ニュース

[MY AUDIO LIFE 2020 playback]古き良き時代のジャズをめぐる生活 千葉・宮武修一さん

2023/05/26 14:55掲載
はてなブックマークに追加
[MY AUDIO LIFE 2020 playback]古き良き時代のジャズをめぐる生活 千葉・宮武修一さん
 MY AUDIO LIFE 2020 playbackでは、今夏発売予定のCDジャーナルムック『マイオーディオライフ2023』発売までの間、2020年に発売された『マイオーディオライフ2020』に掲載された記事の一部を抜粋し、掲載していきます。

 第2回にあたる今回は、千葉・柏市在住の宮武修一さんのご自宅の様子と使用機器を紹介します。

[MY AUDIO LIFE 2020 playback]
 柏市にお住まいの宮武修一さんのお宅を訪問して、つくづくオーディオというのはスピーカーが主役だと思わされた。極論だが、オーディオってもしかすると持ち主よりも中心に存在するのがスピーカーで、だから、この本も実は「スピーカーに選ばれし人々の本」なのかも知れない。実際、オーディオマニア同士で知らない人に誰かを紹介する時も「タンノイを使ってる人」とか、「アヴァロンの人」みたいに言うし、インターネット上のハンドル名にスピーカーの型番を使っている人も多い。

――貴婦人のようなハーランが部屋によく馴染んでいた

 宮武さんのご自宅はマンションなのだが、ちょっと変わった間取りというか変わった造りで、「離れ」とでも言うべき横長の独立した一部屋の建屋が付いている。そこをリスニングルームとして使っていて、マンションの一室から中庭みたいなスペースを通ってこの部屋に入るのだった。そういうわけで、「改築や増築ではなく最初からこの部屋が付いていたんですね?」「そうです」「オーディオ用としておあつらえ向きですね、ご夫婦で音楽を楽しむんですか?」「いやー、そんなこともありません」「じゃあ、隔離部屋ですね。でもいいなあ」みたいな会話から取材が始まった。

 そんな隔離部屋に置かれているスピーカーは、JBLの「ハーラン」だった。スピーカーの存在は確かにきわめて大きいのだが、だからと言ってこの部屋のJBLハーランは、強く主張して幅をきかせて偉そうにしているという感じではなかった。さすがに古いスピーカーは奥ゆかしさという点でも優れていて、自動車にたとえるなら「バンデンプラ・プリンセス」みたいな感じで、これこそが気品というものだろう。部屋によく馴染んでいて、この本が出る頃にはやって来て7年になるはずだが宮武さんとの蜜月状態は続いている。

 お部屋のメインカットの撮影を先に終わらせた後、貴婦人がごときJBLハーランが奏でる音はどうかと興味津々の音出しが始まった。そして期待にたがわず、1950年代にワープしたかのような錯覚をおぼえた。そもそも音楽というものが心のタイムマシンなわけだが、ハーランは耳を経由して脳にはたらきかける音のタイムマシンなのだった。


拡大表示

※ハーランの下に敷く板もいろいろ試していて、今はこの状態で落ち着いている。

――ほとんどのレコードが古き良き時代のジャズ

 「おー、いいですね」、古き良き時代のアメリカそのもの、酒とバラとジャズ、ちょっとセピア調で、色彩感はあるけどモノクロームの中の色彩感みたいな感じだった。そして、良い意味でちょっと乾いた感じがJBLサウンドだ。なおかつ、ある種の軽快さと可愛らしさがとても魅力的だった。JBLハーランって日本に何ペア存在するんだろう。「結局のところ、JBLは375(10僂離疋薀ぅ弌次砲砲いのかどうかが分かれ道ですよね」と宮武さんは言う。「あ、それよくわかります。375にいくとだいたい討ち死にですから」と私。「私の場合、極端に言えば帯域的には80ヘルツから8000ヘルツぐらいでいいんじゃないかと思っています」と宮武さん。「うんうん、それはきわめて賢明です。しかし、トランペットにしてもサックスにしても管楽器の音がメチャいいですね」と私が応じると、「私はJBLが好きなのですが、モニター系のスピーカーはあまり好きになれないんです」「たしかに特に4ウェイのモニターはワイドレンジですが、まとまりが悪くて苦労しますよね」音をきかせてもらいながらこんな会話をして、宮武さんがどのような音を好んでいるのかがだいたい理解できた。

拡大表示

※EMTの930stとデノンのDP-6000という2台のレコードプレーヤーがあって、濃くて太い音のEMT、SPUも同じ傾向の筈だがデノンのターンテーブルの音なのか、SPUの方が現代的なサウンドを展開していた。


拡大表示

※レコードをかけている人ってカッコいいと思う。

 宮武さんが高校時代に好きだったというディープ・パープルをきかせていただきながら、でも今は古いジャズなんだな、面白いなあ、などと考えていたら、何故かJ-POPの話になり、宮武さんが岡山の高校生だった頃にRCサクセションがやってきてライヴを体験してものすごく感動したという話になった。さらに、ドカドカうるさいロックン・ロールバンドになる前の、フォーク・ソングをやっていた頃のRCサクセションの話題になり、ヒットした「ぼくの好きな先生」や、さらにもっと前の「2時間35分」という歌を知っている宮武さんと私なのだった。余談ですが、古井戸の「さなえちゃん」とRCサクセションの「ぼくの好きな先生」のヒットは当時も今も不思議なことが起きるものだと思う。そして、後に古井戸のチャボこと仲井戸麗市がRCサクセションに加わったのはとても興味深い。

――価値あるものは長く存在する100年後のハーランを聴きたい

 宮武さんはかつて「プラチナムのDUO」を使っていたこともあるそうだ。フィル・ジョーンズ設計のプラチナムDUOと言えば、アコースティックエナジーのAE-1やAE-2の進化形で、小型スピーカーファンの憧れだった。なるほど、そこへ行くのは若い頃からのオーディオマニアの証明か。そして近年はJBLのC38バロン(D130+075)を使い、さらにD130×2発+075のハーランと出会ったそうで、いろいろやって最後はJBL、「スピーカーの進化って何?」という道を歩んでいる。

 管球式のアンプを使ったり、マッキントッシュのアンプを使ったり、もちろん国産のアンプも試したが、現在のところアンプはJBLのSA660で落ち着いているようだった。アナログプレーヤーはEMTの930stとデノンのDP-6000があって、デノンにはトーンアームが2本付けられている。ちょっと古風なサウンドを堪能したのはEMT930stによるもので、プレーヤーとカートリッジをもう一台のデノン+SPUにすると、世界がガラッと変わったので、実はダブルスタンダード的な面も持っていて「やるなハーラン」って感じがした。私が隠し持っているロジャースのCADETIIというアンプでハーランを鳴らしてみたいものだなと思ったりした。もっと艶っぽく鳴るんじゃないかなと思う。


拡大表示

※1956年から1957年の短い期間しか作られなかったJBLハーラン、デザインも気に入ったし音も気に入って、2013年に買われたそうだ。ユニットはD130×2と075の組み合わせだ。上に追加されているのはLE175DLHだ。

 1950年代に製造されて人手に渡り、日本にやってきて今は柏市の宮武さん宅に身を寄せたハーラン、初めてお目にかかったが実に魅力的なスピーカーだ。私は長い間「残りの人生の何年間かでいいから、ハーツフィールドを思い切り鳴らしてみたい」と考えていたのだが、「それだったらハーランの方がいいかも」と思ったりした。いやいや、本気にしないでください、現実味ゼロの世迷言、ただの妄想ですから。

 カメラにしても絵画や彫刻などにしても、価値あるものは人より長く世に存在する。だから、もしかするとあと100年後もこのJBLハーランはどこかで音楽を奏でているのかも知れない。そんなことを想像してみて、それは一体どのような部屋でどんな人が選ばれて、ハーランは今日と同じように古いジャズを歌っているのだろうかと考えて、とても不思議な気分になった。


拡大表示

※CDプレーヤーはスチューダーのA730をお使いだった、「Dですか?」「いや、Aです」というやり取りで「Aですか」と納得する。

拡大表示

※真空管のアンプも試してみたが、今はJBLのSA660でいい感じに鳴っている。

拡大表示

※ジャズと酒とバラの日々を彩る必須アイテム。

[宮武修一さんの主な使用機器]
スピーカー: JBL Harlan(D130x2+LE175DLH)
プリメインアンプ: JBL SA660
アナログプレーヤー: EMT 930st
カートリッジ: トーレンス MCH-1
トーンアーム: EMT 929
フォノイコライザー: EMT 155st
アナログプレーヤー: デノン DP-6000
カートリッジ: オルトフォン SPU#1S
トーンアーム: オルトフォン RS-309D
フォノイコライザー: オルトフォン EQA-999
CDプレーヤー: スチューダー A730

山本耕司 (著)「マイオーディオ」シリーズ
Kindle版ほか、各電子書籍サイトで販売中
「マイオーディオルーム」
「マイオーディオライフ」
「マイオーディオライフ2018」
「マイオーディオライフ2020」


CDJournal audio Twitterアカウント
@CDJournal_audio


■2023年夏発売予定
『マイオーディオライフ2023』
www.cdjournal.com/Company/products
最新ニュース
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] CYPRUS オーストラリア出身のバイリンガルラッパー メロウでポップなEPをリリース[インタビュー] 橋本徹(SUBURBIA)コンパイラー人生30周年記念 ベスト・オブ・ベスト・コンピレーション
[インタビュー] マイアミ・ソウルの秘宝クラレンス・リード TKプロダクション期をコンパイル [対談]黒田大介×the Shark[インタビュー] kiki vivi lily 豪華メンバーが集結した待望のニューEP
[インタビュー] 今、最も目が離せない!ガールズ・バンドの急先鋒、THE LET[インタビュー] “沖縄の音楽”を今の視点でアーカイヴ化。5枚組ボックス・セット『沖縄の音楽 記憶と記録』
[インタビュー] 浅利史花  気鋭のジャズ・ギタリストが、伝説のギタリスト、エミリー・レムラーに捧げる新作を発表[インタビュー] 紫 日本のロックの礎を築いた沖縄のバンドが、Char、BOWWOW G2とともに伝説のライヴを再現
[インタビュー] 走り続けるtha BOSS、2作目のソロ・アルバム完成[インタビュー] KERA、還暦記念ライブ直前インタビュー(よりぬき版)
[インタビュー] illiomote 新たなモードのサウンドを詰め込んだEP[インタビュー] ピアノYouTuberみやけん 待望の3rdアルバム!
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015