辻一郎のソロ・ユニット“
Dissecting Table”が、アルバム『Destruct Mechanism』をリリース。9月18日(月)にCDRのリリースとデジタル配信を行います。CDRは、レギュラーエディション20枚限定、スペシャルエディション2枚限定でリリースします。スペシャルエディションのCDジャケットは、辻によるハンドメイドアートワークです。
辻一郎は1966年生まれ。東京で86年から“Dissecting Table”という名義でノイズ・インダストリアル・ミュージックの制作を開始し、98年に故郷の広島に戻り音楽活動を展開。おもに自主レーベル「UPD organization」とヨーロッパとアメリカのレーベルよりレコードやCD作品を発表してきました。初期、中期の作品は、シンセサイザー、サンプラーをシーケンサーで制御することで作品を制作していましたが、2012年頃から、コンピュータでUSB接続デバイスから出力されるPWM信号を制御して音楽制作を行なうようになり、現在は、独自のシンセサイザーシステムを開発しながら作品を制作しています。
開発したシンセサイザーシステムは、コンピュータ、universal serial bus(USB)接続デバイス、ラインセレクタ、バッファ、フィルタ及び、ミキサーで構成されています。この作品で用いたフィルタは、複合型シンセサイザー、状態変数フィルタ、白色化フィルタ、オールパスフィルタ、サレンキー回路及び、バイカッド回路です。曲に応じて、フィルタを選んで演奏します。コンピュータシンセサイザーは、ラインセレクタとバッファを経由して複合型シンセサイザーと接続します。これにより、振幅変調や音響合成を行うことができます。コンピュータは、USB接続デバイスとUSBインターフェイスで接続してコンピュータシンセサイザーを形成します。
従来の制御信号は、USB接続デバイスから出力されるデジタル信号を用いています。本制御信号は、バッファから出力されるpulse width modulation(PWM)信号を用いています。USB接続デバイスから出力される1つのPWM信号と1つのデジタル信号は、オールパスフィルタのために用いていましたが、さらに、これらの信号も本制御信号に用いています。USB接続デバイスから出力される4つPWM信号は、ラインセレクタを経由してバッファに入力され、12のPWM信号がバッファから出力されます。特に、サレンキー回路とバイカッド回路は、制御信号にPWM信号を用いて斬新な音色を作ることができます。サレンキー回路は、ローパスフィルタ(LPF)、ハイパスフィルタ(HPF)及び、バンドパスフィルタ(BPF)の並列接続です。2つの制御信号は、LPFとHPFのアナログフォトカプラに入力して遮断周波数を制御します。2つの制御信号で論理積を行った信号は、BPFのアナログフォトカプラに入力して中心周波数を制御します。
バイカッド回路は、2つのバイカッド回路の直列接続です。バイカッド回路は、LPFとBPFの出力があります。2種類のフィルタを用いて回路を構成するため、第1のバイカッド回路はフィルタ1と呼び、第2のバイカッド回路はフィルタ2と呼びます。フィルタ1のBPFの出力信号は、このフィルタの出力信号です。フィルタ1のLPFの出力信号がフィルタ2に入力されます。フィルタ2のBPFの出力信号は、フィルタ1に入力されます。2つの制御信号は、フィルタ1とフィルタ2のアナログフォトカプラに入力して中心周波数を制御します。サレンキー回路の3つの発振音による不協和音とバイカッド回路のリズミカルなノイズは、曲の印象を変えることができます。この作品は、本技法を従来のフィルタに応用して斬新な音色を作り、実験的なノイズミュージックを制作しました。