2024年に開催したジャパン・ツアーも大盛況だった
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー (Oneohtrix Point Never / 以下OPN)が、ニュー・アルバム『Tranquilizer』を発表。「Warp」より11月17日 (月) にデジタル / ストリーミングで配信がスタートし、11月21日(金)にはCDとLPが発売。あわせて、新曲「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」が公開され、OPNならではの幻想的で超現実的なサウンド世界が姿を現しました。
精神安定剤を意味する『Tranquilizer』の出発点は偶然の光景だったとのこと。歯医者の椅子に横たわり、歯に響く振動を受けながら、ふと見上げた蛍光灯のカバー。灰色のタイル天井に貼られた、青空とヤシの木のプリント――安っぽい人工の楽園に、この世界の音とは何か、日常と非日常がかろうじて均衡を保ちながら共存する、この薄っぺらな現実の音とは?という問いかけがOPNに生まれます。
さらに、数年前、インターネット・アーカイブから、巨大なサンプル・ライブラリがインターネットから忽然と消えた事件も創作の引き金に。90年代から2000年代にかけての何百枚ものクラシックなサンプルCD、すなわち『サイレントヒル』から『
X-ファイル 』まで、数え切れない作品に陰影を与えてきた音源たちが、一瞬にして闇に呑み込まれたという出来事は文化の断絶、時代の記憶を繋ぐ回線が無慈悲に断ち切られるような体験。幸いにも、失われかけた音の断片は再び救出され、文化的アーカイブとして息を吹き返しましたが、本作は、過去への逃避とは何を意味するのか、そしてその先に何が待っているのかを問いかけ、超現実的でディープなテクスチャーで聴く者を包み込みます。
OPNは「このアルバムは、かつて商業用オーディオ・キットとして作られた音源群に形を与えた作品だ。陳腐なサウンドの索引を裏返しにしたようなもの。今日の文化の奥底にある狂気と倦怠を最もよく表現できる、プロセス重視の音楽制作へと回帰した作品なんだ」とコメント。
また、アルバム発表にあわせて解禁された「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」の3曲は、メディアの崩壊、アンビエントな不穏さ、そして儚い美が交錯する、まさにOPNらしい世界が描かれた作品となっています。
『Tranquilizer』のアートワークは、インディアナ州を拠点とするアーティスト、アブナー・ハーシュバーガーによって描かれた絵画で、アブナーが育ったノースダコタの平原を抽象的かつ有機的に再構築したもの。忘れ去られた素材や農村風景に根ざしたヴィジュアルは、『Tranquilizer』のテーマである崩壊、記憶、クラフト感と呼応しています。
なお、11月21日(金)にリリーさうされる国内盤CDにはボーナス・トラック「For Residue (Extended)」が追加収録され、解説書が封入。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(クリア・ヴァイナル)も発売。限定盤LPは数量限定の日本語帯付き仕様(解説書付)でも発売されます。
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Photo by Aidan Zamiri