1821年にライプツィヒで起きた殺人事件の加害者ヴォイツェックの精神鑑定の記録をもとに、ゲオルク・ビューヒナーが執筆した未完の戯曲を、
アルバン・ベルクがオペラ化した『ヴォツェック』。20世紀オペラの金字塔といわれるこの作品が、巨匠
リチャード・ジョーンズの新演出で11月15日(土)から11月24日(月・休)まで、東京・初台 新国立劇場オペラパレスで上演されます。
ヴォツェックを演じるのは世界的スター歌手のトーマス・ヨハネス・マイヤー。指揮は
大野和士芸術監督、管弦楽は
東京都交響楽団です。
[コメント]新制作でお届けするベルクの『ヴォツェック』は、1925年に初演され、今年は初演からちょうど100年の区切りの年です。音楽、物語共に、私たちの内面に深く強く入ってくるもので、今こそ聴きたい作品です。夭折した作家ビューヒナーが、1830年代に実際に起きた殺人事件を題材に、社会の底辺で精神を病み、内縁の妻を殺して破滅していく男を描いた原作を、1世紀近く経ってベルクが無調音楽で作曲したオペラです。
新演出に臨むのは、巨匠リチャード・ジョーンズ。私は音楽監督を務めていたモネ劇場での『炎の天使』、スカラ座の『ムツェンスク郡のマクベス夫人』で一緒に仕事する機会に恵まれましたが、緻密でありながら、それをはるかに超越したエネルギーによって観る者を劇場空間の心理劇に引きずり込む手腕は、本当に圧巻でした。今回も狂気をテーマにした心理劇をリチャードがどう描いていくのか、私自身も大変楽しみです。ヴォツェック役はトーマス・ヨハネス・マイヤー、マリーにジェニファー・デイヴィス、鼓手長にジョン・ダザック、大尉はアーノルド・ベズイエンと当代随一と言える歌手が集まります。――大野和士