近年は日本レコード大賞ほか数々の受賞を重ね、日本の音楽シーンのトップランナーとして活躍し、話題がこと欠かないMrs. GREEN APPLEは、“ミセス”の愛称で親しまれています。英語の既婚女性への敬称“Mrs.”(ミセス)を冠したアーティスト名は、
Mrs. GREEN APPLE以外にはなかなか思い浮かばないイメージがありますが(“ミセチン”こと横浜発のメロコア・バンドの
Mrs.WiENERあたりか)、一方で、英語の男性への敬称“Mr.”(ミスター)を冠したアーティスト名は多く活躍している印象。
Mr.Childrenをはじめ、ロック・バンドの
Mr.ふぉるて、ヒップホップ / ラップ・シーンでは
Mr.OZや
Mr.Low-D、DJ / プロデューサーの
Mr.Beats a.k.a.DJ CELORY、海外でも米ロック・バンドの
ミスター・ビッグ、80年代に「ブロウクン・ウィングス」「キリエ」と全米1位ヒットを放った
Mr.ミスター、独ユーロダンス・グループの
ミスター・プレジデント、韓国ボーイズ・グループの
MR.MRなどが思い浮かびます。
それでは、曲名では“ミセス”と“ミスター”がつく曲はどちらが多いのか? ……その答えに近づくべく、さまざまな“ミセス”ソング、“ミスター”ソングを、日本の楽曲を中心に挙げていくことにしましょう。
まずは“ミセス”を冠する曲名から。
チェッカーズが1991年に26thシングルとしてリリースしたのが「ミセス マーメイド」です。同年末に8回目の出場となった『NHK紅白歌合戦』で同曲を歌唱しています。その翌年には、当時アイドルとして人気を博していた
高橋由美子が、4thアルバム『Paradise』にて「Dear Mrs.Friend」を発表。作詞・
売野雅勇、作曲・
筒美京平というヒットメイカーが手掛けています。
近年の邦楽ポップスの再解釈などによって、シティ・ポップ・ブームの潮流に扱われることの多いアーティストたちにも“ミセス”ソングは少なくありません。「ファッシネイション」「月下美人」などの楽曲で知られる
門あさ美は「Mrs.アバンチュール」(1983年『PRIVATE MALE』収録)を、
山下達郎、
小室哲哉、
杉真理らとさまざまなサウンドを確立していった
村田和人は「So Long, Mrs」(1983年『ひとかけらの夏』収録)や「Mrs.Julyへの伝言」(1987年『Boy's Life』収録)を、当時はニューミュージックのくくりでしたが、今ではシティ・ポップの代表的存在の一人とされる
角松敏生は「Mrs. Moonlight」(2010年『Citylights Dandy』収録)を発表しています。
そのほか、
高橋克典「Mrs. Rollin' Diamond」、
Kra「ミセス」、
秋元順子「Mrs.シンデレラ」、
JAYWALK「Mrs.ロージィホワイト」、
Galileo Galilei「Mrs. Summer」、
GLAY「Back Home With Mrs.Snowman」などが挙げられます。
次に“ミスター”を冠する楽曲を探っていきましょう。そのまま「ミスター」というタイトルに限っても、
家入レオ、
KARA、
YOASOBI(写真)らが発表していますが、特に後ろ向きで腰を揺らすセクシーな“ヒップダンス”でも目を惹いたKARA「ミスター」は、日本のK-POPブームの火付け役として人気を博しました。
「ヘイ」「ハロー」「ディア」といった呼びかけのフレーズに続くのも特徴的。
麻丘めぐみ「ヘイ・ミスター」、
桑江知子「ヘイ・ミスター・ロンリー」、
石川秀美「Hey!ミスター・ポリスマン」、
斉藤和義「Hey! Mr.Angryman」、
浜田麻里「Hey Mr.Broken Heart」、
TOKIO「HEY! Mr.SAMPLING MAN」、
ピンク・レディー「ハロー・ミスター・モンキー」(アラベスクのカヴァー)、
ハイ・ファイ・セット「ハロー Mr.telephone」、
菊池桃子「ハロー・ミスター・マンディー」、アニメ『名探偵コナン』エンディング・テーマ起用の100%Free(
Hundred Percent Free)「Hello Mr. my yesterday」、
遠藤京子「Dear Mr.」、
秦基博「Dear Mr.Tomorrow」、
ずっと真夜中でいいのに。「Dear Mr「F」」など、次々と出てきます。
そのほか、
サーカス「Mr.サマータイム」、
八神純子「Mr.ブルー 〜私の地球〜」、
玉置浩二「MR.LONELY」、
モーニング娘。「Mr.Moonlight〜愛のビックバンド〜」、TOKIO「Mr.Traveling Man」、
NICO Touches the Walls「Mr.ECHO」、
E-girls「Mr.Snowman」、
スキマスイッチ「ミスターカイト」、
Kis-My-Ft2「Mr.FRESH」、
NEWS「MR.WHITE」、
back number「ミスターパーフェクト」、
Janne Da Arc「Mr.Trouble Maker」、
ONE OK ROCK「Mr.現代Speaker」、
マカロニえんぴつ「ミスター・ブルースカイ」、
imase「ミスター・ムーンライト」など、年代やジャンルを問わず、チャートを賑わせる楽曲が登場しています。K-POPにおいても、
少女時代「MR.TAXI」「Mr.Mr.」をはじめ、
SUPER JUNIOR「Mr. Simple」、Apink「Mr. Chu(On Stage)」などの“ミスター”ソングが話題を呼びました。
そして、世界的な“ミスター”ソングといえば、「メリー・クリスマス ミスターローレンス」(Merry Christmas Mr. Lawrence)でしょう。
坂本龍一が手掛けた“戦メリ”の愛称で広く知られる映画『戦場のメリークリスマス』のテーマ・ソングは、海外のアーティストもこぞってカヴァーしたり、来日時に演奏するなど、ある意味日本を象徴する楽曲として愛されてきました。日本でも
AIやUtada(
宇多田ヒカル)、
ROTTENGRAFFTY、
FACTなどが歌詞をつけてカヴァーするなど、多くのアーティストが“戦メリ”の影響を受けています。
最後は“ミセス”と“ミスター”が“同居”するタイトルの楽曲を。玉木宏と山田孝之主演の映画『MW -ムウ-』の主題歌となったのが、flumpoolの「MW 〜Dear Mr. & Ms.ピカレスク〜」です。同曲は2009年にメジャー2ndシングルとしてリリースされ、flumpoolとして初の映画主題歌となりました。
“ラヴソングの帝王”こと
鈴木雅之や、鈴木も参加した
ゴスペラーズとラッツ&スターの選抜メンバーによるスペシャルユニット“
ゴスペラッツ”などがカヴァーしたのが、「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」(Me and Mrs. Jones)。オリジナルはフィリー(フィラデルフィア)・ソウルを代表するソウル歌手の
ビリー・ポールが1972年にリリースした全米ナンバー1ソングで、200万枚のセールスを記録。互いに家庭を持ちながら、人目に隠れていつものカフェで逢瀬を繰り返す僕とジョーンズ夫人の不倫を歌った曲ですが、70年代ソウル・ミュージックを代表する楽曲として今なお愛唱され、数多のカヴァーを生んでいます。