【CDJournal.com 10th 特別企画】“10周年”をキーワードに読み解く クラシカル・クロスオーヴァー発展史

サラ・ブライトマン   2010/06/23掲載
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 「CDJournal.com10周年特別企画を各ジャンルで考えるように!」との指令を受けて、クラシック界の10年に思いをはせると、やはりクロスオーヴァーの話題なくしては語れないと思い至りました。折りしも、デビュー10周年を迎えるアーティストが数多くいるうえに、今年は『image』の10周年でもあります。

 柔軟な発想でクラシック界に新風を起こしたクロスオーヴァー。その発展と深化の軌跡を振り返ってみましょう。



デビュー10周年を迎えるアーティストたち

 1996年にサラ・ブライトマンアンドレア・ボチェッリによる熱きデュエット「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」が大ブレイクしたのをきっかけに、世界の音楽シーンの先頭に躍り出てきたクラシカル・クロスオーヴァー。日本でもその後、サントリーローヤル12年のCM曲に起用されたヨーヨー・マによる「リベルタンゴ」の大ヒットや、『feel』『image』といったリラクシング系コンピの成功を経て、次第にクラシック・シーンの主流の一つになっていく。

 とりわけ、デビュー間もない若いアーティストたちは、いい意味でその波に乗りつつ、クラシックの枠だけにとらわれない柔軟な感性で、それぞれに音楽的な成長を遂げてきたのではないだろうか。

 そう考えると、2000年前後にデビューし、ここ1〜2年の間に“10周年”を迎えるアーティストたちが日本のクラシック界に数多くいることも、偶然の一致ではないように思われる。


大萩康司
 90年代後半に生まれたクラシカル・クロスオーヴァーは、2000年代にすっかり定着し、オリジナリティに満ちた成熟・発展を見せてきた。そのシーンを作り上げた“デビュー10年組”の活動の軌跡を振り返ってみよう。

 まずは新世代のクラシック・ギタリストたち。キューバのハバナ国際ギター・コンクールに入賞し、現代の中南米系作曲家との親交も厚い大萩康司や、ロサンジェルス・ギター・カルテットのメンバーだったアンドリュー・ヨークとのコラボや“live image”での活躍も記憶に新しい木村大は、クラシックをベースに、きわめてワールド・ミュージック的なフィールドにまで自由にレパートリーを広げ、人気を博していった。


川井郁子
 ヴァイオリニストに目を転じてみれば、情熱と官能、ラテンのテイストに彩られた衝撃作『The Red Violin』でデビューを果たした川井郁子や、『川の流れのように〜美空ひばり・オン・ヴァイオリン』に始まり、日本の叙情歌からシャンソン、五木ひろしまで、さまざまな“唄”をカヴァーする作品を発表して話題を集めた幸田聡子(現・幸田さと子)のように、当初からクロスオーヴァーを前面に打ち出しつつ、活動を続けてきたアーティストもいる。さらに現在ではコアなクラシック・ファンに高く支持されている吉田恭子も、デビュー作がビートルズ・ナンバーのカヴァー集だったことを思い出してみると大変興味深い。


上松美香
 また、今年エイベックス・クラシックスから通算10枚目のオリジナル・アルバムをリリースしたばかりの実力派フルート奏者、高木綾子もコロムビア時代にはユーミンカーペンターズのカヴァーからボサ・ノヴァまで、幅広いテイストの作品で高い評価とセールス実績を残している。

 ユニークなのは南米パラグアイの伝統楽器、アルパの奏者である上松美香。もともとはフォルクローレで用いられる民族ハープだが、彼女はアルパのためのオリジナル楽曲からクラシック・ギターの名曲、アニメ・ソングのカヴァー、ラテンと自在にジャンルの垣根を超えて、この楽器の魅力を一気にポピュラーなものとした。


藤原道山
 一方で、日本の伝統的な楽器の世界にも、二人の天才プレイヤーが登場した。一人は10歳から尺八を始め、人間国宝である山本邦山に師事した藤原道山。ソロ以外にも、異色ユニット“KOBUDO-古武道-”への参加や、坂本龍一ケニー・Gウィーン・フィルのメンバーによるスペシャル・アンサンブルなどと積極的にコラボを行なってきた。

 もう一人は、幼少より数々の津軽三味線大会で優勝を重ねていたという上妻宏光。彼もジャズやロックとのセッションで注目を集め、マーカス・ミラーハービー・ハンコックら海外アーティストとの共演も多い。二人とも純邦楽の感性を大切にしつつ、独自のアプローチで常に革新を追求する姿勢が高く評価されているのは言うまでもない。

 以上、思いつくままに駆け足でピックアップしてみたが、クラシカル・クロスオーヴァー・シーンの未来とともに、彼らの次の10年に向けての動向から目が離せない。

文:東端哲也




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