スティーヴ・ライヒ(Steve Reich)が、ノンサッチと契約した1985年から40年間に同レーベルから発表した作品を収録する27枚組のボックス・セット『COLLECTED WORKS』。3月に発表されたこのボックスに収録された初出音源「Jacob's Ladder / Traveler's Prayer」が、7月11日(金)に数量限定で単独CD化されます。
収録される「Traveler's Prayer」は、
シナジー・ヴォーカルズと
コリン・カリー・グループが2023年5月に東京オペラシティ・コンサートホールで行なったライヴの音源。また、「Jacob’s Ladder(ヤコブの梯子)」は、2023年10月に
ニューヨーク・フィルハーモニックとシナジー・ヴォーカルズによって初演された、声楽とアンサンブルのための作品。この作品は、創世記28章12節に記されたヤコブの夢の場面――地と天を結ぶ梯子を天使たちが昇り降りする――を音楽的に描いています。
「Jacob’s Ladder」は、聖書の一節をもとにした4つの短いセクションと、それらを発展させた4つの長いセクションから構成されています。全体の約60%が器楽による演奏で、残りが声楽パートです。この構成により、言葉のない音楽が天使たちの昇降や静止を象徴的に表現しています。ライヒはこの作品について、「〈Jacob’s Ladder〉は基本的に器楽作品であり、声楽部分は全体の40%にすぎない。残りは言葉のない音楽的コメントであり、天と地を結ぶ梯子を昇り降りする天使たちの動きを音楽で描いている」と述べています。
東京での録音が収録された「Traveler’s Prayer(旅人の祈り)」は、2020年に作曲が始まり、パンデミックのさなかに完成された作品で、声楽と器楽アンサンブルのための静謐で精神的な深みを持つ楽曲です。ユダヤ教の伝統的な「旅の祈り(Tefilat HaDerech)」に基づいており、旧約聖書(創世記・出エジプト記・詩篇)からの3つの短い抜粋がテキストに用いられており、これらの言葉は、旅の安全を祈る言葉として、日常の移動だけでなく「人生や死後の旅」にも象徴的に通じるものとして扱われています。音楽的にもミニマリズムの語法を用いながら、非常に自由で複雑に絡み合うカノン形式が多用されていますが、テキストの持つ精神性を尊重し、リズムやテンポは極めて穏やかかつ瞑想的な作品です。