時代と社会に迅速に呼応し、揺るぎない信念と祈りを持つ
豊田利晃監督が、
窪塚洋介×
松田龍平をダブル主演に迎えて放つ最新作『次元を超える』。エンディング・テーマに
The Birthday「
抱きしめたい」が起用されたことも話題を呼ぶ中、10月17日(金)からの映画公開に先駆けて、豊田監督が自ら編集した同曲の映画版ショートPVが公開されました。
『
泣き虫しょったんの奇跡』以来、7年ぶりの長編フィクション作品となる本作は、『狼煙が呼ぶ』『破壊の日』『全員切腹』『生きている。』と、近年公開してきた「狼蘇山シリーズ」の集大成。危険な宗教家・阿闍梨(
千原ジュニア)の家で消息を絶った、孤高の修行者・山中狼介(窪塚洋介)を、彼女・野々花(
芋生悠)からの依頼で謎の暗殺者・新野風(松田龍平)が行方を追います。やがて狼蘇山で対面し2人は、次元を超えて鏡の洞窟で対峙することに。過去から現在、そして未来を駆け巡り、日本から地球、さらに宇宙に辿り着いた、彼らが見たものとは……?豊田監督が、混沌の時代に挑み、到達した新境地に想像が掻き立てられます。
窪塚洋介と松田龍平は、『破壊の日』以来、5年ぶりの共演。そして脇を固めるキャスト陣は、千原ジュニア、芋生悠、
渋川清彦、
東出昌大のほか、
板尾創路、
祷キララ、
窪塚愛流、飯田団紅、
マメ山田と、豊田組を代表する常連たちが集結。また、音楽にはMars89、中込健太(
鼓童)、住吉佑太(鼓童)、
ヤマジカズヒデと、これまで豊田映画の音楽を手掛けてきた面々も参加しています。
そしてエンディングを飾るのは、『
I'M FLASH!』(2012)以来、13年ぶりのコラボレーションとなる
チバユウスケのThe Birthday「抱きしめたい」。The Birthdayは、ギター・ヴォーカルのチバユウスケが率いる2005年に結成されたロック・バンド。ブルース・ロックやガレージにルーツを持つ、荒々しく本格的なロックンロールと、精力的なライヴ活動で多くの音楽ファンの心を掴み、2023年にチバユウスケが永眠した後も、日本のロックの象徴として君臨し続けています。
「抱きしめたい」は、2017年にリリースされたシングル曲で、ライヴでも演奏され続ける定番曲。チバユウスケの魂のこもった歌声と、「愛」と「闘い」を融合させた詞世界が凝縮されている楽曲で、力強くも切実なラヴ・ソングとしてのメッセージ性が高く評価されています。
公開された「抱きしめたい」の映画版ショートPVは何と3本仕立て。まず、「抱きしめたい」のイントロに合わせた〈阿闍梨と葉巻編〉。葉巻をくわえて縁側に佇む危険な宗教家・阿闍梨の姿から始まるその映像は、阿闍梨の表情が次第にアップになっていく中で、修行者・山中狼介が手を合わせて祈る姿や、阿闍梨をじっと見つめる暗殺者・新野風をはじめ、狼介の彼女・野々花、田舎の不良・鉄平(渋川清彦)、阿闍梨の信者・ヤス(東出昌大)、最先端の研究者・高嶋博士(板尾創路)と渡邊助手(祷キララ)など、物語を彩る主要キャラクターのカットが次々と差し込まれます。怪しげで不敵な笑みを浮かべる阿闍梨のドアップで幕を閉じると思いきや、最後に2022年12月に中野サンプラザで行なわれたライブ映像が挟み込まれるという、まさに『次元を越える』のキャラクターとThe birthdayのロックンロールがシンクロした映像となっています。
次に、「抱きしめたい」の1番サビに乗せて展開するのが〈狼介と新野編〉。サビの高まりに合わせて、修行者・狼介が降りしきる雨の山道を歩む姿が映し出されるとともに、血まみれになりながら呆然と歩む暗殺者・新野の姿が重なるなど、2人のキャラクターが対比して描かれ、やがてThe Birthdayのライヴ映像へと切り替わり、ステージ上で歌うチバユウスケの熱気とエネルギーが、窪塚洋介と松田龍平の本編映像と共鳴する仕上がりに。
最後に、3番Aメロに乗せて展開するのが〈地球と宇宙編〉。「SF映画 / 地球は / 助かった / 今頃エイリアン」という歌詞に合わせて宇宙空間に浮かぶ地球の映像が映し出され、地球から回転しながら離れていくという壮大なスケール感のある世界観が広がっていくなか、「どこへ行って」とステージ上でチバユウスケが優しく歌い上げるライヴ映像が挿入され、SF的な映像と歌詞がダイレクトに交錯するヴァージョンとなっています。
過去、豊田監督が手掛けた『
青い春』(2001)では
ミッシェル・ガン・エレファントの「ドロップ」をエンディング・テーマに、『I'M FLASH!』ではI'M FLASH! BAND(チバユウスケ、
中村達也、ヤマジカズヒデ、
KenKen)の「I'M FLASH!」(
シーナ&ザ・ロケッツ>鮎川誠のカヴァー)を主題歌に使ったりと、長年にわたりチバユウスケとタッグを組んできた豊田監督。今回、監督がThe Birthdayの曲を全部聴き直して、エンディグ・テーマに「抱きしめたい」を選んだとのことです。
監督は「いざ『次元を超える』ができあがった時、〈抱きしめたい〉を映画の最後に流してみると、僕自身、すごく腑に落ちて。映画が語り切れていないところまで、この曲が語ってくれている気がしたんです。特にサビの『俺は決めたんだ/あのクズ共から世界を奪い返すって/それで青に還すんだ/その後でお前を根こそぎ抱きしめてやる』ってラインですね。『次元を超える』という映画にとって最も重要な、でもあまり巧く込めることができなかった“愛”の要素を、チバくんが代わりに歌ってくれている気がしました」と、エンディグ・テーマに込めた熱い思いを語っています。
©次元超越体/DIMENSIONS