21世紀のECMを代表するギタリスト、
ウォルフガング・ムースピール(Wolfgang Muthspiel)と
スコット・コリー(b)、
ブライアン・ブレイド(ds)によるトリオが、東京で録音した新作アルバム『
東京』を10月1日(水)に発表します。アルバムの先行トラック「ロール」が公開中です。
キース・ジャレットの「リスボン・ストンプ」を繊細に解釈し、グループ史上もっとも冒険的な録音でスタートしたレコーディングは、スウィング感たっぷりに臨まれました。このアルバムは、おそらく活動中のバンドだけが発揮しうる深遠なダイナミクスと繊細な相互作用の証しといえるものです。
ムースピールはコリーとブレイドとのトリオについて「このトリオではすべてがつながっている。ソロの独り舞台ではなく、すべてが絡み合いひとつの物語を形成する。そして、それは双方向性……絶え間ない対話だ。この仲間たちと演奏する最大の魅力はそこにある」と語っています。
アルバム全体を通しては、ウォルフガングの魅惑的なオリジナル曲にスポットライトが当てられており、バラード的な叙情性(「プラデラ」「トラヴェルシア」)、繊細なフォークの要素(「ストラミング」「フライト」)、間接的な室内ジャズ(「ワイル・ユー・ウェイト」)、そしてトワンギーなロックンロール(「ロール」)などが展開されます。
ウォルフガングの作曲の背景にあるインスピレーションの一部は意外なもので、フォーク調の「ストラミング」におけるシンプルなギタリストとしてのアプローチについて、伝説的なソングライターである
ボブ・ディランと
レナード・コーエンを引用しています。
フォーク調の「ストラミング」、サンティアゴ巡礼の道でハイキングしながら書かれた「トラヴェルシア」、作曲家
クルト・ワイルへの直接的なオマージュであり駄洒落を効かせた「ワイル・ユー・ウェイト」など、さまざまなオリジナルを経て、最後に
ポール・モチアンの「アバカス」を鋭く解釈した演奏で締めくくることで、ジャズとECMの歴史の大きな断片を暗示しながらアルバムを包み込んでいます。
Photo by Tomoya Takeshita