リンジー・ジョーダンによるプロジェクト、
スネイル・メイル (SNAIL MAIL)が、3rdアルバム『Ricochet』を「Matador Records」より3月27日(金)にリリースすることを発表。あわせて、収録曲「Dead End」をミュージック・ビデオとともに公開しています。
「Dead End」は、袋小路に車を停め、友人たちとタバコを吸っていた郊外での思春期――そんなシンプルだった日々を悼む楽曲。サウンド面では、分厚いグランジゲイズ的テクスチャーに、鋭いリード・ギターのリフと甘いフックが重なり合い、緊張感を高めながら、爆発的な「ナ・ナ・ナ」のシンガロングへとなだれ込んでいきます。
ミュージック・ビデオは、リンジー本人と俳優であるエルシー・リヒターが共同で監督を務めました。リンジーは「『Dead End』のビデオは、人生でも指折りに寒かった夜に撮影した。夕方5時から朝4時まで、ノースカロライナの田舎をあちこち回ってね。花火はなるべく目立たないようにするつもりだったんだけど、誰かに通報されて警察が来ちゃった」と語っています。
若き日の恋愛がもたらす感情の揺れを描いてきた初期作品に対し、5年ぶりの新作アルバム『Ricochet』で彼女が深く向き合うのは、時間、死、そして愛するものが静かに手のひらからこぼれ落ちていくのを見つめる恐怖。彼女の鋭いリリシズムに、これまで以上に広がりを持ったメロディ、装飾的なストリングス・アレンジ、そして催眠的なテクスチャーが重なり合い、『
Lush 』における均整の取れたギター・ワークや、『
Valentine 』の剥き出しの感情表現から自然な進化を遂げた作品となっています。
サウンド面では、90年代オルタナティヴ・ロックの輝かしい側面を呼び起こすもので、最も晴れやかな時期の
スマッシング・パンプキンズ 、最もブリットポップ寄りの
レディオヘッド 、そして
キャサリン・ホイール や
アイヴィー に通じるシューゲイズの靄――それらをリンジーならではの視点と声を通して再構築しているのが特徴的です。
リリックには、「存在そのもの」と格闘するアートの影響が色濃く反映。
チャーリー・カウフマン の映画『Synecdoche, New York(邦題:
脳内ニューヨーク )』の存在感は大きく、「Nowhere」ではローラ・ギルピンの詩「The Two-Headed Calf」から着想を得ています。「My Maker」では、天上の空港バーで居座ってしまう自分を想像し「ああ、天上の用心棒さん/お願いだ、中に入れて。死ぬのが怖いんだ(Oh, bouncer in the sky / Let me in, I’m scared to die)」と懇願する詩も。ほかにも『Ricochet』は、薄れていく友情、失われたシンプルさ、そして感情的な距離がもたらす痛みを悼んでいく作品で、アルバムのアートワークも、そのテーマを映し出しています。
『Ricochet』は、リンジーの顔が写っていない、スネイル・メイルとして初の作品。傷ついたようなブルーの空間に浮かぶのは、ひとつの螺旋状の貝殻。そこには、内側へと崩れ落ちていく収縮と外側へ広がる無限性という2つの意味が重ねられており、成長や距離、そして視点がもたらす引力と反発――そのせめぎ合いが象徴されています。
アルバムは、プロデューサーでありベーシストでもあるアーロン・コバヤシ・リッチとともに、ノースカロライナのFidelitorium Recordings、そしてブルックリンのNightflyとStudio Gでレコーディングされました。制作を振り返り、リンジーはそのセッションを「新鮮で、信頼に満ちていて、居心地のいいものだった」と語り、妥協することなく、楽曲の中に完全に身を委ねることができたと言います。また、リンジーにとって制作プロセスの面でも大きな転換点となったアルバムで、彼女は「これまで一度もやったことがなかったけれど、今回は、まずピアノかギターでインストゥルメンタルとヴォーカル・メロディをすべて書いて、それから1年かけて歌詞をまとめて書いた」と説明。この変化によって、『Ricochet』のサウンドを特徴づける、広がりのあるメロディをじっくりと練り上げる時間を得ることができました。
VIDEO
Photo by Daria Kobayashi Ritch