名匠
ウォルター・サレス監督(『
セントラル・ステーション』『
モーターサイクル・ダイアリーズ』)が手がけた最新作『アイム・スティル・ヒア』の公開日が8月8日(金)に決定。あわせて、本ポスター・ヴィジュアルとシーン写真が公開されました。
物語の舞台は、1970年代、軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員ルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていました。しかし、スイス大使誘拐事件を境に政情は一変。抑圧の波が市民を覆ってゆく中、ある日、ルーベンスは軍に連行され、そのまま消息を絶ってしまいます。突然、夫を奪われたエウニセは、必死にその行方を追い続けますが、やがて彼女自身も軍に拘束され、過酷な尋問を受けることに。数日後に釈放されたものの、夫の消息は一切知らされないまま。沈黙と闘志のはざまで、それでもなお、彼女は夫の名を呼び続け──。自由を奪われ、絶望の淵に立たされながらも、エウニセの声はやがて、時代を揺るがす静かな力へと変わっていきます。
公開されたポスターは、果てしなく広がる青空の下、リオデジャネイロの海辺で過ごす穏やかな家族の時間が収められたもの。果てしなく広がる青空の下、寄り添うパイヴァ夫妻とその子供たち。その情景は、かつて確かに存在した“幸せ”の風景のシーンであり、添えられたキャッチコピー「言葉を奪われた時代──彼女はただ、名を呼びつづけた」は、これから家族が辿る運命を静かに予見させます。併せて公開されたシーン写真は全9点。仲睦まじく暮らすパイヴァ夫妻や家族の様子を切り取ったもののほか、そこから一転、夫が消息を絶った後に残された妻たちの不安げな姿も切り取られ、かつての幸福と絶望、対照的な2つの世界が切り取られたものとなっています。
『セントラル・ステーション』で国際的評価を築いたウォルター・サレスが、長編としては16年ぶりに祖国ブラジルにカメラを向けた本作は、軍事独裁政権下で消息を絶った政治家ルーベンス・パイヴァと、夫の行方を追い続けた妻エウニセの実話に基づいています。サレス自身、幼少期にパイヴァ家と親交を持ち、この記憶を、喪失と沈黙をめぐる私的な問いとして丁寧に掘り起こしました。自由を奪われ、言葉を封じられても、彼女は声をあげることをやめなかった。サレスは、理不尽な時代に抗い続けたひとりの女性の姿を、美しくも力強い映像で永遠の記憶として刻みつけます。
主演を務めたのは、サレス作品の常連にして名優
フェルナンダ・トーレス。静かな闘志と深い慟哭を織り交ぜたその演技で、アカデミー主演女優賞にノミネートされました。そして、エウニセの老年期を演じたのは、実の母であり『セントラル・ステーション』でブラジル人初のアカデミー主演女優賞候補となった
フェルナンダ・モンテネグロ。母と娘、ふたりの女優が、記憶と時代、そして命の継承を映し出します。
本作は第81回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞。第97回アカデミー賞では、ブラジル映画史上初となる作品賞ノミネートを含む3部門に名を連ね、国際長編映画賞を受賞しています。抑圧の時代に、真実を語り続けた一人の女性の静かな叫び。世界が忘れた「声なき物語」が、いま再び蘇ります。
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