■LEENALCHI(イナルチ) 「Tiger is Coming」「Bird」 踊れるロックで要注目なのが、2023の初来日から今年のフジロックまで毎年来日しているLEENALCHI(イナルチ)。男女の歌い手たちと2人のベース、ドラムという異色の編成で、韓国の口承伝統芸能“パンソリ”をディスコやニューウェイヴで再解釈したようなユニークなサウンドを展開します。パンソリの演目「水宮歌(スクンガ)」を題材にした2020年の1stアルバム『SUGUNGGA』は、第18回韓国大衆音楽賞で3部門を受賞。欧米でも評価の高い本アルバムのキラー・チューン「Tiger is Coming」は、LCDサウンドシステムを彷彿とさせるミニマルなディスコ・ビートと歯切れの良い歌唱のからみでダンスフロアとの相性も抜群。鳥の鳴き声のような独特の発声で幕開ける、ドラマ『ジョンニョン:スター誕生を視聴』のサントラ「Bird」も中毒的で、それらで語られている物語とともに楽しんでほしいところです。
■WINDY CITY(ウィンディ・シティ) 「Love Supreme」「SI JANG E GAJA」 2000年代初頭に活動したファンク・バンド“ASOTO UNION”を前身に2004年に結成されたレゲエ・バンド。2005年のデビュー・アルバム『Love Record』は、Keycoや犬式も参加した日本語リミックス盤もリリースされました。収録曲「Love Supreme」はスウィートなラヴァーズロックの名曲です。2024年は〈橋の下世界音楽祭〉に出演し内田直之をミキシングに迎えたジャパン・ツアーも開催、今年も“盆踊り”をフィーチャーした〈橋の下大盆踊り SOUL BEAT ASIA 2025〉にトリオ編成で出演するなど、日本での根強い人気を感じます。エイドリアン・シャーウッドのミックスで、8月20日に7インチがリリースされたばかりのアフロファンク名曲「SI JANG E GAJA」も必聴。
■Roots Redeem(ルーツ・リディーム) 「Open the Door」「Roots to the Soul」 同じく昨年の〈橋の下世界音楽祭〉に続き、今年も〈橋の下大盆踊り〉に出演し、オーディエンスを踊り狂わせた韓国東海岸拠点のシャーマン・トランスバンド。韓国の伝統音楽とシャーマン音楽を融合させた人力トランスグルーヴは圧巻。まずは2024年にリリースされたライヴ・アルバム『Turning point』よりライヴで良く演奏される「Open the Door」、上昇感抜群の「Roots to the Soul」を聴いてブッ飛ばされてください。
■KIM OKI(キム・オキ) 「shine like sunlight」「月がきれいだね」 ジャズ系で注目なのは、今年のフジロック2日目の夕暮れ時に、折坂悠太をゲスト・ヴォーカルに迎えたステージで観客を魅了した鬼才サックス奏者のキム・オキ。ファラオ・サンダースへの敬愛を公言している通り、そのスピリチュアルでエモーショナルなブロウには魂がふるえます。2023年の初来日を記念してリリースされた日本独占の編集盤『Love Japan Edition』より代表曲「shine like sunlight」、そして2025年にリリースされた最新アルバム『Hip Hop Retreat』より折坂悠太をフィーチャーした美しい日本語曲「月がきれいだね」は必聴。そして、ファラオ直系のスピリチュアルなサウンドに、Joh Ungのヴォーカルを重ねた2021年作『Everytime』収録の「Above the clouds」も微睡むような心地よさに包まれます。
■SE SO NEON 「A Long Dream」「The Wave」「Remember!」 プロデューサー / マルチ奏者のファン・ソユン率いるロック・バンド。生前の坂本龍一が、まだ無名だったSE SO NEONのライヴをTVで見て、「彼女はすばらしい才能がある」とライヴに足を運んだという逸話を持ち、ソロ・プロジェクト“So!YoON!”でも活躍、一方Levi’sをはじめとするブランドモデルもこなすなど、カリスマティックなファン・ソユンの才能は世界で注目を浴びています。KIRINJIとのコラボ曲「ほのめかし feat. SE SO NEON」(KIRINJIの2023年作『Steppin’ Out』収録)や細野晴臣『HOSONO HOUSE COVER』での「パーティー」のカヴァーもよく話題に上りますが、まず最初に聴くべきは、その後の活躍の幕開けとも言える2017年のデビュー・シングル「A Long Dream」と同年のシングル「The Wave」。特に「The Wave」は、硬質でリズミカルなロック・サウンドにのせた、彼女の歌唱の表現力に痺れます。8月15日にはニュー・アルバム『NOW』をリリースしたばかり。坂本との別れからインスピレーションを得た「Remember!」も収録されています。
■NIGHT TEMPO 「F・L・Y」 “プラスティック・ラブ”現象を巻き起こしたシティ・ポップ・ブームの火付け役のDJ。斉藤由貴やWink、BaBeらを取り上げた昭和ポップスのリミックス集『ザ・昭和アイドル・グルーヴ』は衝撃でした。野宮真貴をフィーチャーし、90年代東京を感じさせるハウス・ミュージックに仕上げた「New Romantic」など、日本の女性歌手を次々と起用したオリジナル曲も彼の憧憬が炸裂していますが、海外で大バズりしたスペクトラム「F・L・Y」の『昭和グルーヴ』リミックス第20弾はあらゆる世代に新鮮な感動をもたらすでしょう。
■Grizzly(グリズリー) 「Even if we fight, can you just remember this?」 CHUNG HAのデビュー曲「Week」やNCT DREAMの「ANL」など、数々のK-POP楽曲に携わる一方、“癒し系シンガー・ソングライター”として絶大な人気を誇るアーティスト。9月には初の単独公演を控えますが、そのティザーに使われている、2022年のアルバム『Flower Shop2』収録の「Even if we fight, can you just remember this?」は、優しく包み込んでくれるようなその歌詞にキュン死する女性も続出しそう。
全22アーティスト、リサーチしてみましたが、まだまだ紹介しきれないほど。11月のSE SO NEONの来日公演をはじめ、今後も続々と来日が予想される韓国アーティスト。〈橋の下世界音楽祭〉や〈BiKN〉などの毎年アジアのアーティストを紹介しているイベントもあるので、ぜひお気に入りのアーティストを見つけてみてください。