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Lilla Flicka、「新音楽制作工房」とタッグを組んだ1stアルバムをリリース インタビュー公開

Lilla Flicka   2023/01/25 23:34掲載
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Lilla Flicka、「新音楽制作工房」とタッグを組んだ1stアルバムをリリース インタビュー公開
 ストックホルム出身のシンガー・ソングライター“Lilla Flicka”が、1stアルバム『通過儀礼 / Initiation』を1月25日(水)にリリース。

 菊地成孔主宰「新音楽制作工房」とタッグを組んだ2023年型のポップス作です。

 このたび、Lilla Flickaのインタビューが届いています。

[Lilla Flicka インタビュー]
Lilla Flicka(リッラフリッカ)、または加藤咲希の名を皆さんはご存知だろうか。Lilla Flicka名義では1月25日(水)に全国発売されるアルバム『通過儀礼/Initiation』で菊地成孔氏率いるNHKドラマそして映画『岸辺露伴は動かない』の劇伴での活躍も目覚ましい気鋭の音楽制作ギルド「新音楽制作工房」のメンバーとタッグを組みSF私小説のようなクラブサウンドを、加藤咲希名義では2021年に発売された『Anything Blue』でオリジナリティ溢れるジャズテイスト満載のアルバムをそれぞれ残している。
ジャンルに縛られることなく自由に二つの名義を駆使しユニークな音楽活動をされているLilla Flickaさん(もしくは加藤さん)に興味を持ち公式サイトでインタヴューの依頼をしたところ、しばらくしてなんとご本人から返信を頂いた。異常なまでに丁寧な文体に物書きとしてプレッシャーを覚えつつ、インタヴューの場所としてご指定下さったのは、ベローチェ伊勢佐木町店の3階だった。

平日正午のベローチェ。
初老の方々が皆恍惚の笑みでコーヒーを楽しんでいる。
これはいい。
席を見渡すと黒メガネの美女が恍惚の笑みを携え近寄ってきた。
「はじめまして、リッラフリッカです。本日はご足労頂き大変恐縮です。ではこちらへ。」
席にはコーヒーゼリーとルイボスミントティーが二人分セットされていた。遅れて伺ったことを詫びつつインタヴューをスタートした。

1. ――Lilla Flicka & 新音楽制作工房『通過儀礼/Initiation』をとても楽しく拝聴させて頂きました。2021年リリースの加藤咲希名義のアルバム『Anything Blue』はジャズテイスト満載でオリジナリティ溢れる素晴らしい作品でしたが、今回は名義が変わり一転してクラブサウンドに特化し、歌詞はSF小説を読んでいるような感覚があります。今回の『通過儀礼/Initiation』の作品制作に至った経緯はどのようなものでしょうか。

Lilla Flicka: 種明かしをすると、Lilla Flicka名義のこのアルバム『通過儀礼/Initiation』は、加藤咲希名義のデビューアルバム『Anything Blue』との双子アルバムなんです。加藤咲希とLilla Flickaがふたりでひとつなのと同じように、『Anything Blue』と『通過儀礼』もふたつでひとつ。デビューアルバムを作ることになったとき、師匠の菊地成孔さんに相談しました。元は『Anything Blue』の内容は、もっともっとマッシヴかつジャズとポップスが混ざった内容になる予定だったのです。それに対する菊地さんのアドヴァイスは、とてもよいと思うけれど、でもジャズサイドとポップサイドを分けてふたつ作ってもみてもいいんじゃないかな?というものでした。それを聞いて、とてもしっくりきて。ミクスチャーは美しいけれど、いつでも何でも全部混ぜなくてもよいですよね。私は夢見る(そして常に死と隣接している)魚座なのですが、何故だか人生には双子座が溢れています。大切なものは必ずふたつある。日本語と英語、音楽と文学、日本とスウェーデン、ジャズとポップス。師匠の菊地成孔さんも『Anything Blue』のプロデューサーであり『通過儀礼/Initiation』の原案協力者でもあるトオイダイスケさんも双子座です。そしてまず『Anything Blue』ができ上がりました。2021年の夏です。『Anything Blue』のツアーをひととおり終えると、今度は『通過儀礼/Initiation』の制作に本格的に乗り出しました。『Anything Blue』ではジャズボーカルという様式美の中でできることをやり切ったので、『通過儀礼/Initiation』では脱構築、今度は何の規制もなく自由にやってみようと思いました。誰とどういう風にコラボレーションしようかと考えたときに、いえ、嘘ですね、考えてもいない、気づいたら、菊地成孔門下生の音楽制作ギルド「新音楽制作工房」の皆が自然と周りにいました。普段から自然発生的に一緒に曲を書いたりしていたので、次にアルバムを作るなら、新音楽制作工房のクルーと一緒に制作することは、自然な流れでした。結果として、『通過儀礼/Initiation』は新音楽制作工房の全面プロデュースのもと、発売するまでに至ったわけです。だから、『Anything Blue』と『通過儀礼/Initiation』は、実質上の二枚組のデビューアルバムなんです。

2. ――Lillaさん(もしくは加藤さん)は菊地成孔氏の私塾に通っていらしたことも活動のきっかけのひとつであったことを別の取材で拝見しました。現在ジャズの活動とクラブサウンドの活動をされているのは菊地氏の活動ともリンクするところがあるかと思うのですが、今後のふたつの名義で活動していく上での展望がありましたらお聞かせ頂きたいのですが。

Lilla Flicka: そうですね、その活動を通して私にジャズの憂鬱と官能を教えて下さったのは菊地成孔さんなのは間違いないですし、私塾で師事するようになって10年以上は経っているので、影響を受けていないと言ったら嘘になりますね。薫陶を受けた、ということだと思います。あ、でも何にも指示をいただいたことはないです。私が勝手に影響を受けて自由にやっている結果が今です。というか、門下生は皆そうだと思います。菊地さんは老舗ジャズクラブでサックスを吹いても、渋谷の小箱でDJをしても、大型ロックフェスに出ても、全部いい。音楽が素晴らしいのは言わずもがな、文章も最高にクールです。彼にとってはそれが当たり前で自然なことで、ただ自分として存在していたらそうなった、ということなのでしょうけれど、そういう方が存在するということは、現代日本で音楽活動をする者にとって、祝福だと思います。当たり前に、もっとジャンル横断していい。私の音楽活動の駆動力は、自分にとってやらざるを得ないことで、つまり裏を返せば、それは自然に発生したもの、です。ジャズボーカルという研ぎ澄まされた様式美の中にしか出口がないものもあれば、逆にジャズボーカルという様式美の中では出現させることができないものもある。このふたつがあって私の歌手活動はバランスが取れているので、両方並行して続けていくと思います。ジャズボーカルとしては眠れない夜の憂鬱と官能に寄り添えるような音楽を、Lilla Flickaとしてはポップでアヴァンギャルドで目の醒めるような音楽を。両方ともライブも活発にしていきたいですね。どっちが本業なの?と訊かれることもあるのですが、例えば私が二卵性の双子を産んだとして、どちらをより愛するか、高い確率で決められないと思いますね。二人とも、恐ろしいほどに愛している、そんな感覚に近いんじゃないでしょうか。双子を産んだことないからわからないけど(笑)

3. ――Lillaさん(もしくは加藤さん)は執筆活動も今後展開していきたいとのことですが、具体的にはどのような作品を書きたいとお考えですか?

Lilla Flicka: 『通過儀礼/Initiation』の最終曲「構造的な欠陥」では自作の小説の冒頭部分を朗読しているのですが、まずはこの小説を完成させることから始めたいと思います。もう物語はできているのですが、まだ外に出していないんです。『通過儀礼/Initiation』の曲も全てそうなのですが、私小説的になると思います。本当のことと、本当の嘘だけを書きます。それは私が全ての人間は集合無意識下で繋がっていると思うからで、どんどん降りていって、自分のことを掘り下げ、突き詰めた結果、奥の奥で、初めて他と繋がることができると考えているからです。ああでも私、私小説を書いているつもりなのに、SFとか、想像力豊かな歌詞が、とか、描写していただくことがあって、私は自分の真実を書いているだけなので、私にとっての通常の世界観がもともとSFなんでしょうね。

4. ――Lillaさん(もしくは加藤さん)はジャンルを越えて様々な音楽から影響を受けていらしゃるように見受けられます。ご自分を形成したアルバム10作を最後に教えて頂けますでしょうか。

Lilla Flicka:
Lauryn Hill 『Miseducation of Lauryn Hill』
D'Angelo『Brown Sugar』
Kanye West『The College Dropout』
Saul Williams 『Saul Williams』
Björk 『Post』
Hole 『Live Through This』
Duke Ellington 『The Ellington Suites』
Billie Holiday 『The Complete Decca Sessions』
Brigitte Fontaine Avec Art Ensemble Of Chicago『Comme À La Radio』
Nina Simone 『Little Girl Blue』
CSS『Cansei de Ser Sexy』
(Lillaさん...11作ありますがそのまま掲載)

Lillaさんはひとつひとつの質問にハキハキと明晰かつナチュラルに答えて下さる。天然なお人柄なのだが不思議と気骨ある強さも兼ね備えている。ベローチェの中で彼女だけ時空が違っていた。インタヴュー中、彼女の横に並ぶ巨大なバッグがパンパンに詰まっていて、その入り口から沢山の本の背表紙が見えてとても気になった。サガンに漱石にキューライス。大変な読書家なのだろう。彼女のもつバイタリティ溢れる行動力が今後の音楽シーンにさらに新たな話題をもたらしてくれることは容易に想像できる。

リッラフリッカ、そして加藤咲希。
今後目を離せない存在になった。


(インタビュワー: 猿渡剛)

Lilla Flicka official site
lillaflicka222.wixsite.com/official
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