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人間椅子、大観衆を集めた〈まほろば〉ツアー・ファイナルで魅せた理想郷
人間椅子
2025/12/22 12:50掲載
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人間椅子
が12月17日、東京・Zepp Hanedaにて2025年冬のワンマン・ツアー〈まほろば〉ツアーの最終日を迎えました。
[ライヴ・レポート]
11月末より全9公演開催の本ツアーは、全国各地で大盛況。11月19日リリースの24枚目オリジナル・アルバム『まほろば』で到達した境地がライヴでどのように表現されるのか、また、彼らのヒストリーを彩ってきた名曲群からどんな曲が飛び出すのか。今か今かと、にこやかに開演を待ちわびる観客の姿が印象的だ。
定刻の午後7時に場内が真っ暗になると、厳かなSE「此岸御詠歌」が流れ、場内の期待はいっそう膨らむ。和嶋慎治(G&Vo)、鈴木研一(B&Vo)、ナカジマノブ(Dr&Vo)の3名を手拍子と歓声で迎え入れるオーディエンス。メンバーが各々の配置につく光景だけでも、胸がいっぱいになる。
1曲目は壮大な「まほろば」だ。「素晴らしい場所」「住みやすい場所」を意味する最新アルバムの表題曲がフロアに心地よい浮遊感をもたらしている。メンバーたちが巧みに楽器を操る姿はもちろん、息ピッタリの歌唱も秀逸である。続く「心の火事」で景気よく爆音が放たれると、観衆は興奮を隠しきれない。まさに燃え盛るヘヴィネスといった趣だ。
人間椅子のライヴを体感するたびに思うことだが、アルバム収録のサウンドの魅力を何倍にも増幅させている点が素晴らしい。彼らの演奏を初めて目撃していると思しき青年が狂喜乱舞する姿など、痛快だ。
「感動の坩堝」では、キャリアを重ねてきた彼らならではのストレートな感情を歌い、「遺言状放送」では、狂気に彩られたキャッチーさが観客を支配する。新たなキラーチューンとなった「ばかっちょ渡世」は、この3人だからこその絶妙な掛け合いが随所に光り、観る者を自然と笑顔にさせる。そこへ「みなしごのシャッフル」が妖しさ満点の魅力を放って絡みつく。最新作『まほろば』収録曲とレア曲が交互に繰り出される構成がなんとも嬉しい。ファン心理を心得た選曲と配列の妙に拍手を贈りたくなる序盤の流れである。
“仏教ヒーロー・ソング”と和嶋に紹介された「阿修羅大王」は、すでに人気曲の地位を獲得している。「えいっ えいっ 往生」と皆で唱える部分の迫力が抜群だ。これは「ばかっちょ渡世」の「アイッ!」の掛け声にも言えることだが、メンバーはもちろん、オーディエンスを巻き込んでの一体感に圧倒される。こうした濃密な空気こそがライヴの醍醐味なのだ。
大曲「光の子供」の美しい包容力も本編中盤のハイライトの一つだろう。このままずっとこの音を浴びていたくなるような、圧巻の境地だった。続く「宇宙誘拐」は、鈴木がお気に入りだという和嶋の「リッチー・ブラックモアが裸足で逃げる」ギター・ソロが見どころ。さらには「ウチュウヘヨウコソ」と和嶋とナカジマがユーモラスに声を震わせる部分に和む一幕も。爆音を自由自在に操りつつ、笑いの要素を忘れない点も人間椅子の持ち味である。
ナカジマがメイン・ヴォーカルを務める「恋愛一代男」を合図にショウは終盤へ。大人の男の哀愁を感じさせる昭和歌謡風の楽曲が観客を導いていく。続く「迷信」で場内の熱気はさらに上昇。このまま畳み掛けるように、お馴染みの「針の山」で本編を締め括ると、場内は沸きに沸いた。
まだ立ち去りがたいファンの声に応えて、3人が再びステージに姿を現わす。アンコールの1曲目は『まほろば』収録のアコースティック・バラード「永遠の鐘」だ。ナカジマの“出航の銅鑼”に導かれ、幸せいっぱいの景色が広がっていく。従来の人間椅子の作風からすると異色のウェディング・ソングだが、この清涼感がなんとも素晴らしい。続いて披露されたのは、鈴木作詞・作曲の「樹液酒場で乾杯」だ。「新顔のオジー」を含むロック界の偉人たちを虫にたとえた追悼曲は『まほろば』の中でも要注目の逸品だ。そういえば、鈴木選曲の今宵の“客入れBGM”には、この曲に登場するロックスターたちの名曲がズラリと並んでいた。ロック好きをニヤリとさせる、こうしたサービス精神が嬉しいではないか。ラストの「無情のスキャット」が万感の余韻を生む頃、時計の針は午後9時20分を指していた。
終わってみれば、最新作『まほろば』の楽曲を主軸とし、必殺曲、激レア曲を絶妙に織り交ぜた、至福のセットリスト。初心者からベテランまで、あらゆる立場の観客を置き去りにしない創意工夫が見事だった。そして、これだけ高い満足度を誇りながらも、聴きたかった曲がまだまだ多く残されているのが人間椅子のライヴというものだ。
2026年にはこの3人が遂にそろって60歳になる。アンコールの際、還暦ライヴを行なうことを和嶋が宣言していた。まだ詳細は明らかにされていないが、『まほろば』という理想郷に到達した彼らの演奏は、必ずや観る者を楽しませてくれることだろう。
何度経験しても、人間椅子のライヴの手ざわりは格別だ。一度目撃すれば絶対に虜になる彼らの生演奏を、未体験の方にこそ味わっていただきたい。この場にはロックの神髄が溢れている。
TEXT BY 志村つくね
PHOTO BY 西槇太一
■
「人間椅子 『まほろば』ツアー 東京公演 日テレプラス特別版」
2026年2月28日(土)22:00
www.nitteleplus.com/program/ningen-isu_mahoroba
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