エレクトロニック・プロデューサーの
ジョン・ホプキンス (Jon Hopkins)が「幻覚セラピーのための音楽」を収める新作『Music For Psychedelic Therapy』を11月12日(金)に発表します。収録曲で、プロデューサーのイースト・フォレストと『ビー・ヒア・ナウ―心の扉をひらく本』の著者である故ラム・ダスをゲストに迎えた「Sit Around The Fire」がミュージック・ビデオとともに公開中です。
スケールの大きなお祭り騒ぎや、フェスに向かって繰り広げられる喧噪から距離を置きたいという思いからできた新作は、内面を見つめるもの、自我に囚われないものを作ろうと心がけ、制作中、そこに「調和」を目指そうという意図はありませんでした。そうして生まれたアルバムにはビートがなく、ダンス・ミュージックやエレクトロニカのレコードというより、クラシックの交響楽に近いものになりました。これはただ楽曲を聴くというのではなく、身をもって体感するべき作品で、従来からあるリズムの構成にこだわるのをやめたことで、大きな解放感を感じられる作品となっています。大部分は彼にとってもっとも暗い冬となった2021年の1月から5月にかけてレコーディングされました。
「幻覚セラピーのための音楽」というのは、ジョン・ホプキンスにとってまったく新しい方向性です。それはアンビエントではないし、クラシックでもないし、ポストロックでもありませんが、その3つの要素をすべて持っています。そこには悠久の時間をまたぐ物語があり、それは音を鳴らすのと同時に空間を作るものでもあります。これは幻覚体験の儀式における新たな次元に到達しています。彼自身が麻酔薬ケタミンによる幻覚を見ながらこの音楽を試したところ、前に読んだことのある格言が頭の中に何度も浮かんできたといいます。「音楽とは液状の建築である。建築とは凍結した音楽である」。それは人間の居場所となるべきものであり、また人間に多大な影響を与えるものでもあります。そして、そうした状態にあるときに、タイトルがはっきりと頭に浮かんできたと言います。これは、デビッド・ナット医師によってインペリアル・カレッジ・ロンドンで行なわれている幻覚剤シロシビンを用いた試験で使用するプレイリストについてアドバイスするという、彼自身の仕事にも通じていました。幻覚セラピーは世界中で合法化が進んでいるにもかかわらず、それに欠かせない音楽について語る者はあまりいません。古来より、幻覚体験の儀式では、薬物と同様に音楽が重要だった――音楽こそ、人が空間を自在に進むための手段なのです。
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