2000年代に「ラッキー・キッチン」という素朴で美しい電子音楽+フィールド録音レーベルも運営したアレハンドラ&アーロンが、娘のアグネスを加えて再始動。
バーグマン&サリナス(Bergman & Salinas)として実に18年ぶりののオリジナル・アルバム『
Fullmoon Maple』を5月30日(金)にリリースします。
「ラッキー・キッチン」は、当時の国内音楽雑誌でも取り上げられ、世界中の先鋭的な電子音楽家やサウンド・アーティストの作品を、ときにハンドメイドの手技を残したパッケージに包んでリリース。このレーベルを運営しながら、自身も音楽作品を発表してきたアレハンドラ・サリナスとアーロン・バーグマンは、現在居住する米ミズーリ州コロンビアで愛娘のアグネスを加えたファミリー・プロジェクトとして活動を再開させました。
本作には、今回のリリースに尽力し、ラッキー・キッチンからデビュー・アルバム『
Organ Leaf』を発表した
ASUNAが、交友関係やレーベルの詳細なヒストリーロングエッセイで掲載したブックレットを封入。ASUNA自身の個人史や2000年代初頭の電子音楽〜サウンド・アート〜フリー・ミュージック・シーンの様子も描かれ、単なるライナーノーツという枠組みを超えた単独の論文として、とても興味深い内容となっています。
さらに、それに応じる形でアレハンドラ・サリナスとアーロン・バーグマンも、読み応えある文章を寄稿。本作品や自身の活動のバックボーンをしたためて、CDに収録された「Fullmoon Maple」という約35分のロング・ピースだけでなく、彼らの音楽にまつわる思想のあり方も感じられる特別なパッケージに仕上げています。
これまでもそうだったように、アーティスト本人が採集 / 発見したフィールド録音を随所にしのばせて、世界の一風景、一断片をコラージュしながら、今回は
ロバート・ワイアットを思わせるアーロン・バーグマンが歌い、演奏するピアノの弾き語りも登場。目下、ピアノを練習中だというアグネスの演奏も使用されています。そして、愛娘との日常のやり取りを散りばめることでも社会的存在として血の通った、唯一無二の電子音響作品に。このたおやかな音風景が、現在、大きな力を持ち得ることに希望を感じながら、ぜひ耳を傾けてほしいところです。