米・ニューヨークにある世界三大歌劇場のひとつで、“MET”（メト）の通称で知られるメトロポリタン歌劇場のオペラ公演を映画館で上映し、史劇的な演出の数々をリーズナブルに楽しめる画期的なオペラ・エンターテインメントとして好評を博している「METライブビューイング」が、2022-23シーズンの第8作目に突入。スパイク・リー作品など多数の映画作品を手掛け、2度のアカデミー作曲賞にノミネートされた、ジャズと映画音楽の大御所テレンス・ブランチャードが手掛けた新作オペラ『チャンピオン』が、6月16日（金）〜22日（木）に全国の映画館にて公開となります（東劇のみ6月29日［木］までの2週上映）。

　本作は、ゲイであることを隠して生き、対戦相手にそのことをからかわれ、試合で相手を殺してしまった、米領ヴァージン諸島出身の実在の黒人ボクサー、エミール・グリフィスの苦悩と贖罪の人生を描いたヒューマン・ドラマです。世界ウェルター級タイトルマッチの試合前の計量時に対戦相手のライバル、ベニー・“キッド”・パレットにゲイであることを挑発されたグリフィスが、リング上でパレットを昏睡状態にさせる猛攻をしかけると、パレットが10日後に死亡。当時「パレット事件」として大きな問題となりました。グリフィスはその後も現役を続行し、多くの名勝負を展開。女性と結婚しますが、不眠症になるほど悩み苦しみ、晩年にバイセクシャルをカミングアウトして、2013年に鬼籍となりました。

　この実話に基づく感動作を、昨シーズンにニューヨークでヒットした、同じくブランチャード作曲によるオペラ『ファイアー・シャット・アップ・イン・マイ・ボーンズ』（『Fire Shut Up in My Bones』）を指揮したヤニック・ネゼ＝セガン、演出のジェイムズ・ロビンソン、振付のカミール・A.ブラウンという黄金トリオが、ジャズとオペラの奇跡の融合を再び創り上げていきます。主役には、少年院からオペラスターになった異色のバスバリトンのライアン・スピード・グリーンが抜擢され、エリック・オーウェンズやラトニア・ムーアなど現代を代表するアフロアメリカン歌手たちが集結。LGBTQ、人種問題など現代の観客の心に強く響くメッセージ性を持った最先端のテーマで描いた、新作オペラとなっています。
















©Ken Howard／Metropolitan Opera