先日、リサーチした“ヘブンアーティスト”。その紹介記事でも予告したとおり、9月3日〜5日の3日間に東京都庁で行なわれた第7回ヘブンアーティスト公開審査会に行き、毎年、音楽部門の審査員をつとめている音楽評論家の萩原健太さん、ミュージシャンの近田春夫さんに話を訊いてきました。審査会レポートと一緒にお楽しみください!
<第7回ヘブンアーティスト公開審査会レポート> 小雨が降る中、東京都庁を訪れたことのある人ならば一度は通ったことがあるであろう、都民広場近くの、半地下のような構造になっている屋根のあるスペースで行なわれた第7回ヘブンアーティスト公開審査会の音楽部門。結婚式の高砂のような審査員席があって、その眼前でパフォーマンスが行なわれるのではないかと想像していましたが、実際はストリート・パフォーマンスにふさわしく催しを知らない通行者たちも行きかう空間で、二つの会場を観客も審査員もがパフォーマンスのあいまをぬって、両会場を移動する形式で行なわれていました。
今年の審査にあたって、音楽部門の応募者は137組。審査員をつとめる萩原健太さんと
近田春夫さんが実際に聴いて判断するというテープでの第一次選考などを経て、この公開審査に参加できたパフォーマーは33組。この審査会に参加するだけでも、実は大変なことなのだとか。取材に訪れたタイミングで実際にパフォーマンスを観ることが出来たアーティストは4組で、幸運にもそのうち2組が選考を通過、ライセンスを手にしたそうです。ちなみに、この審査会で見事にライセンスを手にしたアーティストはたったの12組とのことです。
<Natsu&Kayo マリンバ演奏>
セッティングされたマリンバの前にはキュートな女性プレイヤーが2人。どうやらマリンバを連弾するよう。Natsu&Kayoは高波奈津さんと田村佳代子さんによるデュオで、10月29日にはオペラシティでのランチタイム・コンサートに出演する予定もあるとのこと。オリジナルはクラシック曲なのかな? と思わせる曲をラテン・フレイバーたっぷりに、パワフルに連弾する姿は迫力満点! ダイナミックなバチさばきと、繊細でありながら軽快なマリンバの音色が楽しめるパフォーマンスでした。
<ジャズドラマー中村達也「パーカッション・ブラザーズ」>
まるで船のような形をした、パーカッションと、スチールドラムがくっついたような形の楽器とともに登場したのは、
高柳昌行グループに参加した経歴や渡米し、海外でも多くの著名ジャズ・マンとセッション経験があるというジャズ・ドラマーの
中村達也さん。船のような楽器は、セネガルの楽器でバラフォンというものだとか。そこにスチールドラムを一体化したという中村さんオリジナルの楽器でのパフォーマンスが披露されました。当然、多数のライヴ経験があるパフォーマーなので、合間のMCも見事! あまりなじみのない民族楽器を主体とした演奏でしたが、審査会が行なわれていることを知らない通行人も多く足を止める、楽しいひとときでした。
■ジャズドラマー中村達也HP
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Music/ <音楽部門審査員・萩原健太と近田春夫が語る、ヘブンアーティスト審査とは>----ヘブンアーティストを審査するにあたって、どんなアーティストが登場することを期待されて、審査にのぞんでいらっしゃいますか?
萩原 CDをリリースして、なんとかしようというタイプのアーティストではなく、野外の知らない人が通ってるところで、通り過ぎていく人の足をとめようという志をもった人と出会いたいな、と。そういう部分を楽しみにしています。
近田 ぼくはあんまり期待はしていないんだけれども(笑)。生の音楽が自然に鳴っている都市っていうのはゆとりがあると思うので、そういう街にしたいと思って演奏してる人たち……この街もなかなか捨てたもんじゃないと感じられる人たちを選びたいと思っています。
----審査を受ける側は、ロックっぽい、いわゆるストリート・ミュージシャンが少なくて、ワールド・ミュージック寄りの方々が多いように感じましたが?
萩原 第一にその場ですぐ音が出せて、屋外で演奏する必要が感じられるアーティストを、テープ審査で絞り込んでいます。
近田 エレキはうるさいから……基本的にはアンプラグドのアーティスト。
萩原 そういったロック寄りのアーティストからも応募はありますが、ちょっと違うな、と。この審査員をやっていることで、プロのミュージシャンからも音楽を演奏することにライセンスが必要だなんて……と指摘を受けることもありますけどね。
近田 いわゆるロック系のアーティストがこの手のイベントに出るのは、プロモーションの一環で、という印象も強いのでね。そもそも、そういう音楽をストリート・ライヴでしたいならゲリラでやるべきじゃないかな。
萩原 ロックなら、ライセンスもらってやろうっていう時点でロックじゃないし。だから、生で魅力的な音が出せる楽器を演奏する方が中心になっています。
近田 でも基本的には音楽ジャンルで選んでいるのではなく、そのアーティストのアプローチをもとに判断しています。スケベ根性がない人たちがいいな、と。
萩原 あと、パフォーマンス部門は音が無いからいいんですけど、音楽部門は音が鳴っちゃうからね。観ようと思っていない人にも音は届いてしまうので、ある程度のレベルを確保していかないと。音楽部門はそういう意味では厳しいです。
近田 騒音にならない程度の演奏レベルは最低限守りたい。そのアーティストが立っているだけで、味があるという方も確かにいるんですが、出ている音がお粗末だったら通すわけにはいかないな、と。審査員をはじめた最初のうちは、どれくらいの水準で選んでいいのかわからなかったところもあったんですが、この数年、審査員である自分たちの基準が固まって、合格ラインが出来てきた。そういう意味で審査は厳しくなってきたかもしれません。
----では、去年と比較して、今年の参加者たちはいかがですか?
近田 今年は流行の楽器がないね。毎年必ずあるんだけど。最近だったら二胡とか……
萩原 ウクレレとか。そのときの流行の楽器があるんですよ。 昔は珍しい楽器を持ってるだけで“主張”にもなった部分もあるけれど、過去にそういうタイプの方で合格することもあったけれど、もう、楽器の珍しさだけでは通らないですね。
95組のパフォーマーとミュージシャンが上野恩賜公園を舞台にお届けする、夢の大道芸フェスティバル“ヘブンアーティストTOKYO”が10月26日、27日、28日の3日間行なわれます。各日、予定プログラムの終了後に、出演アーティストによる“ナイトカーニバル”も予定されているとのこと。せひ足を運んでみては?
「ヘブンアーティストTOKYO」
10月26日(金)〜28日(日) 12:00〜18:00
会場:上野恩賜公園/東京都美術館
プログラム・会場地図などの詳細情報はこちらでご確認を!
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/bunka/heavenartist/ ※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。