10月17日の誕生花は「ブドウ」。花言葉は「陶酔」「忘却」「思いやり」「慈善」。「陶酔」「忘却」はブドウ酒にちなんだもの、「思いやり」「慈善」は野生のブドウの実をタダで食べられることに由来しています。開花時期は5〜6月ですが、実の収穫時期は8月〜10月と、まさに今が食べ頃のフルーツ。生食はもちろん、ワインやジュース、干しぶどうなど、さまざまな形で楽しまれています。
今回は、そんな老若男女に愛されるブドウが登場する楽曲を紹介します。
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aiko 「ぶどうじゅーす」 2023年3月29日リリースの15thアルバム『
今の二人をお互いが見てる 』に収録されている本楽曲は、タイトルにもあるとおり、冒頭から“ぶどうじゅーす”が登場します。ただのブドウジュースではなく、“上と下で味の濃さが違う”ブドウジュースと言っていますが、下が紫で上が氷が溶けて透明になり、それだけ時間が経過していることを表現。パートナーとの日常で、ずっと一緒にいたいなと浸っている間に、気付いたらこんなに一緒に時間を過ごしていたということが感じられる可愛らしい一曲となっています。
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AKB48 「アイスのくちづけ」 2011年8月24日発売の22thシングル「
フライングゲット 」のカップリングに収録されている本楽曲は、江崎グリコ「アイスの実」のCMソングで、AKB48のメンバーを合成して作られたCGキャラクター“江口愛実”(えぐち あいみ)が登場し、当時の神7と呼ばれていたメンバー、
前田敦子 ・
大島優子 ・
高橋みなみ ・
篠田麻里子 ・
板野友美 ・
渡辺麻友 を従えセンターを務めたことでも話題になりました。甘くて少し切ない恋の瞬間を描いた夏らしいラヴ・ソングとなっています。
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キタニタツヤ 「白無垢」 2020年12月23日に配信リリースされた本楽曲は、
中原中也 の「在りし日の歌」にインスピレーションを受けて制作されたとのこと。破局したカップルの男性目線で歌われており、歌詞には“狐と葡萄”が出てきます。これはイソップ童話の一つで、登場人物である狐が高い場所にあり手の届かない葡萄を自分に都合の良いように「この葡萄は酸っぱくて美味しくないな」と決めつけることで、自分の能力を正当化するという物語。何かしら理由をつけて、彼女と別れたことは失敗ではない、また元の生活に戻るだけと、負け惜しみや強がりにも見て取れる歌詞に注目です。
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原因は自分にある。 「原因は自分にある。 」 文学的・哲学的歌詞の世界観を武器とする7人組ダンス・ヴォーカル・グループ“原因は自分にある。”(通称 ゲンジブ)のデビュー曲にも“葡萄”が登場します。〈酸っぱい葡萄の種として眠ろう〉というフレーズからは、華やかに咲くことができなかった者の痛みや内省、そして密やかな再生の意志を象徴しており、現グループ名に改名してからの率直な思いと希望に満ちた名刺代わりの一曲となっています。
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斉藤和義 「すっぱいぶどう」 1997年2月26日にリリースされたアルバム『
ジレンマ 』に収録。タイトルにもあるように“すっぱいぶどう”というのは、甘さではなく、“届かなかったものの象徴”として使われ、こちらも前述したイソップ童話を下敷きにした皮肉とユーモアに満ちたロック・ナンバー。軽快なギターサウンドの裏に、人間らしい弱さや潔さが覗く楽曲となっています。
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竹内まりや 「ウエイトレス」 竹内まりやの5thアルバム『
PORTRAIT 』に収録された「ウエイトレス」は、ウエイトレスとして働く女性と、店にやってきた男性が互いに惹かれ合う様子を描いたラヴ・ソング。歌詞には“微笑みに見とれて葡萄酒を注ぎそこねた”とあります。葡萄酒(ワイン)自体が、大人びた恋や少し背伸びした感情を表し、恋の始まりの戸惑いを鮮やかに切り取っています。
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中森明菜 「BLUE OCEAN」 中森明菜の9thアルバム『
D404ME 』に収録されている本楽曲は、トリッキーなサウンドとテクノアレンジが印象的で、都会の夜を思わせる幻想的なナンバー。編曲は
久石譲 が務めています。歌詞に出てくる“葡萄酒色”というのは、単にワインの色ではなく、夜の深みや恋の終わりを指す切ない赤を表現しているようで、華やかな夜の世界から静かな現実に戻る女性の姿を描いているように感じます。
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NEWS 「チャンカパーナ 」 2012年にリリースされた本楽曲は、耳に残る中毒的なサウンドで話題となったラテン・ポップ・ナンバー。「チャンカパーナ」はNEWSが生み出した造語。情熱的なメロディと、一目惚れし恋に酔うような歌詞が印象的で、〈褐色の葡萄〉という比喩には、熟れきった果実の情熱と官能が込められています。「チャンカパーナ」では、愛の甘さではなく、欲望と陶酔の象徴としてブドウが使われています。2025年6月2日には英語ヴァージョンがリリースされています。
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松田聖子 「葡萄姫」 1999年10月27日リリースの49thシングル「
哀しみのボート 」のカップリングに収録された本楽曲は、
松本隆 が作詞を手掛けた、幼い頃の甘く切ない思い出を描いた一曲。〈低い葡萄の棚〉や〈昔 葡萄の粒を口移しした想い出の場所〉を、かつて好きだった人と一緒に巡る様子や、同窓会ではワインを飲み過ぎるという歌詞も。子供の無垢と大人の成熟を象徴するモチーフとしてブドウが使用され、初恋の儚さと愛おしさを優しく包み込みます。
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松任谷正隆 「Hong Kong Night Sight」 音楽プロデューサー / アレンジャー、松任谷正隆が1977年に発表した唯一のソロ・アルバム『
夜の旅人 』に収録されている本楽曲は、映画『スージー・ウォンの世界』からヒントを得た、香港の夜景や異国情緒を背景に、恋人とのひとときを描いたナンバー。異国の夜に乾杯した葡萄酒の深い色が描く恋の余韻が、聴く者の心に静かに染み入ります。作詞を担当した
松任谷由実 もカヴァーしています。
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米津玄師 「LOSER 」 2016年9月28日にリリースされた米津玄師の5thシングル。米津の代表曲の一つで、ミュージック・ビデオは3.5億回再生を突破しています。孤独や迷いを抱える若者の心情を、力強いロックサウンドで表現した一曲。自分自身に問いかけなが前に進もうとする姿が、聴く者に共感と勇気を与えます。歌詞に出てくる〈すり減って残る酸っぱい葡萄〉というのは自分自身の未熟さや悔しさ、心のもやもやなどを表し、足早な言葉と鋭い比喩が若者の感情の揺れを鮮明に映し出しています。
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ヨルシカ 「斜陽」 TVアニメ『
僕の心のヤバイやつ 』オープニング・テーマとして書き下ろされた本楽曲は、青春の刹那や届かない恋心を描いた切ないナンバー。手の届かない恋や憧れを〈高く成った葡萄〉に例え、甘くもほろ苦い感情を象徴しています。ほかにも、恋は盲目であることを感じさせる歌詞や、恋に落ちて頬が赤く染まる様子を描いた歌詞など、ヨルシカならではの美しい比喩表現に注目です。
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このように、甘酸っぱい初恋の味、ワインのように大人な恋心、届かない憧れ……同じ“ブドウ”というモチーフが、アーティストによって多彩に表現されていることが分かります。花言葉の「陶酔」「忘却」を感じられる楽曲も多くありました。今日のあなたの気分は、どのブドウ色ですか?
(写真は2016年9月28日リリースの米津玄師「LOSER / ナンバーナイン」)