ポップで毒がある新しい音楽、BUSHMIND『SWEET TALKING』

BUSHMIND   2015/05/12掲載
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“PSYCHEDELIC B-BOY”を謳い、ヒップホップに限らずアンダーグラウンド各界に衝撃を与えてきたDJ / トラックメイカー、BUSHMINDが3rdアルバム『Sweet Talking』を完成させた。自身が参加するクルー、SEMINISHUKEIの仲間たちや各地の同志たちに加え、小島麻由美など少々意外な面々も参加。サイケデリック・ロックやテクノ / ハウスからもインスピレーションを得て制作された傑作の内容はもちろん、これまでの歩みを含めてたっぷりと話を聞いた。
――DJを始めたのは15歳の頃だそうですね。
「そうっすね。兄貴に影響を受けてヒップホップが好きになって。兄貴の部屋でターンテーブルを触らせてもらってて、高校になってからは自分でもやろうと決めてました」
――お兄さんとはいくつ年が離れてるんですか。
「8歳ですね。自分で(音源を)手に入れる方法が分からなかったから、最初は兄貴から借りたテープをひたすら聴いてました。それから少しずつ自分で買うようになって、ドクター・ドレーとか西海岸のギャングスタ・ラップに夢中になった。特に『Chronic』。最初は良さがよく分からなかったんだけど、気付いたらメチャクチャ好きになってた。ああいう不良文化に対する憧れもあったし、ハードコアでいかついものに興味があって(笑)」
――トラックメイキングを始めたのは?
「初めて作ったのは18(歳)ぐらい。その後少し空いてから機材を買って、それからちゃんと作るようになりました。その頃はクラブ・ミュージック以外のものを聴いてたんですよ。俺、高校の途中までは黒人が一番強いと思ってたんですけど(笑)、白人のロックをもうひとりの兄貴に教えてもらって、そこから一気に世界が広がっていった。アイアン・バタフライブルー・チアーヴァニラ・ファッジホークウインド……」
――また濃いところを(笑)。
「そうなんですよ(笑)。そういうサイケデリック・ロックにハマっていって、サイケでDJミックスを作ったりしてました。当時、クボタタケシさんの『Classics』っていうミックス・シリーズが出たんですけど、ジャンルと時代の壁の越え方に衝撃を受けて……それが98、9年ぐらいです」
――2001年にはSEMINISHUKEIが(東京)西麻布のブレッツでパーティとして始まりますよね。
「最初のころは“DJ禁止”にしたこともありました」
――DJ禁止?
「そうそう。機材を持ってきてライヴをやろうということなんですけど、DJにしてもみんな特殊なことをやろうとしてました。実験の場だったし、お客さんも2、3人しかいなくて(笑)。1、2年ぐらいそういう感じでやってて」
――でも、その期間やってたことがSEMINISHUKEIがレーベルとして発展していく際の下地になっていったわけですよね。
「そうですね、それはデカイです。みんなで毎月何時間も音楽を聴くという行為をやっていたわけで、そこで共有していた音楽がSEMINISHUKEIの基礎になってる。今も三軒茶屋のバーで隔月でやってるんですけど、そういうことは今後も続けていきたいすね」
――2004年にはデトロイトに3ヵ月間滞在されてますよね。
「違う文化に触れられたし、刺激的でしたね。ただ、よく言われるほどデトロイトは危ない街じゃなかった(笑)。もちろん黒人居住区にひとりで行けば絡まれることもあるかもしれないけど、そんなに危ないところじゃなかった。3ヵ月の前半は(デトロイト在住である)兄貴がブッキングしてくれたんで、10本以上はやりました」
――そして、それまでに培った人間関係が2007年の1stアルバム『Bright In Town』で一端まとめられますね。
「あの時期、友達がすごい勢いで増えてたんですよ。それまではいつも5、6人で動いてたのが、いきなり何十人に膨れ上がっていて、それをパックしたいという気持ちが強かった。それと、NIPPSさんの『MIDORINOGOHONYUBI MUSIC』(2002年)というアルバムがあるんですけど、あれってNIPPS名義なんだけどいろんな人が入ってるんですよね。“俺もこういうものを作りたい”と思ってたし、ああいう風によく遊んでいる周りの友人たちを紹介できるアルバムになったらいいなと思って。なによりもみんなで作りたい、楽しみたいという気持ちが基本にありましたね」
――普段続けてるパーティの延長上という感覚もあったんですか。遊びながら、実験しながらという。
「ああ、それはありますね。あと、1stアルバムを出す前にSEMINISHUKEIもコンピレーション・アルバムを3、4枚出してたんで、その流れもあります」
――2011年には2ndアルバム『Good Days Comin'』がリリースされ、今回3枚目となる『Sweet Talking』が出たわけですけど、制作にあたって構想というものはあったんですか。
「2ndアルバムはグループでのラップ曲が多かったんで、今回はここだけの組み合わせというか、編成として混ざった感じでいこうと。ただ、設定先行になっちゃってもおかしくなるので、あくまでも曲の良さを優先しながら作っていきました。もちろん聴きやすい全体の流れというものは考えたんですけど、どちらかというと1曲1曲のインパクトを重視したところはあって。全曲キラー・チューンにしたかったし、参加してくれた人を全員活かしたかった。曲順は最後の最後まで悩みましたね」
――今回もさまざまなラッパー / シンガーが参加してますよね。
「だいたい友達だったり一緒に遊んだことがあったり、というメンツですね。ただ、LUNAさんとNIPPSさんは制作が始まってからちゃんと話したし、小島麻由美さんは以前リミックスをやらせてもらったことがあるので、その時が初めて」
――小島さんとD.U.O TOKYOをフィーチャーした「LIPS」はどういうやりとりで作っていったんですか。
「ちょっと丸投げというか、歌いたいように歌ってもらいました。俺、単純にファンなんですよ(笑)。ハタチぐらいの時期からすげえ聴いてたし。今回は同じく俺が大ファンであるD.U.O TOKYOとやってもらいました」
――その他にもBUSHMINDさんがファンの方々に参加してもらった、と。
「そうすね、まさに(笑)。ROCKASENをフィーチャーした〈GET BACK〉のトラックなんかは結構高いハードルだと思ったんですけど、“おまえらならできるだろ”と強引にオファーして(笑)」
――その「GET BACK」やKNZZさんをフィーチャーした「PLANET ROCK」はすごいトラックですよね。完全にアシッドというか(笑)。
「その2曲は強烈ですよね、自分でも新しい試みだと思う(笑)。“今までにないものを作りたい”と気持ちが一番前面に出た曲じゃないかな。自分のなかで常にテーマとしてあった“テクノとヒップホップを融合させながら新しい音楽を作る”というものを形にしました」
――DJでは結構テクノもかけますもんね。
「俺、テクノが大好きなんですよ(笑)。“ヒップホップとうまく混ぜたい”という気持ちは以前からあったんですけど、ヒップホップ自体の幅もすごく広がってるし、機材も変わってきてるのでいろんなことができるようになってる。〈GET BACK〉と〈PLANET ROCK〉は“テクノとヒップホップの融合”という実験の最新型だと思います。テクノをそのままやるんじゃなくて、あくまでもラップ・トラックとして作りたかった」
――たとえ実験的なトラックを作っても、楽しみながらその上に乗ってくれるKNZZさんみたいな人がいるという環境は大きいですよね。
「そうなんすよ。それには本当に感謝して。KNZZはラップ力があるので、彼とだったらこういうものもできるだろうと。70小節ぐらいラップしてますからね、びっくりしました」
――東海地区のアーティストも多いですよね。YUKSTA-ILL、CAMPY&HEMPY、NERO IMAI、C.O.S.A、RAMZAとか。
「あまり意識してなかったけど、気付いたら東海勢が多くなってた。東海には俺が出会ってないおもしろいやつがまだまだいると思うんですよ。ラッパーはみんなひとりでライヴをできるぐらいタフだし、いろんな音楽が好きなんですよね。雑食。東海以外にも土地土地におもしろい連中がいますね」
BUSHMIND / SWEET TALKING
――あと、ジャケットはBUSHMINDさんとも縁の深いデザイン・チーム、WACKWACKが担当していて。
「そうですね。俺自身、ポップで毒があるというものが好きで、今回のアルバムもそういうものを表現したつもりなんですけど、そういうイメージを絵にしてくれるのはやっぱりWACKWACKかなと思って。誰もが入れるポップさがありながら、分かる人は分かる裏設定もあるという」
――それでジャケットもホークウインドの『Space Ritual』(73年)がモチーフになってるわけですね。
「そうそう、そこも実験だったんです。WACKWACKに『Space Ritual』のレコードを見せて……まさかこういう絵になると思わなかったですね(笑)。ホークウインドは十代の頃に初めて聴いたんですけど、衝撃的でしたね。特に『Space Ritual』」
――今後の活動についてはどう考えてますか?
「テクノ / ハウス系の曲が溜まってるので、いいタイミングで出したいと思ってるんですよ。これまでの比重としてはヒップホップのほうが多かったわけですけど、テクノのほうにも今後力を入れていきたいなとも思ってます。ただ、最終的にはヒップホップとかテクノの枠から外れたところがおもしろいと思ってるし、そういうところにいきたいですね」
取材・文 / 大石 始(2015年4月)
Space Shower TV
『Black File』#259

www.spaceshowertv.com/blackfile/
twitter.com/blackfilesstv
5月12日(火)25:00〜26:00放送、SPACE SHOWER TVのブラックミュージック専門音楽番組『Black File』#259にて、BUSHMINDの新曲「FRIENDS KILL feat. NIPPS & B.D.」MV(監督: xtothexx)が解禁。

初回放送 5月12日(火)25:00〜26:00
リピート 5月23日(土)25:30〜26:30


LIVE FILE: 9sari Group / BLACK SWAN TOUR FINAL
INTERVIEW FILE: 5lack / ISSUGI / budaMunk
Exclusive MV NEIGHBORHOOD: BUSHMIND feat. NIPPS & B.D.
INTERVIEW FILE: RAq a.k.a. REEZY(INTERVIEW by Kダブシャイン)



NEW DECADE

2015年5月16日(土)
東京 池袋 BED

〒171-0021 東京都豊島区西池袋3-29-9 福利ビル B1

[LIVE]
ISSUGI / TOSHI MAMUSHI / ELMO

[DJ]
49 / BISON / YODEL / BUSHMIND / GRINGOOSE / HIGHSCHOOL / THE TORCHES

開場 23:00 / 終演 5:00

2,500円 / with Flyer 2,000円(1Drink)

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