7月16日は、80年代より女性ロック・ミュージシャンの先駆けとして、いまなお活躍している
浜田麻里のバースデー。その誕生日にちなんで、アーティスト半生を振り返りながら、人気曲をいくつか紹介していきましょう。
中学時代にCMソングを歌い、高校時代にはパンクロック・バンド、大学時代はロック・バンド“MISTY CATS”で活動していた浜田は、ヤマハ主催のアマチュアバンドコンテスト「East West」へMISTY CATSが参加した際にスカウトされ、1983年にアルバム『
Lunatic Doll〜暗殺警告』(写真)でソロ・メジャー・デビューを果たします。日本のハードロック / ヘヴィメタル・シーンの代表格の
LAZYや
LOUDNESSなどで活躍する
樋口宗孝のプロデュースとともに、コピーライターの
糸井重里による「麻里ちゃんは、ヘビーメタル。」というキャッチコピーも注目されました。当時はアイドル全盛時代でしたが、異色ともいえる本格的な女性ロック・ヴォーカリストの旗手として登場し、一躍スターダムにのし上がりました。
樋口の手を離れ、セルフプロデュースを移行し始めた1984年の3rdアルバム『
MISTY LADY』までは、アルバム・アーティストとしてのイメージが強かった浜田ですが、1985年には初のシングル「Blue Revolution」をリリースします。チャートでは42位が最高位でしたが、ファンの初の浜田のシングルへの思い入れは強く、2019年のファンベスト・アルバム『
Light For The Ages -35th Anniversary Best〜Fan's Selection-』の際に行なわれた人気投票では、見事1位となっています。同曲を先行シングルとしてリリースしたアルバム『
Blue Revolution』もヒット。
B'zの
松本孝弘がギターで参加しています。
“ヘヴィメタルの女王”として広く知られるところとなった浜田は、1987年より米・ロサンゼルスにレコーディングの拠点を移して、海外のトップミュージシャンとのコラボレーションを展開していきます。また、ハードロック / ヘヴィメタルだけにとどまらない、幅広い音楽性を追求。セルフプロデュース楽曲を多く収めた『MISTY LADY』の頃より、ポップな色合いを見せ始めていた浜田ですが、もともとハードなサウンドへの嗜好はあったものの、ヘヴィメタルに固執していたわけではないようで、ヴォーカリストとしての奥行きの深さを求めていきます。
1988年に8thシングルとしてリリースされた「
Heart and Soul」は、カップリングに収録された「My Tears」とともにNHKのソウルオリンピック・イメージソングとして制作されました。大会期間前後に多くのメディアで流れたこともあって、従来のロックファンのみならず幅広い層に知られ、「Heart and Soul」は自身初となるトップ10チャート入りとなる7位を記録しています。
その勢いはとどまらず、翌年に9thシングルとしてリリースされた「Return to Myself〜しない、しない、ナツ〜」は、カネボウ化粧品の夏のキャンペーン・ソングとしてCMでも話題となり、「Heart and Soul」に続いて2作連続でトップ10入り。自身初の1位を獲得。同年発表の10thアルバム『
Return to Myself』も初の1位に輝いています。
「Open Your Heart」「Heaven Knows」「Paradox」「Cry For The Moon」とトップ10シングルを連発した浜田は、1993年にMCA Internationalと世界契約し、アジアを中心に海外へ活動範囲を拡大。翌94年にはヨーロッパへ進出し、キム・ワイルドとともヨーロッパ・ツアーを行なうなど、日本を代表するフィメール・ヴォーカリストとして名を馳せていきます。
その後、一時ライヴ休止期間などもありましたが、音楽作品をコンスタントに発表し、2002年にはライヴ活動を再開。以来、デビュー周年の節目にはスペシャルコンサートやツアーを行なうほか、デビュー30周年の2013年にはアニバーサリー・ベスト『
Inclination III』を、2019年にはファン選曲のベスト盤『Light For The Ages -35th Anniversary Best〜Fan's Selection-』をリリースしています。ちなみに、ファン・ベストでの人気投票では、「Blue Revolution」「Nostalgia」「Nostalgia」がトップ3に。以下「Momentalia」「Don't Change Your Mind」「Return to Myself〜しない、しない、ナツ〜」「Call My Luck」「Stay Gold」「Fantasia」「My Tears」がトップ10となっています。個人的には、人気投票では45位となり、惜しくもファン投票上位40曲を収録した35周年記念ベスト盤収録を逃してしまいましたが、1987年リリースの5thシングル「999〜ONE MORE REASON〜」(7thアルバム『
IN THE PRECIOUS AGE』にも収録)あたりも食指が動きます。
ロック・フィールドから歩みを始め、“ヘヴィメタルの女王”へと駆け上がっただけでなく、さまざまなチャレンジに挑みながら、ヴォーカリストとしてのトップランナーとして走り続けてきたその姿は広く評価され、2020年にはヘヴィメタル専門誌『BURRN!』が1984年の創刊時から行なわれている恒例の読者人気投票企画「HEAVY METAL CHAMPIONSHIP」の2019年度のヴォ―カリスト部門において、日本人初のチャンピオンを獲得。創刊当初から3年間は男女別に行なわれた女性ヴォーカリスト部門で1位に輝いたことはありましたが、男女部門を統合した1987年以降は洋楽のヘヴィメタル男性ヴォーカリストたちがトップをしのぎ合うなかでの快挙となりました。
浜田は2023年の『
Soar』まで27枚のオリジナル・アルバムを発表。その先行シングルとして「Tomorrow Never Dies」を配信リリースしています。従来のファンはもちろん、浜田の存在を知らなかった人たちも、記念すべきバースデーを機に、多彩な音楽性と揺るぎないヴォーカルパワーで魅了してきた楽曲群に触れてみてはいかがでしょうか。