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【レーベル研究】WARP records

2007/08/31掲載
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80年代から現在に至るまで、常にトンがったアーティストを輩出し、今やテクノ好きだけにとどまらないファン層を抱える一大インディー・レーベルとなったWARP records。幅広く展開するWARP recordsの魅力をご紹介。
 金属を中心とした産業で栄え、英国一の工業都市である北部の街、シェフィールド。この街でレコード・ショップ“FON record store”を営んでいたスティーブ・ベケット(Steve Beckett)とロブ・ミッチェル(Rob Mitchell)という2人の若者と、エンジニアのロバート・ゴードン(Robert Gordon)によって1989年、WARP recordsはスタートします。当時はアシッド・ハウス、セカンド・サマー・オブ・ラヴといったムーヴメントが盛り上がっている真っ最中。マンチェスター近郊であるシェフィールドでも、倉庫やスクワットでのレイヴが行なわれていました。身近にいるアーティストのレコードを自分たちの手でリリースしたいという欲求に駆られた3人は、レーベル設立を思いつきます。ただ、<完全D.I.Y.>で、これといった資金援助もなく、最初のリリースまでは長い道のりだったようです。レーベル名は“Weird And Radical Projects”の略称。当初“WARPED records”だったのが、電話で聞き取りにくいとの理由で“WARP records”に変更したのだとか。そうしてリリースされたカタログ・ナンバー1は、前出のロバートを含む地元シェフィールドの3人組、Forgemasters(フォージマスターズ)。「Track With No Name」と名付けられたその12インチには、匿名性を志向する当時のアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックのありかたが表わされていると言えるでしょう。ロバートはその後レーベルの運営からは退きますが、エンジニアとしてWARPに関わってようになります。(写真右上エイフェックス・ツイン『ウィンドウリッカー』写真下はForgemasters「Track With No Name」)

  続く第2弾は“FON record store”の常連客だったナイトメアズ・オン・ワックス(ジョージ・エヴリン/George Evelyn)。その後も、シェフィールドの生ける伝説 キャバレー・ヴォルテールの片翼リチャード・H・カークによるSweet Exorcist、そしてLFOと順調にリリースが続きます。初期のWARP recordsリリース作品はサウンド・ボードの発信音(ブリープ)を使用していたため、ブリープ・ハウス、ブリープ・テクノと呼ばれ、アシッド・ハウスに続く新しいダンス・ミュージックとして、英国チャートの上位に食い込むほどに。ナイトメアズ・オン・ワックス、リチャード・H・カーク、LFOの主要3組は現在もWARP recordsの看板としてレーベルの創成期から第一線で活躍しています。なかでもリチャード・H・カークは時代と共にスタイルは変えながらも、70年代に発表したキャバレー・ヴォルテール時代の作品の中からも現在のサウンド・スタイルの“核”となる要素を見出すことが出来る、枯渇することのないクリエイティヴィティは高い評価を得ています。

 WARP recordsの転機は1992年に訪れます。“踊る”という機能に特化し匿名性を追求してきたテクノのアーティストたちが、個性を持った、しかもフロア対応に重きを置かないリスニングにも対応した楽曲を制作し始めたのです。英国テクノの中心を担ってきたWARP recordsにとっても、これは自然な流れでした。Richard D. James(エイフェックス・ツイン)の変名であるThe Dice Man、オウテカスピーディJといったアーティストを収録したコンピレーション『アーティフィシャル・インテリジェンス』、続く続編、シーフィールB12、そしてリチャード・H・カークなどを収録した『アーティフィシャル・インテリジェンス 2』は世界各国で多くのフォロワーを生み、テクノ・シーンの新たな潮流となります。もちろんここ日本でもWARP recordsはケン・イシイのリリースで知られるR&SやRISING HIGHといったレーベルとともに大々的に紹介され、デトロイト第二世代ケニー・ラーキンカール・クレイグ、英国テクノのご意見番アンドリュー・ウェザオール率いるセイバーズ・オブ・パラダイスなどが次々と日本盤としてリリースされ、日本でのテクノ・ブームに大きな影響を与えます。(写真はV.A.『Artificial Intelligence』)

 その後WARP recordsはより音楽性を拡張したアーティストを続々とリリース。スクエアプッシャーをはじめ、プレフューズ73アンチ・ポップ・コンソーティアムといった、既存のジャンルに新たな風を吹き込むものや、リチャード・ディヴァインのような新世代、今やダブ・ステップの中心アーティストとなったTeam Shadetek、ブロードキャストや、バトルス!!!をはじめ、ヴィンセント・ギャロマキシモ・パークグレイヴンハーストといったロック畑のアーティストの作品もリリースするなど、次々と生まれるスタイルを常に完全吸収。さらにはクリス・カニンガムの作品集で名を上げた映像レーベル“Warp Films”や、著作権フリーの音楽ダウンロード販売サイト“Bleep”など画期的な部門を開設します。2001年に創始者の1人であるロブを亡くす悲劇に見舞われながらも、今や“テクノのレーベル”というイメージを完全に払拭、100人の社員を抱えるレコード会社に成長しました。雑食なようでいて、一貫したムードを保ち続けるリリース方針は、幅広い層の聴き手を魅了し続けています。(写真はクリス・カニンガム『Rubber Johnny』[DVD])
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