナ被害からの再起 / みずからの新たな挑戦から生まれたクラシック・アルバム
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015