坂本龍一の2020年に発表した楽曲をアナログレコードにまとめたコンプリートアートボックス『2020S』の制作過程を追う連載、BEHIND THE SCENEが更新されています。
今回更新されたのはBEHIND THE SCENE VOL.6で、坂本龍一の陶器を割る音を使用した新曲「fragments, time」の世界最速楽曲レビューが掲載されています。
『
async』のリリース以降、坂本の中で強く思い描いていたアイデアが『2020S』でついに実現。楽曲で使用するのは、坂本自身が絵付けを行ない、唐津の陶芸家・岡晋吾が焼き上げた陶器の皿です。坂本は米ニューヨークの自宅にて陶器を割る音を採取し、制作した楽曲を「fragments, time」という曲名にしました。
楽曲から聴こえるのは陶器とピアノの音のみ。静寂の中で陶器は不規則に鳴り響き、その隙間を埋めるようにピアノが丁寧に紡がれていきます。
“陶器が割れる音”と聞くと耳当たりの強い衝撃音を想像しますが、実際に楽曲から聞こえてくるのは耳をつんざくものではなく、どこか透明感のある柔らかな響き。陶器の断片は転がるたびに一つずつ異なる余韻を残し、坂本がこの楽曲に使用するために作ったという“簡易な楽器”は、複数枚の陶器がランダムに触れ合い自由な音色を奏で合います。
『2020S』には、蔡明亮監督作品『あなたの顔(英題: Your Face)』、コゴナダ監督作品『After Yang』のオフィシャル・サウンドトラックにはじまり、イタリア発の高級ラグジュアリーブランド、ボッテガ・ヴェネタのショートフィルム用に書き下ろされた「BV」や米シアトルのNPO法人MOR(Music of Remembrance)のために制作された「Passage」、さらにはテレビ東京のミニ・ドラマ『
きょうの猫村さん』の主題歌となった「猫村さんのうた」など、ジャンルレスなコラボレーション作品がアナログ・レコードで収録されます。
これら楽曲の一部は音楽配信サービスで視聴もできますが、「fragments, time」は『2020S』にのみ収録するとのこと。なお特設サイトでは、限定300点の『2020S』の予約を受付中です。
Photo by zakkubalan ©2020 Kab Inc.