今年で11回目を迎えた〈Slow Music Slow LIVE'14〉が8月29日(金)、30日(土)、31日(日)と、東京・池上本門寺の野外特設ステージで開催。心配された雨はライヴ中に一度も降らず、オーディエンスも出演アーティストも大いに音楽と都会の自然を楽しんだ、大盛況の3日間となりました。
初日、8月29日(金)の“Mysterious Moon”は
Salyuと
中納良恵(from
EGO-WRAPPIN')という強烈な個性を持つ実力派女性アーティストによる夢の対バン。オープニング・アクトの
久和田佳代は昭和歌謡のテイストを強く持つヴォーカリスト、“リズム歌謡”というパンチの効いたスタイルで、笠置シヅ子のカヴァー「買い物ブギ」、上京して初めて書いたという「春になったら船に乗れ」を歌う。
満場の期待の中、現われた中納は「今日は一人ぼっちでやってきました」とピアノの前に座って1stソロ・アルバム『ソレイユ』から「夢」を弾き語る。エンディングでは自分のコーラスをサンプリングし“一人コーラスグループ”を演出。「ソレイユ」からはドラムも加わり、繊細でキュートな魅力を見せつけました。
Salyuもバックは
小林武史のグランドピアノのみ。「回復する傷」から2人のスリリングな競演が続くと、アンコールは中納を迎えた3人で、
カーペンターズのカヴァー「Close To You」。Aメロを中納とSalyuが交代で歌い、サビはハモるという超豪華セッション!
30日(土)“Rainbow Beat”は、お馴染みの顔ぶれが揃った上に、
佐野元春が初参戦と話題のラインナップ。オープニング・アクトの
古川本舗は、男女2人のヴォーカルを擁する7人編成。カホーンやスタンディング・ベースを使った大らかなアコースティック・ロックにワルツがぴったりマッチした「Hail against the barn door」などで雰囲気を作り上げる。
ハンバート ハンバートは「夏を締めくくるお祭りです」と初々しい恋の歌「Shall we dance」から、すれ違い始めたカップルの歌「ぶらんぶらん」など、悲しい物語をユーモラスに描く、持ち味全開のステージ。
土岐麻子は「今回は贅沢させてもらいました」と言うように、バックのギターは
ペトロールズの長岡亮介、ピアノは
世武裕子と共にシンガー・ソングライターの2人が揃いぶみ。絶妙なハーモニーで「Mr.Sandman」や「トー キョー・ドライブ」など非常に洗練された音楽でオーディエンスを楽しませる。昨年、初出演し大きな反響があった
Caravanがトランペットとスタンディング・ベースを従え登場。何事にも縛られないボヘミアンならではの、旅をテーマにした歌を次々に繰り出し、今年も大きな拍手を浴びていました。
本フェスにすっかりお馴染みの
BONNIE PINKも素晴らしいライヴを展開。アコギ1本をバックに歌った「Grow」では情感豊かに世界を表現、「またこのステージに戻ってきたいと思います」との言葉も。
ORIGINAL LOVEはのっけから観客のハートをつかみ、「ウイスキーが、お好きでしょ」で会場は大盛り上がり。終わった後はフードコートの白州を使用したハイボールが飛ぶように売れたとか!
そしてトリは佐野元春&The Hobo King Bandが本門寺に初登場。チェロ入りの編成でおくる「ヤァ!ソウルボーイ」、スペシャルなアレンジで演奏される「約束の橋」など名曲の数々、“大人の野外ライヴ”を意識したセットリストは、柔らかなタッチで会場をじっくりと盛り上げました。
最終日となった31日(日)“Originator's CAMP”は
高橋幸宏ファミリーが集結! オープニング・アクトをつとめた
藤原さくらは「この3日間、皆勤賞です。全部のライヴを観ました」と挨拶、本フェス初参加の歓びを込めて歌う。
チャラン・ポ・ランタンはバンドの紹介を兼ねた「忘れかけてた物語」からスタート、「スーダラ節」のカヴァーなどノスタルジックで特異なキャラクターを全開にする“スロー”とは決して言えない持ち味を存分に披露。
シニカルで美しい世界を現出させる
青葉市子は、弾き語りで4曲歌った後、ゲスト・ギタリストの
小山田圭吾を迎えた「日時計」では、鋭いリリックと、エフェクトを駆使したサウンドで会場を新たな色に染め上げる。
Curly Giraffeと
高田 漣のコンビは、生楽器と声で形作る音楽の良さを改めて堪能させてくれるグレイトなサウンド。ラストとなった「96708」では
堀江博久がピアニカで参加、いつまでも聴いていたくなるセッションが展開されました。
フェス常連のひとり
持田香織は、アコーディオンとコントラバスが独特の世界を生む京都のデュオ
mama!milkを従え登場。いきなり
Every Little Thing「Time goes by」をアコースティック・アレンジで聴かせると、mama!milkとの深いケミストリーを心地よく。トリオ編成で登場の
高野 寛はブラジル録音の最新アルバム『TRIO』、またCMを彩った「DAKARA」などもパフォーマンス。「夢の中で会えるでしょう」ではシンガロングが起こるなど、オーディエンスからの愛情もたっぷり!
そしてトリの高橋幸宏。
佐橋佳幸(g)と堀江博久(key)の2人を伴い、ニール・ヤング「Helpless」カヴァーをまずはお届け。オリジナルやランディ・ニューマンのカヴァーなど、芯の詰まった“大人のミニフェス”こと〈Slow Music Slow LIVE'14〉最後の夜にふさわしいステージは、高野 寛とCurly Giraffeも加わったトッド・ラングレン「I Saw The Light」でフィナーレを迎えました。
(Photo By TEAM LIGHTSOME)