米ヴァージニア出身の日系シンガー・ソングライター、
レイチェル・ヤマガタ (Rachael Yamagata)が9年ぶりとなる新作アルバム『Starlit Alchemy』を10月3日にリリースしました。
5thアルバムとなる本作は、優しいアンビエントな響き、豊かなバンド・サウンド、キャッツキルの自身のスタジオで制作されたという部屋鳴りの暖かさなど、さまざまなレイヤーが重なった一作。2020年以前とその渦中の両方で書かれ、世界各地でのツアー資金をもとに制作し、ほとんどを自宅スタジオで長年のコラボレーターたちと共に録音されました。制作に関わった人々の身近な人の死、彼女自身が抱えた顎関節症(TMJ)や聴覚障害との闘い、幾度となく立ち止まりリセットを繰り返した日々。そうしたすべての経験が、最終的な録音に込められた作品となっています。
レイチェル・ヤマガタは、2000年代初頭、デビュー作『
Happenstance 』で高い評価を得て登場しました。その後20年以上にわたり、彼女は生々しく映画的なソングライティングと魂をさらけ出すライヴ・パフォーマンスによって支持を集め、『
Elephants…Teeth Sinking Into Heart 』『
Chesapeake 』『Tightrope Walker』など、数々の愛される作品を発表。
リズ・フェア 、
トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ 、
ライアン・アダムス 、
ブライト・アイズ といった多彩なアーティストたちと共演しつつも、常にメジャーシステムの外で自らの道を切り拓いてきました。
そんなヤマガタにとって最も統一的で意図的な本作は、ヤマガタ自身が「ディープダイブ・レコード」と呼ぶように、最初から最後まで通して聴くことで意味が生まれる作品。ヤマガタは「最初から、“1曲が次の曲へと流れ込むようなアルバムになる”と分かっていたの」と言い、「最初は、ただ自分が経験し、目撃したことを表現したくて書き始めた。でも後になって、それが一つの物語になっていることに気づいたの。旅を終えた後に地図を描いたようなものね。全部そこに詰まっている」とコメント。
また、『Starlit Alchemy』は、痛みを避けるのではなく、それを通して進化することを描いており、「これはトラウマと美しさの“法医学”みたいなもの。両者が同時に存在することのほろ苦さを描いているの。恐れ、喪失、悲しみは大きなテーマだけれど、そのすべてに深く身を委ねたときに“錬金術”が始まるの。力は“降伏”の中で生まれ、かつての自分は脱ぎ捨てられるのよ」と語っています。
アルバムは、変化の引力と、それに伴う別れへの葛藤を描いた冒頭曲「Backwards」に始まり、喪失をテーマにしながらも不思議と軽やかな、“兆し”と“記憶”、そして“形而上的なつながり”への瞑想的な楽曲「Birds」、歓喜と怒りが共存する解放の曲「Carnival」、ヤマガタが「もし私に“種を植える”こと、“もっと宇宙的なもの”への扉を開くことができるのなら――それがこの曲の役割なのよ」と語るエネルギー、創造、未知への開放をテーマにした「Galaxy」、続けることの苦しさを描いた、優しさと疲労が同居する「Somebody Like Me」、祈りの曲「Heaven Help」、月に呼びかける歌「Reprise」で幕を閉じます。
ヤマガタは、「このアルバムの曲たちは、決して簡単な体験ではないかもしれません」と語り、「でも、それはアヤワスカの夢のようなもの、霧の中を進むためのロープのようなもの。もし聴く人の中で、痛みや悲しみ、言葉にできない何かが少しでも動いてくれるなら――それが音楽の力なんです」とコメントを寄せています。
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Photo by Laura Crosta