【モーション・シティ・サウンドトラック interview】メロコアからパワー・ポップまで、ミネアポリスの伝統を受け継ぐモーション・シティ・サウンドトラックのメジャー第1弾作品

モーション・シティ・サウンドトラック   2010/03/23掲載
はてなブックマークに追加
【モーション・シティ・サウンドトラック interview】メロコアからパワー・ポップまで、ミネアポリスの伝統を受け継ぐモーション・シティ・サウンドトラックのメジャー第1弾作品
 メロコア〜“ファン・パンク”といったライトなイメージで語られることが少なくないミネアポリス拠点の5人組、モーション・シティ・サウンドトラック。だが、実際はロックの歴史を踏まえた上で、そのパッションをしっかりと伝えていこうとする良質のパワー・ポップ・バンドといった印象で、ハスカー・ドゥリプレイスメンツソウル・アサイラムといった80年代から90年代にかけて活躍した地元の偉大なる先輩バンドたちの遺伝子を受け継いでいるようでもある。最新アルバム『マイ・ダイナソー・ライフ』をひっさげて来日公演を実現させたジャスティン・ピエール(vo、g)とトニー・サクストン(ds)に、そんな自分たちの音楽的立ち位置と現在のミネアポリス・シーンについて聞いた。
――たとえば、アメリカの音楽ウェブサイト“Pitchfork”は、“インディ・ミュージックとその向こうにあるもの”というようにとりあげる音楽を一定の目線で捉えていますが、あなたがたは、メディアにおいて自分の立ち位置がどのように受け止められていると思っていますか?
ジャスティン・ピエール(vo、g) 「うーん、とくに考えたことないなあ。良く書いてくれるのならどこでも歓迎さ(笑)。今回のアルバム『マイ・ダイナソー・ライフ』のレビューは、『SPIN』誌なんかにも載ったんだよ。今まで相手にもしてくれなかったのにね」
トニー・サクストン(ds) 「あとは『GQ』誌なんかにも載りたいな〜(笑)」
ジャスティン 「ただ、僕らは昔も今も基本的なスタンスは変わっていない。インディとかメジャーとかの境目を取っ払うことを一つの目標としていたからね。たしかに『マイ・ダイナソー〜』はメジャーからのリリースだった。でも、だからって“向こう側に行ってしまった”とは思われたくないんだ。まあ、(メジャーからのリリースという理由で)とりあげる側の気持ちもわかるんだけどね。いくらか整理して分けた方がリスナーには届きやすいだろうから」
トニー 「でも、僕らのファンは、ほかにいろんなものを聴いてるよ。ファン・パンクみたいなものも聴けば、もっとポップなものを聴いている人もいるし。年齢層も幅広いしね」
ジャスティン 「うん、僕らの音楽を通じていろんなものに手を伸ばしていってる印象があるよね。そういう意味では、僕らってカテゴライズしづらいバンドなのかも」
photo by hachi
――ミネソタ州ミネアポリスの大先輩バンドに、リプレイスメンツやソウル・アサイラムといったバンドがいますよね? 彼らは70年代のパンク・ロックと現在をつなぐブリッジでありたいというような発言をかつてしています。つまり、音楽の歴史を受け継いでいこうとする意志があったわけですが、あなたがたにもそういった自覚があるのでしょうか?
ジャスティン 「ミネアポリス出身なのは僕とジョシュア(・ケイン/g)だけなんだけど、その二つのバンドはもちろんリスペクトしているよ。超熱心なファンには負けるけど、結構愛聴してきたと思う。ミネソタにはたしかに歴代、名アーティストが多くいて、ロウなんてのも僕はすごく好きだし、あとは何たってプリンス! アルバム『パープル・レイン』はすごく大きな存在だったよ。つまり、ミネアポリスにはそのくらいいろんなルーツがあるってことなんだ。で、僕らはそのミネアポリスの折衷趣味みたいなものを受け継いでいるかもしれないな。ただ僕らもまだまだ発展途上でさ、ミネソタの音楽史の中に名を刻めているかどうかの自覚もないんだ。ジリジリジリジリと右肩上がりになっているから、まあ、このまま行けば名を残すことはできるかなとは思うんだけどね(笑)」
photo by Dan Monick
――ブルックリンやポートランドには、明確なシーンが新しく萌芽していることが日本にも伝わってきています。今のミネアポリス・シーンはどのような状態にあるのですか?
トニー 「僕は今LAに住んでいるし、何しろ1年のほとんどがツアーばっかりだからわからないなあ」
ジャスティン 「正直言って、今はもう一歩って感じなんだ。90年代後半から2000年代初頭には結構な数のバンドがいたし、いろんなバンドがツアーで立ち寄って、地元のバンドと共演したりして盛り上げていたんだよ。“Foxfire Coffee Lounge”という、地元で唯一キッズたちが入れるクラブがあって、ほかの町からやってきたジミー・イート・ワールドゲット・アップ・キッズらをどんどんブッキングしていてね。僕らもそこを拠点にして巣立っていったんだ。でも、そこが閉店してしまってからはシーンもしぼんでしまったよ。10代の若いファンが気軽に観に行けるヴェニュー(※ライヴ・ハウスのこと)がないとシーンは盛り上がっていかないよね」
――そういう状況を改善するために、あなたがたが実践していることはありますか?
ジャスティン 「僕らがやっているのは、できる限りオール・エイジが入れるライヴであろうとしていることかな。事前にプロモーターやエージェントに、キッズたちでも気軽に遊びにこれるようなライヴであることをヴェニューに伝えておいてもらうんだ。そうすると、普段は年齢制限があるヴェニューも僕らの時は特例としてもらえる。もちろん、その分、危険なことがないようにしないといけないんだけど、影響力のあるバンドはこうやってヴェニューを解放的にしていくべきだよね」
トニー 「だから僕らのライヴにはキッズもいればお年寄りもいる。みんな分け隔てなく楽しんでくれてるんだ」
ジャスティン 「でも、僕らのレコードを聴いたら、まったく安心印のバンドじゃないってことは誰もがわかることだけどね!(笑)」
取材・文/岡村詩野


※最新作『マイ・ダイナソー・ライフ』発売中
(SICP-2540 税込2,520円)
詳細は日本公式サイト(http://www.sonymusic.co.jp/mcs)まで。
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] Arvin homa aya  実力派シンガーの話題曲 アナログで連続リリース[インタビュー] ジェイコブ・コーラー × kiki ピアノ 凄腕師弟コンビ
[インタビュー] 文坂なの \[インタビュー] 人気ジャズ・ピアニストが立ち上げた新レーベル 第1弾は田中裕梨とのコラボ・シングル
[特集] いよいよ完結!? 戦慄怪奇ワールド コワすぎ![インタビュー] you-show まずは目指せ、新宿制覇! 新宿発の楽曲派アイドル・グループがデビュー!
[インタビュー] 想像を超えた創造。タフでラフでラブな一枚 崇勲×ichiyonのジョイント・アルバム[インタビュー] 千住 明、オペラ・アリアをヴァイオリンで 千住真理子とともに20年以上前の編曲スコアを再録音
[インタビュー] 思い出とともに甦る名曲の数々 藤あや子のカヴァー・アルバム[インタビュー] 紫 充実の新作を発表、海外フェスへの出演決定と結成55周年に向け勢いを増すバンドの現在と未来
[インタビュー] RISA KUMON バイリンガル・シンガー・ソングライター  ユニバーサルなアルバムでデビュー[インタビュー] HAIIRO DE ROSSI ジャズ・ラップの金字塔 10枚目にして最高傑作
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015