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マットな手触り、23 Envelope/V23 ヴォーン・オリヴァーとは

2008/02/13掲載
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コクトー・ツインズ、ピクシーズをはじめとする4ADリリースに、TV ON THE RADIOなど、80'sから現代まで、第一線で活躍し続けるデザイナー、ヴォーン・オリヴァー。その軌跡を追いかけました。

 80'sに黎明期を迎えた“UKインディ・シーン”界隈を牽引する存在感、今もなお鈍い光を放ち続ける4AD。ベガーズ・バンケット傘下第一弾レーベルとして世に誕生したのをはじまりに、UKからUSへ所属アーティストも拡大。まさしく独自の視点から、世にも面白きサウンドを発掘し続けてきたその軌跡は偉大と言える。そして4ADの“カラー”を語る際に忘れてはいけないのが“ビジュアル”。レーベル専属デザイナーとして、多くの作品を手掛けたデザイン・ユニット“23エンヴェロップ(23 Envelope)”メンバー、ヴォーン・オリヴァー(Vaughan Oliver)をご紹介。


 1957年、イングランド・セッジフィールドにて生まれたヴォーン・オリヴァーは、美術学校・Newcastle-upon-Tyne Polytechnicを卒業後、Benchmark and Michael Peters and Partnersというパッケージ・デザイン会社へ入社。ちょうどその頃、4AD主宰者であるアイヴォ・ワッツ=ラッセル(Ivo Watts Russell)と出会ったのだとか。その後、写真家のナイジェル・グリーアソン(Nigel Grierson)と共に、23エンヴェロップを結成、レーベルのビジュアル面を一手に引き受けることとなるのです。



 23エンヴェロップの代表作の一つであり、彼らの最初の作品といえば、1982年にリリースされたコンピレーション・アルバム『NATURE MORTES-STILL LIVES / ネイチャー・モルテス〜スティル・ライヴス〜暗闇の舞踏会』(写真)。当時スタートしたばかりだった4ADに注目し、作品リリースを提案したのはなんと日本。4ADの全面協力のもと、バースデイ・パーティ、レマ・レマ、ザ・ザモダン・イングリッシュバウハウス……あまりにも刺激的ラインナップが揃ったのはもちろん、オリジナル・アナログ盤は日本のみの発売だったため、イギリスのファンの間ではコレクターズ・アイテムとして取り引きされる顛末も。レアな楽曲が収められているのはもちろん、レーベルの持つ個性を如実に表現した、マットな質感が伝わるアートワークに目を奪われた方も多いはず。




 初期の4ADといえば頭に浮かぶのは彼ら、“ポスト・パンク”を代表するバンド、コクトー・ツインズ。パンクからニューウェイヴへと蠢く時代の流れを象徴する、ミステリアスで危険な美意識、頽廃的なそのサウンドは当時も今も異彩を放ちつつ、なぜか惹かれてしまう圧倒的な存在感を放っています。本作は、ベースのウィル・ヘッジー(Will Heggie)脱退後に発表された、デビュー・アルバム『Garlands』に続く2nd(写真)。ロビン・ガスリー(Robin Guthrie、g)、エリザベス・フレイザー(Elizabeth Fraser、vo)、残ったメンバーによって生み出された重苦しくもロマンティックな響き、脆く崩れそうなその世界観は、鬱々とした土褐色アートワークにてさらに増幅されていきます。


 1988年には、ユニット名を“V23”へと改め、現在もパートナーとしてタッグを組むクリス・ビッグ(Chris Bigg)をはじめ、多くのアーティストとコラボレートし、アートワークを発表し続けるヴォーン・オリヴァー。サウンドから得たインスピレーションを執拗なまでに追いかけ、決して肖像を使うことなく、その空気をデザインへと落とし込んだ作品の数々は、ある意味“妄想”の果てに辿り着いたもの、とも呼べるのかも。アーティスト、サウンド、ビジュアル、どれが欠けても成り立たない4ADリリースだからこそ開花した、彼のセンスを今一度味わいましょう。

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