映画「モルエラニの霧の中」が、3月21日(土)より東京・神田神保町 岩波ホールほかにて全国順次ロードショー。公開に先駆け、予告編とポスター・ヴィジュアルが公開されています。
本作は実話を元に、その場所で、時にはエピソードに登場する本人も出演しながら撮影された“街の自画像”のような映画。移り変わる時代の中、地方都市に生きる人々の姿が、優しく慈しむような眼差しで紡がれていきます。「ここに生きる人々の息づかいを映画に残したい。そして、この街を知ってほしい」との監督の強い願いに、街の人たちが結集して製作されました。タイトルの“モルエラニ”とは、北海道の先住民族であるアイヌの言葉。“小さな坂道をおりた所”という意味で、室蘭の語源のひとつと言われています。
監督・脚本・音楽を務めたのは、2011年に東京から北海道室蘭市へ移住した映画作家、
坪川拓史。街で出会った人々から聞いたエピソードを元に“七話連作形式”の脚本を執筆。2014年、市民有志が映画製作応援団を結成し、資金を集め始め、同年、クランクイン。度重なる撮影中断を乗り越え、2018年10月に全編の撮影が終了。映画製作には街の人々(のべ1,000人)が協力し、5年の年月を経て純度100%の室蘭発の映画として完成を果たしました。
メインキャストには、2018年に急逝した
大杉 漣、
香川京子、
小松政夫、
大塚寧々、
水橋研二、
菜葉菜、
中島広稀、
草野康太、
久保田紗友、そして独演劇が国内外で高い評価を得る
坂本長利など、演技派で多彩な俳優陣が揃いました。そのほか、キャストの半数がオーディションで選ばれたり、街で監督にスカウトされた演技経験のまったくない人々も出演しています。撮影は室蘭の印象的なロケーションのなかで行われ、美しい風景が映し出されているものの、過ぎ去る年月のなかですでに壊された建物も多いという。坪川監督が撮影当時を振り返り、大杉が室蘭を離れる日にスタッフたちに向けて「映画づくりは同じ船にみんなで乗ること。モルエラニ号という船の乗組員になれて嬉しい。この映画もきっといつかすてきな港に着くと思う」と話してくれたことを明かしています。
このたび公開されたポスター・ヴィジュアルは、霧が立ち込める室蘭の街と、本作の映像美の象徴ともいえる水上で踊るバレリーナの姿を使用。室蘭は工業地帯としても知られているが、霧がたちこめる街の画はどこか幻想的で、その一面を美しく切り取っている坪川監督の世界観を表現したヴィジュアルとなっています。また、予告編では七つの章の印象深いシーンが切り取られています。「失われていく街の記憶」を紡ぐように、また前を向いて歩いていこうという決意のように、各章の人物たちの後ろ姿の映像がとても印象的。そして、予告全篇に流れる歌「静かな空」は、シンガー・ソングライターの
穂高亜希子が歌う楽曲。監督自身、以前より交流があった彼女の歌に惚れ込み、いつかこの歌を効果的に使う映画を撮りたいと思わせた歌。透き通った涼やかで優しい声が予告編のポイントになっています。
映画「モルエラニの霧の中」予告編 from moruerani on Vimeo.
©室蘭映画製作応援団2020
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「モルエラニの霧の中」2020年3月21日(土)より東京 神田神保町 岩波ホールほか全国順次ロードショー
moruerani.com配給: ティー・アーティスト