6月12日にベルリン・フィル・デビューを果たした、指揮者の
山田和樹が、
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団と録音した新作アルバム『はじめての交響曲〜サン=サーンス:交響曲 イ長調、ビゼー:交響曲 ハ長調、グノー:交響曲第1番 ニ長調』を8月8日(金)に発表します。3人の作曲家が手がけた、はじめての交響曲を収録。
サン=サーンスのイ長調は、パリ音楽院在学中の1850年に作曲家が初めて完成させた交響曲。あくまで習作という意味合いが強く、まだ過去の巨匠の影響下にあり未熟さが残る筆致とは言え、15歳の作品としては驚くべき完成度を備えています。冒頭の動機が、第3番「オルガン付」の後半で長調に変容した循環主題を思わせるのも興味深いところです。
グノーの第1番は彼が37歳の頃「若い芸術家協会」のために作曲したもので、歌劇『血まみれの修道女』が初演の成功にもかかわらずオペラ座のレパートリーから外されてしまった失望から作曲家を慰めたと言われます。
ハイドン、
ベートーヴェン、
シューベルトらの影響を受けながらも、新鮮なインスピレーションと活気、グノーならではのオリジナリティによるドイツ音楽からの脱却といった観点で当時高い評価を得ました。
山田にとって再録音となる
ビゼーのハ長調は、今回のアルバム収録作品の中では耳にする機会の比較的多い曲ですが、17歳の頃作曲されたものの作曲家自身の意思で出版されず、レイナルド・アーンがパリ音楽院へ寄贈した資料から1932年になって発見されました。古典的な構成、ベートーヴェン的な力強さとロッシーニを思わせるクレッシェンドが特徴で、じつはビゼーがグノーの第1番をピアノ連弾用に編曲した直後に作曲されており、その影響も強く受けています。
山田はこれらの作品に深く寄り添い、作曲当時のフランスでは「ドイツ音楽のもの」とされ人気の低かった「交響曲」に果敢に取り組み、見事に開花させたフランス独自の感性と、それぞれに潜む個性の萌芽を見事に引き出し、その魅力を十二分に伝えています。
Photo by Akinori Ito