沖縄の音楽家、
コージュンこと國場幸順(こくば こうじゅん)が、1993年に自主盤で発表した、すがすがしさと不思議さ、楽しさと色気をたたえた琉球電子サロンミュージック作『水中庭園』。今回、その30周年を記念し初LP化が決定。ボーナス曲を追加収録して、8月18日(金)にリリースされます。
コージュンこと國場孝順は、80年代、
坂本龍一のレーベルメイトとして
ビル・ラズウェルのプロデュースでデビューする予定だった幻のバンド“六人組”を作った沖縄の音楽家。「裏方のコージュン」とも呼ばれ、エイベックスや東芝EMIでもソロ作品をリリースしてはいるものの、表舞台に出てくることは少なく、TVやラジオ、イベントやファッションショー(東京コレクションなど)の音楽を制作してきた皆が信頼を寄せてきた職業音楽家でもあります。
『水中庭園』は、六人組のオリジナル構想を母体に、國場の1stソロとして自主盤CDで発表された作品。琉球王朝交易時代に着想をえた“平和なアジア”をイメージしたBGMを作ろうと制作着手されたものの、予期せぬコンサート・バンド結成(のちの六人組)のために制作は中断。その後、バンドは消滅、プロジェクトも白紙となりましたが、彼は機会を待ち1993年に本作を完成させました。
沖縄をルーツとしながら広くアジアの音楽にも影響されており、アジア各地の伝統的音階に由来するフレーズを重ね、改変し、典型的な西洋の和音ハーモニーの動きを排除したサウンドが大きな特徴。電子楽器とマルチトラックを使い、彼いわく「線を積み重ねる」ようなメロディの集積の実験は、沖縄からアジア世界へ向け新しいエネルギーの拡散を目指したかのようです。
また、シンセとドラムマシンを駆使して心地よく特徴的なリズムを刻んでいますが、それはダンスフロアのためではなく、テクノロジーを駆使した「BGM=軽音楽」としての電子サロンミュージックをイメージしているとのこと。ワールドミュージックという方法論が勢いをもっていた時期、
ネーネーズや
りんけんバンドが牽引し象徴したような(特に沖縄から)新しいアジアの音楽を発信しようという熱量を持つ一方、そもそも器楽曲で「BGM」を作ろうとしたという無記名性的な側面があり、それがワールドミュージックにもアンビエントにも回収され得ないユニークなローカル・ミュージックとして魅力を放つ所以となっています。