リサーチ

“やおや”こと、TR-808とは?

2006/12/08掲載
はてなブックマークに追加
通称=やおや。そんな名称で有名なローランド製のリズムマシン、TR-808。現在でもその人気は高く、ユーザーが絶えない存在。808ステイトのようにバンド名にしてしまう人もいるほどに魅了するこのTR-808とは!?
 TR-808はローランドで80年代初頭から83年に製造されていたリズムマシンで、発売当時の価格は15万円。黒の外観につまみがたくさんついたそのデザインは、いまで言うところのレトロ・フューチャーな感じで、このTR-808はいまだに愛され続ける名機のひとつです。(写真は808ステイト『Outpost Transmision』

 それまでのリズムマシンはというと、プリセットで組まれていたリズムを鳴らすなどして使うものがほとんど。木箱のようなものも多く、大きさの面でも融通のきかない点がありました(もちろんコンパクトなリズムマシンも存在していました)。たとえば、BOSS(ローランド社の別ブランド)から発売されていたDR-55というコンパクトなリズムボックスは、リズムのプログラミングが可能な機種でした(しかも、値段は19800円!)。ロータリースイッチによってパターンを選択し、16分音符のボタンと、16分休符のボタンを押しながらリズムを組み立てていくのです(4つ打ちを作る場合は、まず音符ボタンを1度押し、休符ボタンを3度押す)。といっても、音色はハイハット、スネア、バスドラ、リムの4音色しかなく、ハイハットはプログラミングができずにプリセットを選ぶのみ。入力もステップ入力のみで、自動でパターンを選んで1曲をプログラムして演奏することができないなど、足りない点も多かったのです。この時期はあくまでリズムマシン=プレイ専用という考えだったのです。




 そんな中登場した、このTR-808は横に並んだ16個のボタンのひとつひとつを、16部音符としてリズムを打ち込めた画期的な代物でした(重さは5キロありましたが……)。各音色をロータリースイッチで鳴らし、鳴らしたい拍の所のランプを点灯させる。それによってランプの点灯した位置で音が鳴るようにプログラミングができるのです。そうやって作ったリズム・パターンの順番を記憶させ、曲のリズムを組み立て、ひとつの楽曲を構成していくわけです。また、パターンはコピーすることができ、リズムの修正作業も難しくはなく、細かいフレーズも作り上げることが可能でした。ちなみに1トラックあたり64小節まで記憶が可能。全12トラック仕様だったので、最大で768小節にわたるリズム・トラックの作成が可能でした(記憶、再生ともに64トラックを超えた場合は自動的に次のトラックへ移行)。プログラミング方法は、ステップ入力とタッピング入力(リアルタイム入力)の2種類があり、現在のリズムマシンの礎を築いた機種なのかもしれません。

 また、このTR-808はさまざまなツマミやスイッチで音の調整ができたのも大きな特徴でした。皮の張り具合の調整、スネアのスナッピーの調整、音の響き具合の調節。さらにはリズムの速さを調整(そして、その微調整も可能!)。そのほかにも音色を独立させてミキサーなどに送るためのパラアウトも供えており、それによってスネアの音のみにエフェクトをかける、バスドラのみを強調するなどの音作りが可能でした(ただしパラアウトした音色はマスターアウトから出力はされず)。このような細かい音色作りができるというのもやはり人気の要因でした。ただ、このころはまだmidi規格が統一されていなかったこともあり、同期はDIN Syncのみでした。




 その後、TR-909やTR-707など後続機が次々発売されましたが、TR-808の人気は衰えることはありませんでした。先に挙げたことがその理由であるのはもちろんでしたが、ハンドクラップの音色にもその要因があったと思われます。当時のリズムマシンの中でも、パーカッションの音色が充実していたTR-808(のちにパーカッション音色がメインのTR-727も発売)のハンドクラップは、他社で真似され発売されたほどの人気の音色でした。しかし、TR-808の廉価モデルとして発売されユーザーの期待を集めたTR-606(値段は49800円)には、ハンドクラップの音色が入っておらず、結果、ハンドクラップならTR-808という図式が生まれ、多くのユーザーの支持を新たに集めることになったのです。

 DTMなどが広がり始めるとソフトウェアとしてTR-808をシミュレーションしたものも登場。Propellerheadの「Rebirth」が有名どころ。これはTR-808をはじめ、TR-909、TB-303をシミュレートしたソフト。他にはStudio Electronicsによってラックマウント化・MIDI対応したHarvey 808なども有名です。もちろん、ローランドの音源モジュールSCシリーズやSDシリーズなどにもTR-808の音色は完備されていました(しかし、808ユーザーによると、同じローランドから発売されても音色は微妙に違うそうです。回路の問題なのでしょうか?)

 初期ヒップホップや90年代のアシッド・ハウスなんて呼ばれていた音楽で人気を博したTR-808。その音がどんなものか、それを知りたい人には以下の曲などをご紹介。

クラフトワーク「ミュージック・ノン・ストップ」
(アルバム『エレクトリック・カフェ』収録)

デペッシュ・モード「ミーニング・オブ・ラヴ」
(アルバム『ア・ブロークン・フレーム』収録)

ソフト・セル『エロティック・キャバレー〜汚れなき愛』

マーヴィン・ゲイ『ミッドナイト・ラヴ』

■Rebirthのサイト:http://www.rebirthmuseum.com/
※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[特集] 映像配信サービス「dTV」に新ジャンル「ライブ」が誕生、ひと味違うライブ体験ができるその魅力[特集] ジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス』 一新されたアルバムと驚きの貴重音源を収める50周年記念盤の聴きどころ
[インタビュー] 新作アルバムは、ずっと愛奏している作品で構成したオール・ショパン・プログラム、小林愛実[特集] 「Sony Park展」第3弾「ファイナンスは、詩だ。」 東京スカパラダイスオーケストラインタビュー
[インタビュー] 活動10周年にして集大成さくら学院ラスト・インタビュー[インタビュー] チャレンジ精神に歌とダンスでエールを送る 新曲は『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』主題歌、BOYS AND MEN
[特集] Sony Park展「音楽は旅だ」「カンタビレIN THE PARK」レポート 奥田民生[特集] クラウン時代のラスト・アルバム(鈴木茂コスモス’51リミックス発売記念ライブ)白熱のライヴ・レポート、鈴木茂
[インタビュー] 千住真理子、音楽は時空を超えて旅をする 新作はヴァイオリンで歌う世界のメロディ[インタビュー] ユーミン、じゃがたら、『みんなのうた』…、新作は原曲と違う風景が見えるカヴァー集 KERA
[インタビュー] 宮本笑里×DAITA 恐竜科学博の壮大なテーマ曲で実現した、異なる弦楽器のコラボレーション[インタビュー] 架空の映画のサウンドトラックというコンセプト・アルバムを発表したKaede
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015